極右政党『同盟』が政府から消えて40日、『グリーン:環境』が主人公となったイタリア

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 難民の人々を巡る新政府の動き

さて、最も気になっている難民の人々の処遇に関していえば、なんといっても、マテオ・サルヴィーニが執拗に推進して制定された、『国家安全保障』『国家安全保障追加法』を、イタリアの法律から削除することに、わたしを含め多くの人々が、まず着手してほしい、と強く希望している状況です。

新政府樹立後、即刻廃案になるか、とも考えていましたが、欧州各国で交わされたダブリン合意の見直しを含んで、なかなかそう簡単には進みません。

中東情勢、アフリカ大陸の紛争や圧政、貧困状況は何ひとつ変化しないため、難民の人々は今まで同様、一縷の希望を託し生命をかけて欧州を目指して地中海を渡らざるをえなくなる。そして10月7日には、ランペドゥーサ沖で再び船が沈没。救助が間に合わず、多くの子供たちや女性たちが海で溺れて亡くなるという、どうにもやりきれない出来事が起こりました。亡くなった人々のなかには8ヶ月の赤ちゃんも含まれていました。

さらにここ数日のうちに勃発した、トルコの北シリア侵攻は、欧州の大きな懸念となっています。ISISと果敢に闘って、地域からテロリストを一掃。いわば、いままで西欧を守っていたクルドの人々が住む地域に、米国軍撤退に乗じて突然侵攻するという暴挙に、欧州連合はエルドガン大統領を強く非難。

「反対するなら350万人のシリア難民を欧州に送り込む」とのエルドガンの脅迫に、「戦禍を逃れた難民の人々を脅しプロパガンダに使うとは」と、その非道に憤ったディ・マイオ外相は「今後一切、トルコには武器を売らない、送らない(イタリアはトルコに8.9億ユーロ相当の武器を輸出していました)」と宣言し、欧州各国がイタリアに続くことを呼びかけました。

しかし、つい数年前までは欧州連合に加盟する予定もあったというのに、シェンゲンに加わることを欧州から拒否されてからというもの、どうもトルコの雲行きが怪しくなりました。今回各国の警告を無視し、「シリアの難民の人々を北シリアに隔離する」ためにクルド地域に進軍したことには、イタリア市民の間でも一斉に非難が巻き起こり、あちらこちらで抗議デモが行われています。

イタリアには、ISIS攻略のシンボル、北シリアのコバーンで過ごした毎日を漫画で描いたゼロカルカーレや、クルドYGPー人民防衛部隊とともにISISと闘って戦死した青年もいて、クルドの人々に深い共感を抱く人が多く、アンチファ・デモの際も多くのイタリア在住のクルドの人々が参加します。

また、クルドの女性たちが銃を持ってISISと敢然と闘う姿は、「まるでパルチザン」と大きな賞賛を浴び、イタリアの女性たちの間に強い共感を呼びました。その強く、逞しい女性のシンボルのひとりである、女性の人権のために闘ってきた政治活動家、ヘブリン・カラーフがターゲットとなり(トルコ軍、あるいはISISの関与と言われますが、詳細は不明です)、10月13日に殺害された際は深い哀しみに包まれ、著名ジャーナリストがニュースを読み上げる際、声を詰まらせるほどでした。

クルドの人々が北シリアから追い立てられる状況下、YGPが拘留していたISISのテロリスト、また原理主義のジハディストたちが、その機に乗じて脱獄したとも伝えられますから、またぞろ欧州はテロの恐怖に怯えなければいけないのか。早速北シリアに、ISISの旗がなびき、戦闘をはじめたというニュースも入っています。

ここにきて、イランーロシアを背景に持つシリア政府軍が、クルド(SDF=シリア民主軍+YGP)の人々が急場で求めた保護を約束し、北シリアに進軍をはじめたようですが、エルドガンが盛んに主張する「YGPはテロリスト」という主張は、イタリアではまったく受け入れられていませんし、むしろ非常に民主的で勇敢な人々として肩入れする人々の方が多い。今回に関しては極右政党も、エルドガン大統領を厳しく糾弾しています。

そもそもシリアにこれほど長い紛争が続く原因となった『アラブの春』に、米国、欧州、ロシア、中東の大国が入り込んで、もはや収拾がつかなくなっている。欧州は欧州で、トルコに難民の人々を長い間押しつけ(その見返りとして経済援助もありましたが)、エルドガンはシリア難民の人々にかこつけて、自身の政治的野望とトルコ国民への威信を保つため、北シリアのクルドの人々を力で一掃したいだけのようにも思います。

シリア紛争の終結が鮮明になってきた、という分析もありますが、ここ数日のトルコの北シリア侵攻では、多くの民間人が処刑され、犠牲となり、さらなる難民の人々が生まれている。北シリア地域の爆弾、戦闘、飛行機の攻撃で『国境なき医師団』も「無念だが、撤退せざるをえない」と表明しました。

