2020.2.20 前触れなく訪れた新型コロナウイルスの拡大、ファイト、イタリア!

Eccetera Società

北部イタリア。次第に深まる国内、国外からの孤立

さて、ラ・レプッブリカ紙によると、この急激な感染の拡大を受けてイタリアを拒絶、あるいは渡航条件をつけている国は以下のようになっています(2月28日)

イスラエル、ヨルダン、サウジアラビア、バーレーン、エル・サルバドール、モーリシャス、トゥルクメニスタン、イラク、カポ・ヴェルデ、クウェート、マダガスカル、セーシェル:外国人を含め、ここ2週間にイタリアに滞在したイタリア人の入国を拒否。うち、モーリシャスはロンバルシア州、ヴェネト州、エミリア・ロマーニャ州、ピエモンテ州からの入国を禁止。サウジアラビアは、イタリアからメッカ巡礼に訪れたイスラム教徒の入国を拒否。イスラエルはエル・アル航空のイタリア便を全てキャンセルとしています。

中国、台湾、インド、エリトレア、チャド、タジキスタン、カザキスタン、キルギスタン、グレナダ、セントルシア:イタリアから入国した旅行者は14日間の隔離、キルギスではイタリアからの入国者は軍の施設での隔離を実施。中国では、イタリア人のジャーナリストが突然電話を受け、一歩も外に出られないという自主隔離(!)を余儀なくされているそうです (レスプレッソ紙)。さらにはベルガモから中国に戻った中国人の若者たちが陽性となり、現在上海の病院に入院中しているそうです。3月3日にはインドがイタリアからの旅行者を全面ストップにしています。

ルーマニア:感染地域となっているロンバルディア州、ヴェネト州からの入国者には14日間の隔離。その他の地域からの入国者は自主隔離を要請。

マルタ、アイスランド:ロンバルディア州、ヴェネト州、ピエモンテ州、エミリア・ロマーニャ州からの入国者に自主隔離を要請。

ブラジル、チリ、コロンビア、キューバ、エクアドル、ギリシャ、キプロス、レバノン、クロチア、リトアニア:イタリアからの入国者は、到着後、検査が行われます。リトアニアでは、上記北部4州に限定して検査、クロアチア、キューバ、レバノンでは、イタリアからの入国者で熱があるものは14日医療施設に入院観察。

ブルガリア、モンテネグロ、マケドニア、レットニア、ニカラグア、アルゼンチン:入国時、質問表が配布され、ブルガリア、モンテネグロでは入国者の医師の診断を義務化。

ドイツ、エストニア、ポーランド:北部イタリアの感染地域から入国した者は、地方当局に申請し、自宅待機で自己観察を要請。

エジプト、アルジェリア、ハンガリー、チェコ、ウクライナ、モルダビア、ジョージア、南アフリカ:発熱がある者の入国を制限。

英国、アイルランド、アイルランド:北部イタリアから入国した者のみ、14日間の自主隔離。また、軽症であっても症状がある者は届出の義務を負う。無症状であっても感染地からの入国は隔離。3月1日、英国ブリティッシュ・エアーミラノ発着便休止しました。

サモア:イタリアからの入国は3日以内に作成された医者の診断書を提示の義務を課しました。

米国:イタリアを渡航注意レベルの2に引き上げ。渡航は可能だが、予防措置が必要と警告。しかし3月1日、トランプ大統領は北部イタリアへの渡航ストップを発表し、アメリカンエアラインがそのトランプ発言の直後、NYーミラノを休止したため、空港に混乱が起こりました。同様にデルタ航空もミラノ発着便を休止。

フランス、スペイン、ギリシャ、トルコ、アイルランド、ロシア、クロアチア:イタリア、あるいは北イタリアにヴァカンスも含め、渡航することを市民に推奨しないとしています。旅行の延期を奨める旨をフランスの交通省秘書官が明言。北部イタリアの航空便の休止も視野だそうです。

また、外国だけでなく、イタリア国内のイスキア島や、バジリカータ州などの南部の地方が、北部からの旅行者を拒否、あるいは14日間隔離に言及したこともありました。実際今のところ、パレルモやプーリア、そしてローマ、ナポリで発生した感染者はすべて、北部イタリアからの旅行者か、濃厚接触者で、感染の足取りはとりあえず(可視化できる部分では)明確にされています。

そもそもイタリアは北部と南部の間に貧富の格差が著しく、日頃の対立もありますから、今後、その分裂が強調されなければいいが、と案じているところです。しかし誇り高い北部イタリアの人々は、まさか自分たちが、世界やイタリア南部で、訪問を拒まれる存在になることなど、想像だにしなかったと思います。

そういえば、世界にウイルスが蔓延しはじめると同時に、「春節から戻ってきた中国人の子供たちは学校に来させない」「全員検査!」と主張したのはヴェネト州でした。今回の大がかりなPCR検査の結果、中国の人々は今のところ全員陰性で、今回の感染を、もはや中国の人々のせいにすることはできません。

