どんとこい、と気合が入った第1波の頃とは、ずいぶん様子が変わったかもしれません。Covid-19第2波のまっただ中にある現在のイタリアでは、あの頃全国のベランダに響き渡った、共に励まし合う歌声や、窓辺に飾られた医療関係者への感謝の言葉を、ほとんど見聞きすることがなくなりました。未知のウイルスは、以前と変わらず一瞬たりとも気の抜けない恐ろしい脅威でありながら、もはやわれわれの日常の一部になったようです。イタリアでSars-CoV-2の存在が、オフィシャルに顕在化して約10ヶ月。ある程度の封じ込めに成功したはずのイタリアに、これほど過酷な状況が再び訪れるとは、正直なところ、誰も思っていなかったと思います(写真は人波の途絶えた街に、我関せず。悠々と聳えるコロッセオ)。
現在の状況
イタリア、そして欧州の国々だけでなく、世界中がウイルスと格闘している現在、改めてその状況を俯瞰することには、あまり意味がないのではないか、とも思いました。しかし未来から振り返った時、そのときイタリアで何が起こったか、何が話題になったか、たった今の状況を残しておくことで、見えてくるものがあるかもしれない、とも考え、投稿としてまとめてみることにしました。
まず、このようなユニヴァーサルな災禍に長期間見舞われることは、まったく想定外の不意打ちだったため、無防備なまま流れに巻き込まれた自らの心理だけでなく、社会そのものの心理が、少しづつ変化するプロセスを体験することは、貴重な学びになっています。
現在のように非日常的な緊張が長く続くことで、人間は衝撃にも、痛みにも次第に慣れて鈍感になるのだ、ということを実感した時、たとえば戦争を含める、厳しく暴力的な状態に陥った場合も、われわれの心理は意外にすんなりその異常に順応し、自分の置かれた状況を「正常」だと認識しようとする保護本能が働くのかもしれない、とも考えました。しかしそれは、考えようによっては恐ろしいことでもあります。
現在のイタリアの感染状況はといえば、12月3日、新しい感染者数が23219人、亡くなった方の数が993人となり、亡くなった方の数が、パンデミックはじまって以来の最多を記録しました。
毎日のPCR検査数は3月に比べ、ほぼ10倍となり、1日に約20万~30万件(週末の検査は10万件台に減少します)実施されているにも関わらず、11月16日には陽性率が17.9%に上り、第1波よりはるかに暴力的な感染に陥っています。
10月8日のマスク着用の義務化からはじまり、飲食店の営業時間の短縮、夜間の外出禁止令と続き、11月6日からは州別にレッド、オレンジ、イエローと3段階に色分けされ、州それぞれに細かい制約が課せられるようになりました。
それから約1ヶ月を経て、陽性率はようやく10%±、Rtは1±に落ち着いてはいますが、油断できない深刻な状況にあることには変わりなく、亡くなる方の数が一向に減少しないことが心配です。
11月28日には各州の色が、左から中央のように変わり、今までレッド・ゾーンだったロンバルディア州やピエモンテ州など北部の州、事態の悪化が懸念されていた南部のカラブリア州がオレンジ・ゾーンに、リグリア州やシチリア州がオレンジ・ゾーンからイエロー・ゾーンに変わりました。
さらに12月4日には右のように、アブルッツォ州以外はオレンジ・ゾーン、イエロー・ゾーンへと変わることになりました。このように感染の状況によって、1、2週間ごとに各州の規制が変わるため、そのつど内容を読み返し、確認しなければなりません。
レッドの州は食料品店や薬局、あるいはヘアサロンなど、生活に最小限必要なお店以外の小売店や飲食店(持ち帰り、デリバリーのみ可)が閉じられ、仕事、通学、健康上の理由以外での州、市をまたぐ移動は禁止。移動には自己誓約書を必要とする実質的なロックダウン地域となります。
オレンジの州はお店は開店していますが、飲食店(持ち帰り、デリバリーのみ可)は閉じられ、こちらも州、市をまたぐ移動は禁止。移動の際には自己誓約書を必要とするセミ・ロックダウン地域です。
イエローの州は、お店は通常通り、飲食店も午後6時までは開店していますが、テーブルに着席できる人数が4人に制限され、ショッピングモール、デパートなどの大型店は週末の閉店が義務づけられています(12月4日より変更)。
イタリア全国共通の規制として、午後10時以降午前5時までは外出禁止。学校は、小さい子供たちは対面授業、高校生以上(レッドの州は中学2年生から)はオンラインでの授業が続けられ、1月7日までは、対面授業は再開されません。また、劇場、美術館、映画館、スポーツジム、ゲームセンターもすべてクローズとなっています。
わたしが住んでいるラツィオ州は、今のところレッドにもオレンジにも指定されたことはありませんが、イエローゾーンであっても日常生活が大幅に制限されることには変わりなく、街角には閉塞感が漂います。なにより、劇場や美術館などの文化施設がすべて閉鎖という状況は耐えがたいストレスです。
クリスマス・シーズンを控えて人々の気が緩み、中心街にドッと人が繰り出すこともあり、そのたびに保健相やISS(国家高等衛生機関)、医療従事者たちから、「ありえない。再びあっという間に感染が拡大する」と何度も注意が喚起されました。
いずれにしても、12月3日のDcpm-首相令では、今までの規制がさらに強化されることになりましたが、その詳細は後述したいと思います。
▶︎南イタリアにまで広がったSars-CoV-2