Covid-19第2波のまっただ中、いまだかつてないクリスマスシーズンを迎えて、ストイックに閉じられたイタリア

Deep Roma Eccetera Società

増加する貧困と、1月から接種がはじまるワクチン

確かに「には第2波が訪れる可能性が高い」「いや、ほぼ確実に訪れる」と、第1波が落ち着いてからも、免疫学者や医療関係者、保健相やISS(国家高等衛生機関)のメンバーたちがことあるごとに発言していました。

それでも人間というものは不思議なもので、「嵐が過ぎ去った」かのように感じられた初夏には、「第2波が訪れるかもしれないが、みんな注意しているし、医療機関も充実しはじめたし、過酷を極めた第1波より酷い状態には陥らないだろう」ぐらいの楽観的な気持ちと、ちょっとした自信に満ちてもいました。「医学的には、ウイルスは消滅したと言える」という著名医師の発言もあったぐらいです。

9月から10月にかけ、フランスや英国、スペインの状況があっという間に悪化したにも関わらず、「欧州の優等生と讃えられたイタリアは、感染が広がったとしてもそこまで酷くならない。イタリアは大丈夫」という錯覚に囚われていたのかもしれません。

とはいえ、わたしが知っている限り、マスクが義務化する以前の真夏でも、大半の人々がマスクを着用し、ソーシャルディスタンシングも厳格に守り、大きなお店では検温、レストランでは消毒も欠かさなかったのです。バールやお店など、対面で仕事をしなければならない人々と世間話をすると、「用心のためにPCR検査を受けてきた」という話が日常的に交わされてもいました。

あまりに無節操なお祭り騒ぎが繰り広げられた真夏、ナイトクラブではクラスターが発生し、ローマでも若者たちが深夜のモヴィーダで騒いではいました。また、入国した外国人から感染が拡大したり、海外にバカンスに出かけた人々、特に若者たちから感染が広がったケースがありましたが、その時点ではコンタクトトレースは成功しており、8月中旬からは検査数も10万件台に増加していました。

 

第1波が収まってから10月1日までは、わずかな感染の増加しか見られませんが、10月の中旬から爆発が起こりました。左が総感染者数の動向。右が1日の感染者数の動向。いずれも、濃いピンク=総感染者数、ピンク=現在の陽性者数、グリーン=回復者数、黒=亡くなった方の数。Il Sole 24 ore紙より。

 

そういうわけで、正直なところ、なぜ10月13日5818人だった感染者が、そのたった1ヶ月後の11月14日40902人となるほどに急増したのか、まったく理解できませんでした。

気温が下がって密室に集うことが多くなったせいなのか(しかしイタリアは1月31日から今まで、ずっと緊急事態宣言下であり、劇場も映画館も閉鎖され、大人数のイベントも禁止されています)、それとも無症状感染者の国境を超えた夏の移動のせいなのか、若者たちの夏のアバンチュールから家族に拡大したウイルスが、学校やオフィスが通常通りに開いたと同時に一気に拡大したのか、9月の『州選挙』や『国民投票』でおのずと人が群れる状況が作られたからか、はたまた「ウイルス陰謀」派の度重なるデモのせいなのか、それともそれらすべてが複合的に作用しあったのか、どうも理由が判然とはしません。

米国CDCのレポートによると、感染の50%以上無症状感染者からだそうで、WHO幹部が「ある時点から驚く速度で感染が広がる」と指摘するように、Sars-CoV-2はいったん押さえ込まれ、しばらくの期間は消滅しつつあるようでも、ある日突如として凄まじい勢いで感染が広がり、と同時に重症者が急増します。

第2波以前には、マスクが義務化され、ソーシャルディスタンスを守り、消毒を欠かさなかったにも関わらず、サージェリーマスクやffp2マスクがまったく手に入らず、誰もが手作りマスクをかけていた第1波よりも早く、広く感染が広がったという印象です。欧米人はキスやハグで挨拶するから、とか、衛生観念が希薄だから、民度(?)が低いから、などという理由では、今回の感染拡大はまったく説明できません。

 

近所の公園では、小学校低学年の子供たちの「青空教室」が開かれているのをときどき見かけます。社会にどんよりとした緊張が満ち、ともすれば子供たちも閉塞感を感じがちな時期、先生たちも子供たちがのびのび過ごせるように、いろいろ工夫されているようです。

