日本では、もはやマニア、あるいは研究者以外には、あまり語られることのないピエール・パオロ・パソリーニですが、イタリアにおけるここ数年の、特に若い人々の間でのパソリーニ人気の高まりには目を見張るものがあります。今年2015年、彼がオースティアの沿岸、水上機停泊地で惨殺されて40年を迎えた11月2日の命日、ローマはもちろんイタリア各地でパソリーニ関連のイベントが開かれ、新聞、TVのマスメディアも大きく特集を組みました。 Continue reading
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芸術家ディエゴ・マッツォーニとフラミニオで
街を散歩するにはちょうど気持ちよい季節。画家、そしてミュージシャンでもあるディエゴ・マッツォーニと一緒にフラミニオ地区を歩いてみました。というのも彼に会うたび、その繊細で、ちょっとマジカルな視点に、なるほど、このようにローマに接するともっと多くのことが見えてくる、とおおいに学ぶことがあるからです。また、子供のころ、『鉛の時代』をライブに過ごした彼の記憶から、街角に充満していたその時代の空気を、多少とはいえ、窺い知ることもできました。 Continue reading
Leaと行くヴェネチア・ビエンナーレ
2日間という短い時間でしたが、ローマを離れ、ジュネーブ在住のイタロフランセ(仏伊国籍を持つ)のアーティスト、Lea Tania Lo Cicero(レア・タニア・ロ・チチェロ)とヴェネチア・ビエンナーレに行きました。ビエンナーレのあり方については、多少批判的な気持ちもなくはない、のですが、それでも2年に1度のお祭り、世界各国から集まったアートのラビリントで迷う「非日常」はなかなかえがたい体験です。 Continue reading
『鉛の時代』と「死刑台のメロディ」:米国最悪のサッコとヴァンゼッティ冤罪事件
ご承知の通り、イタリアも日本同様、第二次世界大戦の敗戦国です。しかし同じ敗戦国であっても、イタリアは世界でも10本の指に入る武器産出国であったり、NATOの一員であったりと諸々の状況は大きく異なります。もちろんイタリアは欧州連合を形成する1国ですから、地政学的な相違が大きいのですが、米伊の関係に関しては、1800年代後半からのイタリア移民に端を発する両国の愛憎が影響しているように思います。(タイトルの絵は Ben Shahn : Vanzetti e Sacco) Continue reading
ローマ大学サピエンツァに通うジュリア・リサーリに、政治のあり方、宗教に関する忌憚のない意見を聞く
ここしばらく、アンダーグラウンド・ワールドの、どちらかというとコアな人物へのインタビューが続いたので、若いお嬢さんともお話ししてみよう、と最近知り合った大学生にインタビューをリクエストしてみました。今年の9月から大学生になったばかりのジュリア・リサーリに、ローマの若い世代は毎日どんなことを思いながら過ごしているか、日常を尋ねてみます。 Continue reading
タブーにも果敢に挑み、暴き尽くす、イタリアのジャーナリストの『受難』
イタリアの人々は、主要メディアの報道に対して、かなり不満を持っているようではありますが、外国人であるわたしには、イタリアのジャーナリズムには「禁忌となるテーマ」が、ほぼ存在しないのではないか、という印象を持っています。闇のなかに埋もれ語られずにいた「不都合な真実」に光をあて、徹底的に暴き尽くし分析する、なかなか気骨のあるジャーナリストがイタリアには多くいて、スクープのたびに国じゅうが大騒ぎになることも少なくありません。 Continue reading
テアトロ・ヴァッレ 役者Mario Migliucci
このサイトの初頭あたりで「占拠」の一例として紹介した、イタリアだけでなく海外においても、新しい文化モデルのひとつとして大きな評価を受けたテアトロ・ヴァッレ・オクパート。2014年8月に「占拠」が終わったのち、現在に至るまで、メンバーたちは次なるアクションを模索している最中です。 Continue reading
映画館の「占拠」から生まれた、ローマの夏 、サン・コシマート広場の夜毎のチネマ
ローマでは毎年夏になると、あちらこちらの広場や公園でコンサートやチネマ・アペルト(オープンチネマ)が開かれ、そのイベントの数々は夏の風物詩でもあります。しかし去年あたりからローマ市財政危機のせいか、夏のイベントもぐんと縮小。残念、と思っていたところ、トラステヴェレの広場で、素敵なチネマのフェスティバルが開催されました。 Continue reading
参考:ピエール・パオロ・パソリーニ 伝説の記事 Io so 「僕は知っている」
パオロ・グラッシーニがインタビューで語った、1974年、12月14日にコリエレ・デラ・セーラ紙に寄稿されたピエールパオロ・パソリーニの、冒頭、詩のごとくはじまる記事 ”Cos’è questo golpe? Io so(このクーデターが何なのか、僕は知っている)”は、時代を超え、伝説にすらなっています。 Continue reading
ユダヤのペテン師 Alessandro Piperno
その若さにも関わらず、イタリア現代文学、そして映画について、これほど繊細なアンテナ、審美眼を持ち合わせる人物をわたしは他に知りません。二宮大輔氏、第1回目の寄稿(写真はアレッサンドロ・ピペルノ“con le peggiori intenzioni“表紙より)です。 Continue reading