Category Archives: Cultura popolare

イタリア映画の新しいアイデンティティ

イタリア映画、文学、そして音楽に、並々ならぬ造詣を持つ二宮大輔氏の寄稿です。2016年には、キネマ旬報で「パオロ・ソレンティーノが仕掛けた迷路」と題して「現代のフェリーニ」と称されるソレンティーノの世界を評論。また、文学座、高橋正徳氏演出によるお芝居では、現代イタリア演劇の原点と言われるエドゥアルド・デ・フィリッポの、難解なナポリ方言が多用された戯曲『フェルメーナ・マルトゥラーノ』を翻訳するなど、まさに八面六臂の大活躍でした。その二宮氏が豊かな感性と鋭い視点で現代のイタリア映画の話題作をレビューします(写真は『透明の少年』より)。 Continue reading

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市民が撮るソーシャル・ムービー :リアクション・ローマ

MACRO Factory(マクロ・ファクトリー)に入った途端、見慣れているはずのローマストリート風景が広がり、スペースに充ちる不穏を孕む強烈な音響に、街の深層に迷い込んだような気分になりました。そう、そこにインスタレーションされているのは、ローマの住民たちの視線が捉えたリアルなローマの風景、そして今現在、街にじわりと漂う空気感と言えるでしょう。人々が自らの周囲の風景をモバイルやカメラを使って撮影したムービーを再編集、5つのカテゴライズでインスタレーションされた、ローマではじめての実験的「ソーシャル・ムービーReaction Roma。その指揮を執った映画監督であり映像作家の Pietro Jona(ピエトロ・ジョナ)に話を聞きました(写真はビデオインスタのひとコマ。 Misunderstories から引用)。

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高校生のスロー・インフォメーション:Scomodo No.0

なるほど。マニフェスト紙は、ローマの高校生たちの編集によるこの月刊誌、『Scomodo(スコモド:厄介な、迷惑な、邪魔な、気難しい)』を、「スロー・フード」ならぬ、「スロー・インフォメーション」と表現しています。スピード軽さインパクト、玉石混淆でWeb上を濁流となって流れ、巨大な渦になったかと思うと、瞬く間に消え去る無限の情報に、まさに「Webド真ん中世代」にいる高校生の有志たちが「待った」をかけたという現象です。超人気アンチグローバルFumettista(フメッティスタ:コミック作家)、ZeroCalcare(ゼロカルカーレ)デザインの表紙で、No.0がいよいよ登場しました。

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イタリアのテアトロをぶち壊したシモーネ・カレッラ

シモーネ・カレッラ(写真左から2番目)の芝居をはじめて観たのは2001年、ローマ市営の劇場、テアトロ・インディアで上演された『Peppe er Tosto(ペッペ・エル・トスト』でした。これはローマのディケンズと呼ばれるジョゼッペ・ジョアッキーノ・ベッリのソネットからインスパイアされた芝居で、テアトロと呼ぶにはあまりに大がかりなイベントでした。テアトロ・インディアの敷地全て街角に見立て、数え切れないほど大勢の役者縦横無尽に動き回り、あちらこちらで芝居同時進行する、という度肝を抜かれるダイナミックな演出で、今でもその時の光景と、鳥肌が立つような興奮をありありと思い浮かべることができます。

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ローマから世界に挑戦する若き地理学者 :ジュゼッペ・マリア・バッティスティ

彼がヒップホップDJとして活躍していることは以前から知っていましたが、まさかローマの郊外をこれほど丹念に研究し、精密に分析する地理学者に成長していた、とはまったく想像していませんでした。最近街角で見かけないと思ったら、去年から英国で働きはじめたということ。たまたま道で会って立ち話をするうち、大学を卒業して1年経つか経たないにも関わらず、客観的で成熟した視点を持ったこの青年に、おおいに学ぶことがありました。そこで日を改めて、ゆっくり話を聞かせてほしいとお願いしてみました。 Continue reading

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ローマに新風、女性の市長 ヴィルジニア・ラッジ

MoVumento 5 stelle(五つ星運動)』が、今回のイタリア統一地方選挙でこれほどの躍進を遂げ、現政権である『PD(民主党)』が惨敗するとは、正直、思っていませんでした。まず、19日に行われたローマの決選投票では、市の相談役の経験があるとはいえ、まったく無名の弁護士、ヴィルジニア・ラッジが、PD候補者ロベルト・ジャケッティ32.03%に対し、67.17%という記録的大差の勝利。ローマ市では史上はじめての女性、さらに37歳という最年少の市長が生まれることになりました。

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ローマの骨董修復のマエストロ: マウリツィオ・ボナミーチ

わたしがやってきた頃のローマの街角には、アルティジャーニ(アルチザン)と呼ばれる、昔ながらの骨董の修復工房鍛冶工房木工工房があちらこちらに存在し、工房の前を通ると金槌の音や電動ノコギリの音が響く路地に、ニス匂いが漂ってきたものです。そしてその、長年の経験と直感、指の感触で、時を経たオペラ(作品)を蘇らせる職人、何でも修繕してくれる木工職人とボッテガ(工房)の存在が、魅力的で頼もしい、街角の自然でもありました。 Continue reading

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ローマ・テルミニ駅の24番ホーム地下から発信: TerminiTV

「知ってるかい? 誰もがこのイタリアの鉄道の中枢、「ローマ・テルミニ」をターミナル、「終着駅」、つまり終着地点を意味する命名だと勘違いしているけれど、それは間違いなんだ。 テルメ・ディ・ディオクレツィアーノの近くだから「テルミニ」という名がついたんだよ。ここは古代ローマ時代テルマエ(ラテン語)、つまり温泉地域だったんだからね」 マルチメディアスタジオ、テルミニTVのFrancesco Conte(フランチェスコ・コンテ)は開口一番にそう念を押しました。 Continue reading

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ローマ郊外にグラフィティで光を取り戻すアートゲリラ:カルロ・ゴーリ

80年代ニューヨークのカウンターカルチャーとしてはじまり、今や世界じゅうに広がった「ストリートアート」、あるいは「グラフィティ」と呼ばれるアートムーブメントは、ここローマの、特に郊外では、まったく普通の街角の風景となっています。どこに行けばどんなグラフィティが観れるか、マップを作って新たな観光名所としてプロモーションする、という状況でもあり、ローマには「欧州のストリートアートのセンター」になる、という壮大な野望もあるようです。

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人が暮らす現代美術館: Metropoliz、あるいはMAAM

ローマで「現代美術館は?」と聞かれて、すぐに思いつくのはフラミニオ地区のMAXXI、そしてテスタッチョ地区のMACROというところですが、実はもうひとつ、プレネスティーナ通り913番地に、土曜日だけ公開されるMAAMMetropoliz(メトロポリツ)という巨大アートスペースがこっそり存在していることは、一般にはあまり知られていません。しかもそのスペースには、250人余りの人々アート作品と共に普通に暮らしているのです(タイトル写真は、ある角度から部屋を見ると、LE SPACE EST A VOUS. スペースは君たちのものだ、と文字が浮き上がるフランス人アーティストによる作品)。 Continue reading

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