 

こうして第2波が、第1波より、さらに暴力的な感染拡大になったにも関わらず、イタリア政府が、思い切った全国一斉ロックダウンに踏み切ることがなかったのは、もはやイタリアには、その体力がなかったからに他なりません。

しかし考えようによっては、地域別の段階的ロックダウンという方法で、今のところ、ソフトにではあっても感染拡大にブレーキをかけることに成功しつつありますから、今回、政府及びCTS(Comitato tecnico scentifico=タスクフォース)は、ウイルスと経済のバランスをギリギリで保つ、ある種実験的な措置に踏み切ったとも言えるのです。

ともあれ、Covid第2波を受け、2020年のイタリアの赤字国債GDP比170%に上るという試算になるそうで(ちなみにドイツは83%、日本は248%)、確実に景気は冷え込んでいる。久々に街を歩くと、10ヶ月前まではトゥーリストと買い物客で賑わっていた通りが、「ロックダウン中」かと見紛うほど、お店やトラットリア、バールのシャッターが下りているのに出くわし、愕然とすることがあります。

また、これからどんどん寒くなるというのに、路上で暮らす人々の数が日に日に増えているのも、厳しい現実です。余談ですが、つい最近のこと。アーケードを「お茶の間」代わりに家財道具を置き、クッションを敷いて、みかんや柿を食べながらなごやかに談笑する路上暮らしグループを見かけ、そのたくましさに励まされましたが、もちろん彼らのように力強く路上暮らしができる人々は、大変にです。

カリタスのレポートによると、Covid-19により貧困に陥った働き盛りの女性たち、男性たち、小さな子供を抱えた家族の割合は今年に入って31%から45%まで増加しています。少なくとも5万人の人々がカリタスが提供する、食糧など救援物資の列に並ぶようになったそうです。

さらにウイルス感染拡大を受け、仕事を失ったり、減収したりと、イタリアで困窮に陥り、クリスマスに支援を必要とする人々は400万人に上るという分析データが、Coldiretti(中小規模農業をプロモートするための伝統的なアソシエーション)から発表されています(AGI)。これは『世界貧困デー』の一環として、フランシスコ教皇が開いた11月15日のミサを機にリサーチされた統計だそうです。

例年であれば、『世界貧困デー』のミサが開催される日には、フランチェスコ教皇が世界各国の困窮した人々1500人を招いて、大がかりな食事会が開催されますが、今年はCovid-19の影響下、100人という少数の代表者のみが参加する昼食会となりました。

なお今年は、恒例となっていたサン・ピエトロ広場での困窮者のチェックアップという医療支援も中止されることになり、その代わりにPCR検査を思うように受けられない人々のために、ヴァチカンが医療キャラバンを編成し、午前8:00から14:00まで2週間、希望する人々にPCR検査を提供しています。

いまさらこんなことを言っても「あとの祭り」にすぎませんが、第1波が訪れた際、イタリアだけでなく、欧州全域が一致団結し、完全にコンタクトトレースができるようになるまで(理想を言えば感染がゼロになるまで)、感染者数を抑え込む対策を実施することが可能であったならば、状況は一変したはずです。各国ともに、あれほど厳格に、長期の全国一斉ロックダウンに踏み切ったのに、と残念でなりません。

感染が完全に落ち着かないまま、人々がシェンゲンを移動すれば、無症状感染者に紛れ、大量のウイルスも移動するに違いない、とド素人のわたしでも理解できますし、長期押さえ込みに成功している国々もあるわけですから、欧州全域の国々が焦ることなく一斉に協力して、あと2週間か3週間、辛抱してロックダウンを継続していたならば、秋の第2波の状況は大きく変わったであろうと思います。

それにともない、経済への打撃も、はるかに少なくて済んだのではないか、とも考えるのです。

 

※トリノやミラノでも報告されていますが、学校が閉鎖され、自宅でのリモート授業を余儀なくされている高校生たちが集まり、一丸となって路上で勉強する、という光景があちらこちらで見られるようになりました。ローマでは「学校はわたしたちだ!」のスローガンとともに、サンタマリア・マジョーレ教会の近くの高校オフィスの前で路上勉強が繰り広げられました。彼らは状況の深刻さを十分に理解しているため、すぐに学校が再開されることを望んでいるわけではありませんが、通学する学生たちで100%を超える乗車率となり、問題となったバスなどの公共交通機関に、政府は(学校再開に向け)投資をすべきだと訴えています。リモートの授業については、教師も学生も共に困難を感じ、ダイレクトなコミュニケーションの重要性を強調。未来が見えない時代を生きていると感じている彼らは、溌剌と勉強できる場としての学校に戻りたいと望んでいます。えらい!わたしが彼らと同じくらいの年頃には、なんとかして学校に行きたくないと考える日々でした。

