Category Archives: Cultura

難民の人々の受け入れを拒絶して、すべての港を閉じた1年:イタリアの何が変わったのか

このまま夏は来ないのではないか、というほど肌寒い毎日が続いていたローマが、朝起きたら突如として熱風吹きすさび、陽炎揺れる砂漠(!)になっていた、という極端な2019年の初夏は、イタリアの今の状況を、そこはかと暗示しているかもしれません。マテオ・サルヴィーニ副首相及び内務大臣は、2018年6月、衝撃的にイタリアの全港を閉鎖。粗末なゴムボートに乗せられ地中海を漂流する、難民の人々を長年救助してきた多くのNGO船の「生命を護る勇敢な救援者たち」という評価を打ち砕き、「海の悪質タクシー:NGOは難民ビジネスとつるむ犯罪者たち」という濡れ衣を着せて1年の月日が過ぎました。その後のイタリアはどう変わったのか、そして現在の地中海とリビアの状況を追ってみたいと思います(写真は、『港を開こう』をオープニング・タイトルのスローガンとした『チネマ・アメリカ』に続々と集まった人々)。 Continue reading

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小説「パッショーネ」Passione

そもそもこのサイトをはじめるきっかけとなった小説、『パッショーネ』が、KindleiBooksで発売されることになりました。去年から予告していたにも関わらず、思いのほか長い時間がかかってしまったこの小説は、ローマの街角で起こった実際の事件をヒントに、架空の人物、状況を設定し、再構築したミステリー・フィクションです。そこでほんの少しだけですが、一章の半分をこのサイトで公開させていただくことにしました。もちろん、『鉛の時代』のリサーチをはじめ、ローマの人々のインタビュー、出来事を掘り下げるこのDeep Romaは、これから先も今まで通り、ああでもない、こうでもない、と続けていく所存です。

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2019欧州選挙と、窮地に陥ったローマの巨大占拠スペースSpin Time Labsを救ったヴァチカン

新しい動きが次々に生まれるローマの重要なカウンターカルチャーシーンのひとつ、Spin Time Labs450人、イタリア人をはじめ18カ国の人々が占拠する、その巨大占拠スペースの電力突然切断され、灯なく、水道も機能しない、という窮地に陥ったのは5月6日のことでした。その後約1週間、幾度となく公開総会や支援イベントが開かれ、主要メディアも続々と報道しましたが、事態は一向に解決することなく、いよいよ緊張した空気が漂った。なにより占拠者の中には病気の人々や、98人の子供たちも含まれているのです。あわや、というその窮状に、天使のごとく、ふわり、と現れたのが『コラード神父』でした。まるでおとぎ話のようですが、その『コラード神父』こそ、フランチェスコ教皇の右腕、クライェウスキー枢機卿( ええ!?)だったのです。(タイトルの巨大建造物がSpin Time Labs占拠スペース) Continue reading

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『アートはそもそもフェミニンである』アート界の常識を覆す未来へと向かうローマの女性たち: FEMME

2014年から5年間に渡り、女性アーティストたちを含めるアートに関わる女性美術評論家、作家、キュレーター、哲学者、学者たちが参加する『FEMME』が、リサーチ/フィールドワークという形でたびたびイベントやミーティングを開いています。今年の3月には、ローマ市営美術館 MACRO ASILOを舞台に、彼女たちの今までのリサーチと考察をまとめた一冊の本、ARTE [EVENTUALMENTE] FEMMINILE (場合によってはフェミニンなアート)のプレゼンテーションを開催。アートにおけるジェンダーの常識を覆す野心的なアプローチで、揺るぎない存在感と未来への指針を示した。その中心人物であるローマのアーティスト、ヴェロニカ・モンタニーノと美術評論家であり、作家のアンナ・マリア・パンツェーラにじっくり話を伺いました(タイトルの写真はヴェロニカ・モンタニーノの最新作 『CIRCUS NATURAE(自然の巡り)』)。 Continue reading

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ロシア、米国、中国、欧州連合:列強入り乱れるイタリアと『世界家族会議』

国際婦人デーの5万人デモを皮切りに、3月のローマでは女性たちに関するイベントが各地区でポジティブにパワフルに繰り広げられ、当初は女性たちをテーマにこの項をまとめるつもりでした。しかし現在、女性たち、そして彼女たちを応援する市民の大きな懸念となっている『ピロン法案』を調べるうちに、米国右派やロシアの宗教原理主義者たちが中核を担う『世界家族会議』までをたどらざるをえなくなった。そのうちローマに、『一帯一路』プロジェクトを含む中伊通商合意の覚書に調印するために中国首席が訪れ、それから1週間もせぬうちにヴェローナで『世界家族会議』が開催された3月のイタリアが、いつのまにか世界の縮図のような状況になっていることに「ええ!」と驚くことになったわけです(タイトルの写真は『ピロン法案』に反対するフェミ・デモに集まった人々)。 Continue reading

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ミラノの大規模アンチレイシズムデモと、ローマのエスニック地区カーニヴァル

