前々からデザインしていたのでなければ、いったい何が原因で、政権が危機に陥るほどの造反を起こす必要があったのか、まったく要領を得ないうちに、ジュゼッペ・コンテ政権を形成する政党間交渉は、2月2日に決裂。パンデミックの緊急事態宣言下、長期にわたる不毛な協議が予想される、政党間のさらなる交渉を待つことなく、セルジォ・マッタレッラ大統領はただちに「大統領権限によるテクニカル政府」の形成を決断しました。首相候補に指名されたのは、量的金融緩和、及びマイナス金利というバズーカを連発して欧州債務危機からユーロを救った、元欧州中央銀行総裁マリオ・ドラギ。前々から「次期大統領」と囁かれていた、イタリアが誇る国際的なビッグネームは、意外とすんなり首相候補を承諾し、約10日間の各党協議ののち、上院・下院議会の信任を得て、ついに『大連立新政府』が発足する運びとなりました。 Continue reading
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パンデミックの渦中、市民の現実からかけ離れて巻き起こった造反、イタリア連立政権クライシス
「イタリアだからね。すべてのことが起こりうるから」という軽口は、平和な時には笑って済ませられますが、社会がこれほど深刻な状況にある時、その不安と緊張に拍車をかける「政権の危機」を企てることは、倫理的に許されますまい。1月1日のブレグジット(英EU貿易協力協定)発効に続いて、米国新大統領を巡る連邦議会への暴徒の乱入からはじまった2021年でしたから、今年はさらに何らかの波乱があるかもしれない、と思ってはいました。しかしイタリア連立政府が、極端に不安定な状態になるとはまったく考えておらず、「政治が市民の心理とかけ離れ過ぎている」、と全身の力が抜けるような落胆に襲われています(写真はパンデミック以来、ライトアップされている首相官邸、キージ宮)。
2021年に向かって、なおいっそう閉じられたローマの街を照らし、瞬くクリスマスの光、ベツレヘムの星
何が起こったのか、まったく理解できないうちに、未知のウイルスの感染拡大からはじまった2020年も、いよいよ終わりに近づきました。だんだんに景色が色づく春、長期のロックダウンを経たにも関わらず、再び厳しいロックダウンでクリスマス・シーズンを迎えたローマの今年は、身体的な移動はきわめて狭い範囲に限られましたが、今まで体験したことのない動揺や現実離れした恐怖、悲しみ、安堵、共感、再び不安、と目まぐるしく気持ちが動いた1年でした。なにより、予測できないあらゆるすべてのことが、世界規模で起こりうる可能性は、実は100%なのだ、という、あたりまえのようでも、驚くべき現実を実感することにもなりました。 Continue reading
Covid-19第2波のまっただ中、いまだかつてないクリスマスシーズンを迎えて、ストイックに閉じられたイタリア
どんとこい、と気合が入った第1波の頃とは、ずいぶん様子が変わったかもしれません。Covid-19第2波のまっただ中にある現在のイタリアでは、あの頃全国のベランダに響き渡った、共に励まし合う歌声や、窓辺に飾られた医療関係者への感謝の言葉を、ほとんど見聞きすることがなくなりました。未知のウイルスは、以前と変わらず一瞬たりとも気の抜けない恐ろしい脅威でありながら、もはやわれわれの日常の一部になったようです。イタリアでSars-CoV-2の存在が、オフィシャルに顕在化して約10ヶ月。ある程度の封じ込めに成功したはずのイタリアに、これほど過酷な状況が再び訪れるとは、正直なところ、誰も思っていなかったと思います(写真は人波の途絶えた街に、我関せず。悠々と聳えるコロッセオ)。 Continue reading
4世紀の忘却から甦り、瞬く間に称賛の的となった、女流画家アルテミジア・ジェンティレスキ
いまや世界中で人気の、バロック初期の女流画家をテーマにした『アルテミジア・ジェンティレスキー戦士の画家』日本語版が、Amazonプライムで11月25日から配信されます。その作品を制作したのが知人だったので、事前に見せていただいたのですが、知らなかったエピソードが数多く盛り込まれた、とても興味深い内容のドキュメンタリーでした。尊厳を深く傷つけられ、人々の好奇の目に晒されるスキャンダルを毅然と乗り越え、画家として生き抜いたアルテミジアは、カラヴァッジョ派の中でもひときわダイナミックな、珠玉の作品を多く残している。はるかな時を遡り、ローマのバロック初期を放浪します(タイトル写真はArtemisia Gentileschi, Autoritratto come allegoria della pitturaー絵画の寓意としての自画像, 1638-1639, olio su tela, 98,6×75,2 cm, Kensington Palace, Londra)。 Continue reading
