彼がヒップホップのDJとして活躍していることは以前から知っていましたが、まさかローマの郊外をこれほど丹念に研究し、精密に分析する地理学者に成長していた、とはまったく想像していませんでした。最近街角で見かけないと思ったら、去年から英国で働きはじめたということ。たまたま道で会って立ち話をするうち、大学を卒業して1年経つか経たないにも関わらず、客観的で成熟した視点を持ったこの青年に、おおいに学ぶことがありました。そこで日を改めて、ゆっくり話を聞かせてほしいとお願いしてみました。 Continue reading
Category Archives: Deep Roma
ローマに新風、女性の市長 ヴィルジニア・ラッジ
『MoVumento 5 stelle(五つ星運動)』が、今回のイタリア統一地方選挙でこれほどの躍進を遂げ、現政権である『PD(民主党)』が惨敗するとは、正直、思っていませんでした。まず、19日に行われたローマの決選投票では、市の相談役の経験があるとはいえ、まったく無名の弁護士、ヴィルジニア・ラッジが、PD候補者ロベルト・ジャケッティ32.03%に対し、67.17%という記録的大差の勝利。ローマ市では史上はじめての女性、さらに37歳という最年少の市長が生まれることになりました。
集積から空へ:大きく変容するローマの画家 サルヴァトーレ・プルヴィレンティ
Salvatore Pulvirentiは、彼の描く絵のインパクトもさることながら、その飄々とした風情、柔らかい物腰と常に紳士的な振る舞いに、いつもほっとさせられる画家です。ここ数年、制作を停止、沈黙していたそのサルヴァトーレ・プルヴィレンティの展覧会が、久しぶりにbibliotheで開かれ、展示された作品を観た途端にあっと驚区ことになりました。魔術的な色彩が踊るプルヴィレンティ・スタイルからは想像できない、「空」をも感じさせる「墨絵」が壁の一面を覆っていたからです。 Continue reading
ようこそ、宇宙へ。深淵かつおおらか、これぞローマの書店 Libreria A. ロトンディ
信念と愛情を持って集められた本が並ぶ書店が、わたしは大好きです。選び抜かれた古書、あるいは専門書を扱うちいさい書店の、ショーウインドーに並ぶ本のタイトルを眺めるだけで、今まで知らなかった異次元の世界を垣間見るような気がします。ガラス扉を開いた途端、古いインクと紙の匂い、スペースにひたひたと充ちる本の魂に、ふわりと全身が包みこまれる。これこそ「ローマの書店」と呼びたいLibreria A. Rotondi(リブレリア・A・ロトンディ)を久しぶりに覗いてみました。 Continue reading
ローマの骨董修復のマエストロ: マウリツィオ・ボナミーチ
わたしがやってきた頃のローマの街角には、アルティジャーニ(アルチザン)と呼ばれる、昔ながらの骨董の修復工房、鍛冶工房、木工工房があちらこちらに存在し、工房の前を通ると金槌の音や電動ノコギリの音が響く路地に、ニスや油の匂いが漂ってきたものです。そしてその、長年の経験と直感、指の感触で、時を経たオペラ(作品)を蘇らせる職人、何でも修繕してくれる木工職人とボッテガ(工房)の存在が、魅力的で頼もしい、街角の自然でもありました。 Continue reading
音楽シーンを劇的に変えた、ローマ、ピニェートの音楽革命: ファンフッラ
前々から、インタビューしたいと思っていたMan(マヌー)にようやくじっくりと話を聞くチャンスに恵まれました。十数年前までは、散歩するのがためらわれるほど、殺伐と荒れた空気が流れる、うらびれた地区だったピニェートが、あれよあれよという間にローマの若者たちの間で「Fico(cool)!」と話題になる、音楽に溢れた街角になりました。しかもピニェートのその動きからローマのインディ・シーンは激変。マヌーはその変貌の背後に、ひそやかに、しかしブリリアントに存在する人物です。 Continue reading
ベルリン映画祭金熊賞「映画」海は燃えている: Fuocoammare
Sacro GRA 『ローマ環状線、めぐりゆく人生』で、2013年のヴェネチア映画祭、金獅子賞を獲得したジャンフランコ・ロージ監督が、2016年2月、『Fuocoammare : Fire at sea (海は燃えている)』でベルリン映画祭の金熊賞をも獲得。アフリカ、中東からの難民の人々の欧州への架け橋のひとつとなっている地中海の孤島、ランペドゥーサ島の「現実」を追ったこのドキュメンタリーは、並外れて胸に響く作品と絶賛され、ローマでも多くの感嘆の声が上がっています。 Continue reading
ローマ・テルミニ駅の24番ホーム地下から発信: TerminiTV
「知ってるかい? 誰もがこのイタリアの鉄道の中枢、「ローマ・テルミニ」をターミナル、「終着駅」、つまり終着地点を意味する命名だと勘違いしているけれど、それは間違いなんだ。 テルメ・ディ・ディオクレツィアーノの近くだから「テルミニ」という名がついたんだよ。ここは古代ローマ時代、テルマエ(ラテン語)、つまり温泉地域だったんだからね」 マルチメディアスタジオ、テルミニTVのFrancesco Conte(フランチェスコ・コンテ)は開口一番にそう念を押しました。 Continue reading
ローマ郊外にグラフィティで光を取り戻すアートゲリラ:カルロ・ゴーリ
80年代ニューヨークのカウンターカルチャーとしてはじまり、今や世界じゅうに広がった「ストリートアート」、あるいは「グラフィティ」と呼ばれるアートムーブメントは、ここローマの、特に郊外では、まったく普通の街角の風景となっています。どこに行けばどんなグラフィティが観れるか、市がマップを作って新たな観光名所としてプロモーションする、という状況でもあり、ローマには「欧州のストリートアートのセンター」になる、という壮大な野望もあるようです。
『鉛の時代』:「秘密結社ロッジャP2」グランドマスター、リーチオ・ジェッリ
『鉛の時代』の黒幕と言われるフリーメーソン系『秘密結社、ロッジャ(ロッジ)P2』については、詳細を知り尽くしている方々がたくさんいらっしゃるので、ここでは、さらっと上澄みを撫でるだけに留めておきたいと思います。2015年12月15日、『鉛の時代』、ロッジャP2のグランドマスターとして君臨し 、当時起こったほとんどの大事件の背後に、必ず名前があがるLicio Gelli ( リーチオ・ジェッリ)が、96歳という高齢で、トスカーナ・アレッツォの自宅、Villa Wanda(ヴィッラ・ワンダ)で静かに息をひきとりました。そして、その死と同時に人々は、忘れがたく解きようのないわだかまりを記憶に甦えらせることになったのです(タイトル写真はLicio Gelli コリエレ・デッラ・セーラ紙より)。 Continue reading