25万人もの市民を集めたアンチレイシズムデモが、3月2日、ミラノで大々的に開催されました。Peopleprima le persone (ピープル・ファースト)をスローガンに、カーニヴァルの華やかな季節に開催されたこのデモは、音楽やダンス、かなり凝ったコスプレのグループなど、先頭の一団が目的地のドゥオモ広場に到達した時に、まだ出発地点で動きがとれない人々がいたほど、街中が人、人、人で埋まったそうです。市民たちの賑やかで陽気なこの反乱は、もちろん難民の人々に対する残酷な政策や暴言、女性差別的な法案を無理やり押しつけようとする現政府に翻した、市民のパワフルな反旗に他ならず、ミラノだけでなくイタリア全国でアンチレイシズムの機運がますます高まっている。ミラノまでは残念ながら行けませんでしたが、ローマのエスニックエリアで開催された、あらゆる民族の子供や大人たちが、思い思いのコスプレで仲良く参加した、ローカルで温かい『すべての色のカーニヴァル』マーチに参加しました(タイトルの写真は、ローマのカーニヴァルのワンシーン)。 Continue reading

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アートと人が躍動し、増殖する”マイエウティカ” ローマ市営美術館:MACRO ASILO

次から次に政治混乱のニュースが流れ、負のエネルギーがあまりに強烈で思考が停止しそうなとき、ふらり、とこの美術館を訪れると、なんとなく安定した気持ちになります。気持ちの次元が変わるというか、スペースに漂う挑発的でありながら、どこか緩やかなエネルギーに救われるというか、生産的な『現実』が、わたしが生きる世界に同時にあるのだ、と改めて思い出させてくれるのがMACRO ASILO。ローマの宝石とも言われる繊細な佇まいの市営美術館MACROが懐深い実験プロジェクト、MACRO ASILOとなりオープンして4ヶ月。有名アーティストによる絵画やオブジェなど、いわゆる通常の、有料での『展覧会』は一切開催されていないのに、いつ行っても必ず、斬新なドキュメンタリーフィルムやパフォーマンス、アート作品や考え方、そしてアーティストたちとの出会いがあり、しかも『無料』という気前よさです。 Continue reading

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ナチ・ファシストからイタリアを解放、戦後の民主主義を担ったパルチザンたち:A.N.P.I.と現在

1943年夏、イタリアのパルチザンたちは本格的に決起。ナチ・ファシストを相手に、都市だけでなく、山間部や森林で、熾烈な武装レジスタンスを繰り広げました。そして1945年、市民を恐怖で打ちのめしたナチ・ファシストの独裁支配からのイタリア解放に貢献。共和国の建国、そして戦後の『民主主義』の確立に大きな功績を残した。創設から現在に至るまで、そのレジスタンスの魂を営々と受け継ぐ、全国パルチザン協会 A.N.P.I.のローマ県本部に伺い、お話を聞きました。A.N.P.I.は終戦から現在まで留まることなく、アンチファシスト運動の核として重要な活動を続ける大御所。若い世代の加入者も多く、ローマでは、続々と新世代のパルチザンたちが誕生しはじめています。 Continue reading

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ローマ・チッタ・アペルタ:『無防備都市』終わらないレジスタンス

イタリアの政治は、朝から晩までたゆみなく紛糾しているので、いつの間にかそのインパクトに慣れてしまい、EUの再三の勧告にも頑として譲らない『国家予算案』で、国債スプレッドがみるみる上昇しようが、『5つ星運動』のメンバーがメディアを総攻撃して、ジャーナリストたちの間で諍いが起ころうが、「驚愕する」ことがなくなりました。異常事態も長期間続くと自己防衛本能が働いて、ちょっとやそっとのことでは動じなくなります。それにひょっとしたら、たとえば巷で執拗に語られ続ける経済崩壊やユーロ離脱など、今後大きな変化を遂げる可能性のある個人の日常生活も、今のところ表面的には以前と同じ日々が続いている。ただ、『同盟』が推進するとめどない反人権法案に、いわば現代のパルチザンたちによる頼もしいレジスタンスの流れが急速に動きはじめたことを感じています。 Continue reading

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2018 イタリアの不穏な8月:フィアット、モランディ橋の崩壊、そして難民の人々

9月の声を聞いて、今まで夏休みで閉まっていた大通りの店もひとつ、ふたつ、と緩やかに開店しはじめました。たっぷり遊んだ夏が溜息混じりに終わる、どこか気だるい空気が流れるローマではありますが、いつもはたいした事件も起こらないイタリアのヴァカンス期、今年はジェノヴァの『モランディ橋』の崩壊、という大事故が起こったせいで、その倦怠に多少の緊張感が漂っています。さらに感じるのは、欧州極右勢力のホープと見なされる、『同盟』マテオ・サルヴィーニの派手なスタンド・プレイに、極右グループが調子づいていることでしょうか。それに伴い対抗するアンチファシストのグループも活動活発化の様相を見せている。イタリアの8月を振り返ってみました。 Continue reading

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