Category Archives: Quartiere

真夏の夜の夢、アンダーグラウンドで静かに語り継がれるローマの亡霊伝説 Part2.

わたしの周囲の人々の多くは、少なくとも表面上、亡霊超常現象、あるいはエクソシズム、あるいは降霊術(spiritismo)の話をすると、笑い飛ばす傾向にあります。それはおそらく、弁証法的唯物論主義とする人々が多くいるからだと思いますが、ひょっとすると、本当に恐ろしがって話さない人々もいるのかもしれず、特にエクソシズムや降霊術の話をすると、「そんな危ない話題に近づくべきではない」と慌てた様子で諭されることすらあります。もちろん『ゴーストハンターズ』のようなマニアックな青年たちが存在しても、彼らもまた、超常現象を、あくまでも「科学的な姿勢で調査している」ことを強調している事実は前項の通りです。それでもアンダーグラウンドには、やはりいまだにエクソシストが存在し、降霊術のグループも活動を行なっているようでもあり、ローマの廃墟群の片隅に謎深き神秘世界が広がっている気配は確かにあります。しかしながら、ローマの亡霊伝説 Part2.では、その方面にはあまり近づくことなく、街で語り継がれたオーソドックスな亡霊伝説を追いかけてみよう、と思います(タイトル写真はイメージです)。▶︎Part1.はこちらからContinue reading

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活気が戻ったイタリアの街角で、Covid-19と共存しながら想うアンティファシズムのこと

どこか掴みどころがない未来にもやもやしながらも、ローマの街は少しづつ日常を取り戻しつつあります。4ヶ月前に突如として感染が拡大し、イタリア全土を震撼させたSars-CoV-2でしたが、その間戦場となった医療機関での経験やデータから研究が進み、今後再び感染が拡大しそうになったとしても、ある程度は効果が期待できる対策、治療法が、すでに学習されたという印象です。そこで街角には多少の楽観ムードが流れ、活気が戻ってきた、という感じでしょうか。また、米国発の#BlackLivesMatterを先駆けとして、今までシンと静まり返っていた広場にも、見慣れた政治集会が戻ってきました。 Continue reading

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2019欧州選挙と、窮地に陥ったローマの巨大占拠スペースSpin Time Labsを救ったヴァチカン

新しい動きが次々に生まれるローマの重要なカウンターカルチャーシーンのひとつ、Spin Time Labs450人、イタリア人をはじめ18カ国の人々が占拠する、その巨大占拠スペースの電力突然切断され、灯なく、水道も機能しない、という窮地に陥ったのは5月6日のことでした。その後約1週間、幾度となく公開総会や支援イベントが開かれ、主要メディアも続々と報道しましたが、事態は一向に解決することなく、いよいよ緊張した空気が漂った。なにより占拠者の中には病気の人々や、98人の子供たちも含まれているのです。あわや、というその窮状に、天使のごとく、ふわり、と現れたのが『コラード神父』でした。まるでおとぎ話のようですが、その『コラード神父』こそ、フランチェスコ教皇の右腕、クライェウスキー枢機卿( ええ!?)だったのです。(タイトルの巨大建造物がSpin Time Labs占拠スペース) Continue reading

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ミラノの大規模アンチレイシズムデモと、ローマのエスニック地区カーニヴァル

25万人もの市民を集めたアンチレイシズムデモが、3月2日、ミラノで大々的に開催されました。Peopleprima le persone (ピープル・ファースト)をスローガンに、カーニヴァルの華やかな季節に開催されたこのデモは、音楽やダンス、かなり凝ったコスプレのグループなど、先頭の一団が目的地のドゥオモ広場に到達した時に、まだ出発地点で動きがとれない人々がいたほど、街中が人、人、人で埋まったそうです。市民たちの賑やかで陽気なこの反乱は、もちろん難民の人々に対する残酷な政策や暴言、女性差別的な法案を無理やり押しつけようとする現政府に翻した、市民のパワフルな反旗に他ならず、ミラノだけでなくイタリア全国でアンチレイシズムの機運がますます高まっています。ミラノまでは残念ながら行けませんでしたが、ローマのエスニックエリアで開催された、あらゆる民族の子供や大人たちが、思い思いのコスプレで仲良く参加した、ローカルで温かい『すべての色のカーニヴァル』マーチに参加しました(タイトルの写真は、ローマのカーニヴァルのワンシーン)。 Continue reading

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永遠の都ローマの著しい荒廃は、本当に市長ヴィルジニア・ラッジのせいなのか