さらにトスカーナ州の、イタリアの最も大きな中国人コミュニティでは、春節から戻ってきた人々は差別を恐れてそれぞれに自主隔離を行い、結果、たったひとりも陽性の人は存在しなかったそうです。

いつの間にか、近所に出現したグラフィティ。「無知という疫病が流行っているみたいだけど、防御しなくちゃ」#わたしはウイルスではない、と最近次第に顕著になりつつある東洋人排斥主義へのカウンター。ありがとう、ストリートアーティストたち。ちなみに左のラテンなポスターもなかなか素敵です。

1日もじっと黙ることがない『同盟』のマテオ・サルヴィーニは「だからすべての港を閉じるべきだと言ったはずだ」と、ウイルスの感染者が発覚した当初から、やや意味不明の主張を続けていましたが、「むしろイタリアの方が、アフリカ大陸から港を閉じられることになるんじゃないの?」と笑われることになりました。

そして因果応報とでもいいましょうか、現にアリタリアでやってきたイタリア人観光客をモーリシャスが入国させず、一晩で送り返すという出来事を皮切りに、イタリア人感染者が続々と見つかったアフリカ大陸の多くの国々からは入国拒否、あるいは隔離という憂き目に会うことになったわけです。

未知のウイルスは万人を萎縮させ、疑心暗鬼に陥れ、国家間、あるいは国内の信頼関係を崩壊させ、互いが互いを拒絶しあう状況を生みます。考えてみれば、分離主義、国粋主義には好都合なスピリット、とも思えますが、目に見えないこんなディクタトールに屈服すると、社会そのものが経済もろとも打撃を受け、不安定化してしまいますから、結局、何ひとついいことはありません。

さっそく市場は恐怖バイアスで、サブプライム危機以来の大幅下落となり、世界金融不安が囁かれたか、と思うと、ちょっとした好材料で再び急上昇という、異常な動きを見せています。「イタリアが欧州の火種になる」という聴き慣れたスローガンで、イタリア国債スプレッドも急上昇しました。

それでもフランスのマクロン大統領が「ヴィールスには国境がないのだから、国境を閉めても意味がない」と国境を閉じるつもりはないことを明らかにし、欧州連合も支援を表明したことは、欧州のシェンゲン条約を確認する、幾分明るいニュースではありました。

しかしながら、世界にはウイルス以外の暗雲が漂っていることを忘れてはいけません。ウイルスとの戦いだけで手一杯の欧州のすぐそばでは、シリアとトルコがいよいよ全面戦争になりそうな空気が漂い、8万とも言われるシリアからの難民の人々が欧州の国境を通過しながら足止めされています。本来なら大変なニュースになるべきところ、誰もがウイルスのことで頭がいっぱいで、注意が散漫になっています。

また、ギリシャのレスボス島では、受け入れ環境があまりに劣悪なため、難民の子供が自殺しようとまでしていると報告されました。難民の人々がウイルスに感染しないような方法で、まずはトルコと粘り強く交渉しながら、欧州が早急に受け入れ準備を整えることが急務ではないのでしょうか。

   ※ギリシャが難民の人々の亡命希望を拒絶する一方、沿岸警備隊は船に向かって発砲している。状況は崩壊し、非人間的な状況と化している。

イタリアに関しては、NGOの船に救助された276人リビアからの難民の人々がラグーサの港に到着しており(2月24日)、船内で14日間隔離、ウイルスの感染の有無をテストされたのち、ホットスポットに迎え入れられるそうです。

またメッシーナでは、NGO船で訪れた難民の人々の受け入れをいったん拒絶しましたが、同様に14日間の隔離をするという条件で入国許可を出しています。そのとき難民の人々は、「この隔離はイタリアの新型コロナヴィールスから自分たちを守るためなんだろうな」と、考えたそうです。

なお、ミラノのカリタスは、この緊急事、通常の食堂は閉鎖せざるをえませんでしたが、生活に行き詰まった貧しい人々のために、袋詰めにした食事を用意して配布しています。

「 ボランティアの人々には、司教がおっしゃるように、行き過ぎた警告主義に陥ることなく、逃げ出そうとせず、慎重に、どこまでやれるか限界を知る感覚を養うよう、すべての市民に伝えることを望みます。この緊急事態の最中、ボランティアやコミュニティを失うことで、さらに窮地に陥る最も弱い立場にいる人々が致命的な打撃を受けることを避けなければなりません」カリタスの局長は、そう発言しました(アヴェニーレ紙)。

『サルディーネ=イワシ運動』の青年たちは、といえばナポリ、スカンピアでのコングレスは延期せざるを得なくなったとはいえ、南イタリアを中心に、集会ではない方法で、今後の計画をアクティブに進めていることは、頼もしいことです。

▶︎イタリアの公共衛生に関する6ヶ月の緊急事態宣言と、具体的なその後の対応

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