 

そういうわけで、今の状況では、年初からの供給開始が期待される、ファイザー、モデルナ、アストロゼネカのワクチンに収束を期待するしかありません。しかし、このワクチンに関しては、イタリアで最も信頼できる微生物学者のひとりであるアンドレア・クリサンティが次のような発言をして、物議を醸したという経緯があります。

「通常のワクチンの開発には7、8年を要するにも関わらず、1年も経たずに開発され、十分なテストは行われていないと考えられるワクチンが、1月に配布可能になったとしても、わたし自身はすぐには接種せず、様子を見たいと思っている」「製薬会社が94%、90%効果がある、と断言したとしても、各社から公表されたデータを精査するまでは信頼できないのではないか」

つまり、「効果抜群!」というキャッチフレーズ的な数字だけでは、ワクチンの効果を鵜呑みにはできない、ということです。

メディアへの露出も多く、一般市民に大きな影響力のある学者のその発言に、CTS(タスクフォース)の主要メンバー、そして他の学者たちは、ヒステリックとも思える剣幕でただちに反論。「クリサンティの発言は軽率だ。ワクチンは絶対的信頼がおける」と非難しましたが、仄かに見え隠れする希望の光だというのに、「水を差してくれるな」という感情的な圧力にも感じました。

しかしクリサンティ同様、メディアへの露出が多い、もうひとりの影響力ある感染症学者マッシモ・ガッリも、「彼が言うように、データが十分にないにも関わらず、絶対的な効果があるとは断言できない。わたしも様子を見る」と、毅然としてクリサンティを擁護しています。

実際、常識的に考えて、経験値がまったく足りないワクチンの効果に疑いを持つのは当然ではないか、と個人的にはクリサンティに賛成しますし、それが科学者として当然の振る舞いだとも思います。したがってワクチンに関しては、飛びつくことなく(とはいえ、われわれ一般市民が飛びつけるほど、すぐに接種できるかどうかは定かではありませんが)慎重に対応したほうがよさそうだとも感じます。

それでも、その発言にあまりに多くのエキスパートたちが異議を申し立て、議論に発展したため、クリサンティも「予定されている1月に、自分が働くラボでワクチンが供給されたなら、それがどの製薬会社のワクチンであろうと自分も接種する」と苦笑しながら答えることになりました。

ちなみに、イタリアが集団免疫を獲得するには、4200万人に人々がワクチンを摂取する必要があることに、ISS(国家高等衛生機関)の幹部が言及しています。4200万人、といえばイタリアの全人口の3分の2以上の人々がワクチンを接種しなければならないということでもありますから、その数までワクチンが普及するには、ある一定の時間がかかるはずです。

なおイタリアは、すでに2億200万回分のワクチンを購入しており、1月23日から26日の間に、第一弾としてファイザーのワクチンが届くことになっています。1月29日から、まず医療関係者から接種がはじまり、有効期間や効果をモニタリングしながら、職業別、年代別などで何段階かに分け、2022年まで無料キャンペーンを展開する予定だそうです。

さらに、今後公表される各社の治験データを、EMA(Europian Medicines Agency)が慎重に精査する運びとなっていて、欧州連合は、十分な精査なく12月の接種を発表した英国を、「軽はずみ!」と非難しています。

ところで、ローマのあるラツィオ州では、ホームドクターの処方箋を必要とせず、各22ユーロ(19ユーロ、20ユーロも発見)で簡易PCR検査(15分程度で結果が出るそうです)、抗体検査薬局で受けられるようになりました。数日前から自宅近辺の薬局でもテントを張っての検査がはじまり、予約さえすれば顔なじみの薬局で、気軽に検査ができるようになったのは(欲を言えば、こちらも無料で、と言いたいところですが)、いくぶん頼もしい出来事でした。

▶︎すでに2019年9月から、イタリアでSars-CoV-2が循環?

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