活気が戻ったイタリアの街角で、Covid-19と共存しながら想うアンティファシズムのこと
どこか掴みどころがない未来にもやもやしながらも、ローマの街は少しづつ日常を取り戻しつつあります。4ヶ月前に突如として感染が拡大し、イタリア全土を震撼させたSars-CoV-2でしたが、その間戦場となった医療機関での経験やデータから研究が進み、今後再び感染が拡大しそうになったとしても、ある程度は効果が期待できる対策、治療法が、すでに学習されたという印象です。そこで街角には多少の楽観ムードが流れ、活気が戻ってきた、という感じでしょうか。また、米国発の#BlackLivesMatterを先駆けとして、今までシンと静まり返っていた広場にも、見慣れた政治集会が戻ってきました。 Continue reading
イタリアの春、Covid-19と共存する未知の世界へ : Build Back Better
ISS(国家高等衛生機関)と国家市民保護局から、毎日発表されるイタリア国内におけるCovid-19の感染状況データは、着実に好転していますが、予想していたよりもはるかにゆっくりとしたスピードです。犠牲者の方の数もなかなかゼロには近づきません。そこで予告されていた5月4日からのロックダウンの解除は一斉に!というわけではなく、経済活動の再開もしばらくの間は慎重を期され、業種、職種によって段階的に解除されます。眩いばかりの陽光が窓からなだれこむ、いますぐにでも出かけたくなる季節、われわれは人生はじまって以来の「ウイルスとの共存」という未知の春を迎えました。 Continue reading
夜明けを待ちわびるイタリアの暗く、長い新型コロナの夜:We Shall Overcome
もちろん爆弾が飛び交っているわけではありませんが、見えない敵との厳しい闘いは、いまだ続いています。国家市民保護局とISS(国家高等衛生機関)により、毎日18時のプレスで発表されるその日のCovid-19の総感染者数の増加率が5%を切り、安定はしはじめても、なかなか好転しないデータに直面するたび、重く、張りつめた気持ちになる。暗いトンネルの中、長い道のりが目の前の闇に続き、遥か向こうに、うすぼんやりとした淡い光が見えては消え、消えては見える、希望と失望の繰り返しです。それでもここ数日は、ようやく感染状況が減少トレンドに入り、少なくともどこへ向かえば良いのか、出口の方向が見えてきました。
2020.2.20 前触れなく訪れた新型コロナウイルスの拡大、ファイト、イタリア!
その日が来ることを、誰も予期していなかったと思います。もちろん毎日、世界中の新型コロナウイルス関連のニュースは流れていましたが、イタリアは安全圏にある、と信じて疑わなかった。前の日まで、司法改正法案を巡って連立政府内に対立が起こり、もはや日常と化した『政権崩壊危機』が連日報道されていたところでした。それが2月21日の朝突然、「昨夜、ロンバルディア州のコドーニョ市で、38歳の新型肺炎患者が見つかったというニュースが駆け巡ったかと思うと、その後とどまることなく感染者が増え続け、たった2週間で、イタリアの日常はガラリと変わってしまいました(写真は再開したミラノ、ドゥオモ大聖堂)。 Continue reading
『イワシ運動』効果が炸裂、投票率が倍になった州知事選とそれからのイタリア
1月26日に開催されたエミリア・ロマーニャ州知事選挙は、67.67%(!)という、まるで国政選挙を思わせる投票率となり、2014年に行われた前回の州選挙と比較して、約2倍の数字を記録しました。極右政党『同盟』マテオ・サルヴィーニが「この選挙こそ、『民主党ーPD』『5つ星運動』連立政府への国民の信任を試す試金石、いわば『国民投票』だ」、と大上段に挑戦状を突きつけ、これでもか、これでもか、とキャンペーンを張ったエミリア・ロマーニャ州知事選は、しかしあっさり『民主党』左派陣営に持っていかれることになった。ボローニャ、マッジョーレ広場から突如としてはじまり、今やイタリア全土を席巻する市民ムーブメント『6000サルディーネ=イワシ運動』が、この選挙に大きく貢献したことは言うまでもありません。 Continue reading