イタリア映画、文学、そして音楽に、並々ならぬ造詣を持つ二宮大輔氏の寄稿です。2016年には、キネマ旬報で「パオロ・ソレンティーノが仕掛けた迷路」と題して「現代のフェリーニ」と称されるソレンティーノの世界を評論。また、文学座、高橋正徳氏演出によるお芝居では、現代イタリア演劇の原点と言われるエドゥアルド・デ・フィリッポの、難解なナポリ方言が多用された戯曲『フェルメーナ・マルトゥラーノ』を翻訳するなど、まさに八面六臂の大活躍でした。その二宮氏が豊かな感性と鋭い視点で現代のイタリア映画の話題作をレビューします(写真は『透明の少年』より)。 Continue reading
Category Archives: Cinema
音楽シーンを劇的に変えた、ローマ、ピニェートの音楽革命: ファンフッラ
前々から、インタビューしたいと思っていたMan(マヌー)にようやくじっくりと話を聞くチャンスに恵まれました。十数年前までは、散歩するのがためらわれるほど、殺伐と荒れた空気が流れる、うらびれた地区だったピニェートが、あれよあれよという間にローマの若者たちの間で「Fico(cool)!」と話題になる、音楽に溢れた街角になりました。しかもピニェートのその動きからローマのインディ・シーンは激変。マヌーはその変貌の背後に、ひそやかに、しかしブリリアントに存在する人物です。 Continue reading
ベルリン映画祭金熊賞「映画」海は燃えている: Fuocoammare
Sacro GRA 『ローマ環状線、めぐりゆく人生』で、2013年のヴェネチア映画祭、金獅子賞を獲得したジャンフランコ・ロージ監督が、2016年2月、『Fuocoammare : Fire at sea (海は燃えている)』でベルリン映画祭の金熊賞をも獲得。アフリカ、中東からの難民の人々の欧州への架け橋のひとつとなっている地中海の孤島、ランペドゥーサ島の「現実」を追ったこのドキュメンタリーは、並外れて胸に響く作品と絶賛され、ローマでも多くの感嘆の声が上がっています。 Continue reading
『鉛の時代』と「死刑台のメロディ」:米国最悪のサッコとヴァンゼッティ冤罪事件
ご承知の通り、イタリアも日本同様、第二次世界大戦の敗戦国です。しかし同じ敗戦国であっても、イタリアは世界でも10本の指に入る武器産出国であったり、NATOの一員であったりと諸々の状況は大きく異なります。もちろんイタリアは欧州連合を形成する1国ですから、地政学的な相違が大きいのですが、米伊の関係に関しては、1800年代後半からのイタリア移民に端を発する両国の愛憎が影響しているように思います。(タイトルの絵は Ben Shahn : Vanzetti e Sacco) Continue reading
映画館の「占拠」から生まれた、ローマの夏 、サン・コシマート広場の夜毎のチネマ
ローマでは毎年夏になると、あちらこちらの広場や公園でコンサートやチネマ・アペルト(オープンチネマ)が開かれ、そのイベントの数々は夏の風物詩でもあります。しかし去年あたりからローマ市財政危機のせいか、夏のイベントもぐんと縮小。残念、と思っていたところ、トラステヴェレの広場で、素敵なチネマのフェスティバルが開催されました。 Continue reading
Sacro Gra Ⅲ 批評: rif.
Sacro Gra Ⅱ 映画ができるまで
「Sacro Gra」には、内部に巣くい、何十年もかけて育った棕櫚の樹を、一気に食い尽くしてしまう昆虫、Punteruolo Rosso。その虫から棕櫚を救うために研究を続ける、アルケミストのような市井の学者が、虫を手に、淡々とひとりで語るシーンがあります。 Continue reading
Sacro Gra Ⅰ 聖なるローマ環状線
2013年のヴェネチア、ビエンナーレで金獅子賞を獲得した、「Sacro Gra」。詩的で、映像コンセプトも登場人物も練りに練られたジャンフランコ・ロージ監督のドキュメンタリーが、ベルナルド・ベルトルッチを審査委員長とした、第70回ビエンナーレでLione d’oroを穫ったことは、感慨深くもありました。 Continue reading