いよいよイタリア共和国憲法の改革を問う『国民投票』の日を迎えました。イタリアのマスメディアは、過熱するだけ過熱し、フィナンシャル・タイムズやウォールストリート・ジャーナルなどのグローバル経済各紙も、今回のイタリア国民投票の結果が、イタリアのみならず、欧州、そして世界に及ぼす影響を分析しています。「市場の反応はかなり悪い状況になりそうだ」と煽ったり、「いや、イタリアの政治不安は今にはじまったことじゃないから、Noー不承認が出ても市場は何も変わらない。イタリアの悪化した金融機関の状況は悪化したまま進んでいく」などと、好き勝手に報道しています。
Author Archives: HirashimaMiki
市民が撮るソーシャル・ムービー :リアクション・ローマ
MACRO Factory(マクロ・ファクトリー)に入った途端、見慣れているはずのローマのストリートの風景が広がり、スペースに充ちる不穏を孕む強烈な音響に、街の深層に迷い込んだような気分になりました。そう、そこにインスタレーションされているのは、ローマの住民たちの視線が捉えたリアルなローマの風景、そして今現在、街にじわりと漂う空気感と言えるでしょう。人々が自らの周囲の風景をモバイルやカメラを使って撮影したムービーを再編集、5つのカテゴライズでインスタレーションされた、ローマではじめての実験的「ソーシャル・ムービー」Reaction Roma。その指揮を執った映画監督であり映像作家の Pietro Jona(ピエトロ・ジョナ)に話を聞きました(写真はビデオインスタのひとコマ。 Misunderstories から引用)。
高校生のスロー・インフォメーション:Scomodo No.0
なるほど。マニフェスト紙は、ローマの高校生たちの編集によるこの月刊誌、『Scomodo(スコモド:厄介な、迷惑な、邪魔な、気難しい)』を、「スロー・フード」ならぬ、「スロー・インフォメーション」と表現しています。スピードと軽さとインパクト、玉石混淆でWeb上を濁流となって流れ、巨大な渦になったかと思うと、瞬く間に消え去る無限の情報に、まさに「Webド真ん中世代」にいる高校生の有志たちが「待った」をかけたという現象です。超人気アンチグローバルFumettista(フメッティスタ:コミック作家)、ZeroCalcare(ゼロカルカーレ)デザインの表紙で、No.0がいよいよ登場しました。
イタリアのテアトロをぶち壊したシモーネ・カレッラ
シモーネ・カレッラ(写真左から2番目)の芝居をはじめて観たのは2001年、ローマ市営の劇場、テアトロ・インディアで上演された『Peppe er Tosto(ペッペ・エル・トスト』でした。これはローマのディケンズと呼ばれるジョゼッペ・ジョアッキーノ・ベッリのソネットからインスパイアされた芝居で、テアトロと呼ぶにはあまりに大がかりなイベントでした。テアトロ・インディアの敷地全てを街角に見立て、数え切れないほど大勢の役者が縦横無尽に動き回り、あちらこちらで芝居が同時進行する、という度肝を抜かれるダイナミックな演出で、今でもその時の光景と、鳥肌が立つような興奮をありありと思い浮かべることができます。
ローマ、「オリンピック、ノー・グラッツェ」五つ星運動、ヴィルジニア・ラッジ市長の決断
ヴィルジニア・ラッジがローマ史上初の女性市長として華々しく就任して、約100日。時間と闇、利権と癒着、虚偽と犯罪とゴミに覆われた、ローマという都市を正常に機能させる行政システムを構築するには、確かにかなりの荒業が必要とは想像していました。それでも飛ぶ鳥を落とす勢いの『五つ星運動』の新星、ヴィルジニア・ラッジ率いるローマ市政が、こんなに早い時期に、収拾のつかない混乱状態に陥るとは想像しませんでした。 Continue reading
ローマの刑務所レビッビア、堀の中のシェークスピア:ジャンカルロ・ カポッツォーリ
ローマのレビッビア刑務所を舞台に、イタリア映画の鬼才タヴィアーノ兄弟が撮影したドキュドラマ映画、Cesare deve morire (邦題「塀の中のジュリアス・シーザー」ー2012年ベルリン映画祭金熊賞)では、シェークスピアを演じる受刑者たちの迫真の演技、全編に流れる生命の躍動に圧倒されました。レビッビアの受刑者たちが演じる芝居をいつかライブで見てみたい、と強く願い続けるうち、ようやくその機会に遭遇することになります。長い時間をかけて準備され、たった1日だけ公演された、受刑者によるシェークスピアの「オセロ」。演出家のGiancarlo Capozzoli(ジャンカルロ・カポッツォーリ)に話を聞きました。 Continue reading
ローマから世界に挑戦する若き地理学者 :ジュゼッペ・マリア・バッティスティ
彼がヒップホップのDJとして活躍していることは以前から知っていましたが、まさかローマの郊外をこれほど丹念に研究し、精密に分析する地理学者に成長していた、とはまったく想像していませんでした。最近街角で見かけないと思ったら、去年から英国で働きはじめたということ。たまたま道で会って立ち話をするうち、大学を卒業して1年経つか経たないにも関わらず、客観的で成熟した視点を持ったこの青年に、おおいに学ぶことがありました。そこで日を改めて、ゆっくり話を聞かせてほしいとお願いしてみました。 Continue reading
ローマに新風、女性の市長 ヴィルジニア・ラッジ
『MoVumento 5 stelle(五つ星運動)』が、今回のイタリア統一地方選挙でこれほどの躍進を遂げ、現政権である『PD(民主党)』が惨敗するとは、正直、思っていませんでした。まず、19日に行われたローマの決選投票では、市の相談役の経験があるとはいえ、まったく無名の弁護士、ヴィルジニア・ラッジが、PD候補者ロベルト・ジャケッティ32.03%に対し、67.17%という記録的大差の勝利。ローマ市では史上はじめての女性、さらに37歳という最年少の市長が生まれることになりました。
集積から空へ:大きく変容するローマの画家 サルヴァトーレ・プルヴィレンティ
Salvatore Pulvirentiは、彼の描く絵のインパクトもさることながら、その飄々とした風情、柔らかい物腰と常に紳士的な振る舞いに、いつもほっとさせられる画家です。ここ数年、制作を停止、沈黙していたそのサルヴァトーレ・プルヴィレンティの展覧会が、久しぶりにbibliotheで開かれ、展示された作品を観た途端にあっと驚区ことになりました。魔術的な色彩が踊るプルヴィレンティ・スタイルからは想像できない、「空」をも感じさせる「墨絵」が壁の一面を覆っていたからです。 Continue reading
ようこそ、宇宙へ。深淵かつおおらか、これぞローマの書店 Libreria A. ロトンディ
信念と愛情を持って集められた本が並ぶ書店が、わたしは大好きです。選び抜かれた古書、あるいは専門書を扱うちいさい書店の、ショーウインドーに並ぶ本のタイトルを眺めるだけで、今まで知らなかった異次元の世界を垣間見るような気がします。ガラス扉を開いた途端、古いインクと紙の匂い、スペースにひたひたと充ちる本の魂に、ふわりと全身が包みこまれる。これこそ「ローマの書店」と呼びたいLibreria A. Rotondi(リブレリア・A・ロトンディ)を久しぶりに覗いてみました。 Continue reading