サン・ジョヴァンニ広場はかなり広々としていて、5万人、6万人が集まる政治集会やコンサートでも、わりと自由に行き来できるのですが、10万人ともなると前進するのも、後退するのも、ほぼ不可能という状態になります。広場にたゆたう人の波。見渡す限りの『サルディーネーいわしたち』が、思い思いに手作りした『クリエイティブいわし』をマニフェストして、歌ったり、踊ったり、暗くなるまでフェスタが続いた。ボローニャの広場からはじまって、たった1ヶ月でローマに10万人を集めるまでに急成長したアンチファシズム市民ムーブメントを発案したのは、エミリア・ロマーニャの青年たちとイタリア全国の仲間たち。前項「瞬く間にイタリア中に押し寄せたアンチサルヴィーニの魚たち『6000サルディーネ』の続編です。 Continue reading
Category Archives: Eccetera
小説「パッショーネ」Passione
そもそもこのサイトをはじめるきっかけとなった小説、『パッショーネ』が、Kindle、iBooksで発売されることになりました。去年から予告していたにも関わらず、思いのほか長い時間がかかってしまったこの小説は、ローマの街角で起こった実際の事件をヒントに、架空の人物、状況を設定し、再構築したミステリー・フィクションです。そこでほんの少しだけですが、一章の半分をこのサイトで公開させていただくことにしました。もちろん、『鉛の時代』のリサーチをはじめ、ローマの人々のインタビュー、出来事を掘り下げるこのDeep Romaは、これから先も今まで通り、ああでもない、こうでもない、と続けていく所存です。
極右政党『同盟』が政府から消えて40日、『グリーン:環境』が主人公となったイタリア
夏真っ盛りの政治混乱で、(元)内務大臣マテオ・サルヴィーニ率いる極右政党『同盟』が、あれよあれよという間にオウンゴール。政権から放り出される、まさか!の展開となって40日が過ぎ去りました。8月初旬の時点では、こんなにドラスティックな展開で『5つ星運動』と『民主党』の連立が実現する、とは夢にも思っていなかったので、かなり緩んだ気持ちで秋を迎えることができたというのが本音です。もちろん油断は常に禁物ですが、サルヴィーニが内務大臣だった14ヶ月、世間に膨張しつつあった、攻撃的で非人間的な険悪ムードもずいぶんやわらいだように感じています。 Continue reading
マテオ・サルヴィーニのオウンゴール!『5つ星運動』と『民主党』、ついに連立
8月8日、マテオ・サルヴィーニが首相の座を狙って賭けに出た『政権の危機』から現在まで、イタリアの政局は3時間ごとに変わる、極端に流動的な状況が続き、正直「もうたくさん」と心底うんざりしました。新しい過半数として連立政府を模索した『5つ星運動』と『民主党』の交渉は、真摯に政策をつきあわせるだけではなく、最終的には閣僚ポストの争奪戦(双方、ポストの問題ではないとは言ってますが)に発展。マッタレッラ大統領の2回目のコンサルテーションがはじまる瀬戸際で、「どうやら『5つ星運動』と『民主党』の交渉がまとまったようだ。よかった!」との報道が駆け巡ったと思った途端、一気に緊張して暗礁に乗り上げ、大統領が提示したリミットの28日まで双方の意見が食い違った。「やはりこのまま総選挙に突入か」と、暗雲がたちこめました(タイトルの写真はイタリア大統領府)。
イタリアの灼熱:『5つ星運動』を裏切り、総選挙に疾走する『同盟』サルヴィーニの行方
多くの人々が海へ、山へと繰り出し、すっかりリラックスしていたところでした。『同盟』のマテオ・サルヴィーニは、イタリアの人々が楽しみにしているヴァカンス・シーズン、という虚を衝いて『5つ星運動』に挑みかかったのです。8月7日のこと、サルヴィーニはジュゼッペ・コンテ首相を単独で訪れ、『5つ星運動』が擁立する3人の大臣をただちに解雇、さもなくばいますぐ総選挙、と切迫した要求を突きつけたのです。今期の総括である首相のプレス・カンファレンスのあと、議員たちが夏休みに入る前々日のことでした。当初は、ひょっとしたらいつものように『5つ星』に圧力をかけるためだけの「口先造反」とも見なされましたが、あれよあれよと言う間に緊張が高まり、イタリアはいよいよ現実的なCrisi di Governoー『政権の危機』を、まさかの8月に迎えることになったわけです。 Continue reading
ロシアより愛を込めて:イタリアン『ロシアゲート』の勃発で、いよいよホットな2019年夏