イタリアの国政は懸案の国家予算案を含め、アゼルバイジャンからトルコ、イタリア北部を結ぶガスラインTAP、フランスとイタリアの国境を走る超高速列車TAVの建造、また事実上の「移民難民排斥」法であるサルヴィーニ法案や長い裁判などで生じる『時効』の廃止を巡る葛藤、さらには稀にみる悪天候で全国に多くの被害が続出し、紛糾が続いています。しかしながら今回は、国政はとりあえず「要観察」にしたまま、みるみる荒むローマについて考えてみることにしました。比類なき美しさを誇る永遠の都市は今、中心街からちょっと外れると、壊れた車(!)、冷蔵庫、マットレス、ソファなどの粗大ゴミが置き去りにされ、街角のゴミ収集カセットは常に溢れかえって「分別」どころの騒ぎではありません。

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『AFMV』で遂に銀幕へ、イタリアのWebを席捲する The Jackal

たまにはイタリアのWebカルチャーの、メジャーな動きにさらっと迫ってみようと思います。Youtubeに膨大にアップされたWebビデオシリーズで、押しも押されぬ絶対的な人気を誇るのが、ナポリのインディ・フィルムメーカー The Jackal。『インディ』とはいっても、S.r.l (会社組織)としてきっちりマネージされ、Youtuberを含めた他のフィルムメーカーたちとは比較できない、プロフェッショナルなビデオシリーズでWebを席捲しています。わたしも、ナポリマフィア『カモッラ』を描いた『ゴモッラ』パロディシリーズあたりから注目しはじめたのですが、そのThe Jackalがここ数年、あれよあれよという間にいよいよメジャーになって、遂に劇場映画『AFMV』を制作、現在絶賛上映中です。 Continue reading

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ローマのイスラム教と欧州一のグランド・モスク Grande Moschea

わたしはイスラム教のことをほとんど知りません。マグレブの音楽には多少馴染みがあっても、『クルアーン』を読んだこともなく、イスラム文化と自らの文化に接点を見出すこともありません。それでもイスラム教徒の人々には、ちょっとした親愛の気持ちを抱いてもいます。というのもわたしが住むのは、イスラム教徒のバングラデッシュ人が、ミニマーケットやレストランを多く開く地区であり、長く住むうちに挨拶を交わしたり、世間話をする顔見知りも多くなったからです。そこで、わたしとは全く違う文化を持つ隣人たちが、敬虔に信仰するイスラム教に少し近づいてみようと思いたち、ローマのGrande Moscheaグランド・モスク)へ行ってみることにしました。 Continue reading

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ローマ・テルミニ駅の24番ホーム地下から発信: TerminiTV

「知ってるかい? 誰もがこのイタリアの鉄道の中枢、「ローマ・テルミニ」をターミナル、「終着駅」、つまり終着地点を意味する命名だと勘違いしているけれど、それは間違いなんだ。 テルメ・ディ・ディオクレツィアーノの近くだから「テルミニ」という名がついたんだよ。ここは古代ローマ時代テルマエ(ラテン語)、つまり温泉地域だったんだからね」 マルチメディアスタジオ、テルミニTVのFrancesco Conte(フランチェスコ・コンテ)は開口一番にそう念を押しました。 Continue reading

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人が暮らす現代美術館: Metropoliz、あるいはMAAM

ローマで「現代美術館は?」と聞かれて、すぐに思いつくのはフラミニオ地区のMAXXI、そしてテスタッチョ地区のMACROというところですが、実はもうひとつ、プレネスティーナ通り913番地に、土曜日だけ公開されるMAAMMetropoliz(メトロポリツ)という巨大アートスペースがこっそり存在していることは、一般にはあまり知られていません。しかもそのスペースには、250人余りの人々アート作品と共に普通に暮らしているのです(タイトル写真は、ある角度から部屋を見ると、LE SPACE EST A VOUS. スペースは君たちのものだ、と文字が浮き上がるフランス人アーティストによる作品)。 Continue reading

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芸術家ディエゴ・マッツォーニとフラミニオで

街を散歩するにはちょうど気持ちよい季節。画家、そしてミュージシャンでもあるディエゴ・マッツォーニと一緒にフラミニオ地区を歩いてみました。というのも彼に会うたび、その繊細で、ちょっとマジカルな視点に、なるほど、このようにローマに接するともっと多くのことが見えてくる、とおおいに学ぶことがあるからです。また、子供のころ、『鉛の時代』をライブに過ごした彼の記憶から、街角に充満していたその時代の空気を、多少とはいえ、窺い知ることもできました。 Continue reading

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