しかしなぜ、何の罪もない市民が突然難民とならなければならず、シリアではマイノリティのクルドの人々が邪魔者扱いされ、危険に晒され続けなければならないのか。

『国家安全保障』の廃案を絶対に阻止する、と宣言しているサルヴィーニは、SNSを駆使して「新政府が樹立して、イタリア国内に上陸した難民の数は、昨年の同時期に比べて152%増加している(サルヴィーニ本人が港を閉めたのですから)。昨年の上陸数947人に対して2400人の難民が上陸しているのだ」と主張。以前と何ひとつ変わらず、エルドガン同様の脅しプロパガンダで人々の恐怖を煽る、難民排斥キャンペーンを繰り広げています。しかし、このような状況では、もはや何のインパクトもありません。

こんな世界が続くなら、難民の人々の数が増えるのは当たり前です。

 

アフリカから来た青年たちの人権デモに参加した際のスナップ。音楽に満ちた明るく、力強く、楽しいデモでした。

 

ダブリン合意からマルタ合意へ

難民の人々を巡る問題に関して、9月23日、新政府がただちに行ったのが、ダブリン合意風穴を開ける、イタリア、マルタ、フランス、ドイツ、フィンランドが参加して行われた『マルタ合意』でした。

現行では、難民の人々を受け入れた国が、ドキュメントの発行をはじめ、彼らの欧州滞在の全責任を負わなければならないため、現在、難民の人々の出発点となっているリビアに最も近いイタリアが、彼らの到着地となり、全責任を負わなければなりません。また、イタリアから北欧州へと移動した人々も、イタリアへ追い返されるという状況が続いています。

今回新たに話し合われた『マルタ合意』の内容は、というと、NGOや沿岸警備隊などの船で救助され、イタリアのホットスポットに上陸した難民の人々の10%から25%を、賛同した国々が受け入れるというもので、到着地となったイタリアが、人々を受け入れる書類を作成したのち4週間以内に、人々は他国へ移動。彼らの今後の生活の責任を欧州各国で共有するというものです。

この合意にはポルトガル、アイルランド、ルクセンブルグ、ギリシャ、スペインが賛同する意向を見せ、さらに各国に広がることが期待されています。今後欧州各国間でその署名を巡って話し合いが続くはずですが、なるべく早い時期に各国の同意が表明されることを願います。欧州そのものがNATOとして、難民の人々を生み出す紛争に関わっているのですから、「知らぬ存ぜぬ」はもはや通用しません。

さらに10月4日には、『5つ星』のディ・マイオ外務大臣、ブォナフェーデ法務大臣の強い要望のもと、イタリアが安全と見なした国から訪れた難民の人々は、自らの危機的状態を証明できなければ、出生地である国へ4ヶ月以内(現行法では、2年以内となっています )に強制送還する、という法律が可決されています。

※イタリアと合意を結んでいる国々は、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、アルバニア、ボスニア、カポヴェルデ、ガーナ、コソボ、北マケドニア、モンテネグロ、セネガル、セルビア、ウクライナの13国。

しかしこの法律に関していえば、「自らの危機的状況を証明する」基準が曖昧で、どのような方法で証明できるのかも明確ではなく、簡単に線引きができるのかどうか、大きな疑問を感じますし、根本的な解決策になるとは思えません。

現実的には2019年の今年に入って、自国へ強制送還された人々は5261人(2018年 6820人、2017年 6514人)に上るのだそうですが、人々の強制送還のために5000万ユーロが確保されたという、この法律に関しては、しばらく様子を見たいと思っています。

なお、今年の『移民・難民デー』に発表されたカリタスのレポート(ラ・レプッブリカ紙)では、イタリアで生活する移民、難民の人々のパーセンテージは、ドイツ、英国(まだ、とりあえずは欧州連合なので)についで、欧州で3番目に多く、イタリア全人口の8.7%(5225503人)に上るのだそうです。

そのうち、生きるための仕事を求めて欧州移住を決意してイタリアを訪れた人々は減少し、亡命、あるいは人道的救援を求めて訪れる人々が増加しています。彼らはサルヴィーニの『国家安全保障』のせいで、いったん受け取ったヴィザを剥奪されたり、あるいは申請すらできないまま、イタリア国内滞在(レスプレッソ紙)を余儀なくされ、ドキュメントを持たないまま、生きるためになんらかの仕事をしなければならない状況です。

これでは、人権も労働基準法も守られることなく、酷い労働条件で働かされる可能性があり(実際、難民として訪れた人々のあまりに過酷な条件での労働環境が、大きな社会問題となっています)、あるいはマフィアたちにつけ込まれ、麻薬の密売や売春などに引きずり込まれるケースが増加する。一刻も早いサルヴィーニ法の廃案が待ち望まれます。

▶︎議論がはじまった外国人の子供たちの市民権は次へ

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