マテオ・サルヴィーニ副大臣及び内務大臣が率いる『同盟』への、ロシアからの政治献金を示唆する盗聴音声が、米BuzzFeed Newsで公開された瞬間は、正直、特に驚きもしませんでした。というのも何ヶ月も前からレスプレッソ誌が、『同盟』に流れるルーブルの可能性を、微に入り細に入り執拗に追っていたからです。基本、レスプレッソ紙を毎週チェックしているわたしとしては、むしろイタリアの人々がその記事にはシーンとしながら、嬉々として『同盟』に投票することのほうがミステリアスでもありました。「米国からも、欧州からも制裁を受けている、あのロシアから個別政党への献金の可能性があっても、イタリアでは『不正』ではないのかもしれない。ひょっとしたら当たり前のこと?」とまで思ったほどです。 Continue reading
子供たちの叛乱:ラミィ、アダム、シモーネ、そしてローマにやってきたグレタ・トゥーンベリ旋風
イタリアの、そして世界の権威ある大人たちが、謀略や政争やつじつま合わせに夢中になっている間に、子供たちはロジカルに冷徹な視線で世界を見つめ、「こんなことはおかしいんじゃないか」と声をあげはじめています。たった8ヶ月の間に欧州だけでなく、世界中のエコロジストのアイコンとなった16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリを支持する子供たちはもちろん、この春のイタリアでは、ラミィやアダム、そしてシモーネと、未成年の子供たちが次から次に世間を「ハッ」と驚かせ感動させる、あるいは大人たちの深い共感を呼ぶ出来事が相次いでいるのです。日々の生活に追われ、世間の垢にまみれた「わけ知り顔」の大人たちがすっかり忘れていた、まっすぐで無垢な彼らの信念が、われわれ大人たちの「汚れちまった悲しみに」まぶしい光を当てました。
難民の人々を巡る混乱とプロパガンダ戦、2019年イタリア、そして欧州はどこへ向かうのか
緊張に満ちたイタリアの政治状況も、時間が経つにしたがって「少しは沈静化するかもしれない、いや、そうあってほしい」と淡い希望を抱いていましたが、今年5月の欧州選挙が近づくにつれ、過度にショー・アップされた『同盟』、やや控えめな『5つ星運動』によるプロパガンダの応酬で、政治はむしろ過激な混乱に傾いています。さらに、政府が醸すファッショな空気に断固対抗するアンチファシズムのムーブメントもいよいよ活発化、野党議員をはじめ、さまざまな市民運動、アソシエーション、NGOネットワークの結束が広がり、社会は大きく分断されています。『ファシスト』という、イタリアにおいては、本来デリケートなはずの言葉がメディアの見出しに踊り、たとえば、マテオ・サルヴィーニ副首相を批判する新聞記事やSNSのコメント欄は攻撃と侮辱に溢れかえっている。これはちょっと前のヒューマンなイタリアでは考えられなかった状況です。 Continue reading
永遠の都ローマの著しい荒廃は、本当に市長ヴィルジニア・ラッジのせいなのか
イタリアの国政は懸案の国家予算案を含め、アゼルバイジャンからトルコ、イタリア北部を結ぶガスラインTAP、フランスとイタリアの国境を走る超高速列車TAVの建造、また事実上の「移民難民排斥」法であるサルヴィーニ法案や長い裁判などで生じる『時効』の廃止を巡る葛藤、さらには稀にみる悪天候で全国に多くの被害が続出し、紛糾が続いています。しかしながら今回は、国政はとりあえず「要観察」にしたまま、みるみる荒むローマについて考えてみることにしました。比類なき美しさを誇る永遠の都市は今、中心街からちょっと外れると、壊れた車(!)、冷蔵庫、マットレス、ソファなどの粗大ゴミが置き去りにされ、街角のゴミ収集カセットは常に溢れかえって「分別」どころの騒ぎではありません。
『同盟』『五つ星運動』イタリア第3共和国、忍び寄るファシズムの悪夢
こうなるかもしれない、とおぼろげには予想していましたが、イタリアは政治的にも、経済的にも、倫理的にもダイナミックな動乱期にあります。3月の総選挙以来『5つ星』、『同盟』各党首の衝撃的な発言に振り回され、向こう3年の『国家予算案』を巡って激化する対立のなか、予想もしなかった逮捕劇が起こり、メディアは名指しで糾弾され、ホッとする暇がありません。政界は敵意と強情と緊張にすっぽり包まれて、欧州から孤立しながら、見切り発車の気配も漂う。毎日がアドレナリン漬けの『挑発』の連続で、「呑気で陽気でいい加減」という、イタリアのステレオタイプはすっかり影を潜めてしまいました(タイトルの写真は、ファシズムからの解放に歓喜する、パルチザンとして闘った女性たち。Patriaindipendente.itより引用)。 Continue reading