議論がはじまった IUS CULTURAE(イウス・クルトゥーレ)
ところで、イタリアに住む外国人にとって明るいニュースといえば、かつて民主党政権時代に立ち消えとなっていた、イタリアで生まれた外国人の子供たちに市民権を授与するIus soli(イウス・ソーリ)が名前を変えたIus Culturae(イウス・クルトゥーレ)として議論が活発になってきたことでしょうか。また、人生最期を自らが決断する権利、つまり『安楽死』についての法律の制定に関しても議論が行われるようになってきました。
これらは『5つ星』と『同盟』の契約政府では考えられなかった議論でもあり、極右政党の顔色を伺うことなく、議論が堂々とはじまったことで、イタリアを巡る空気が変わった、と改めて実感した出来事でした。
ただ、『安楽死』を巡る法律については、わたし自身、内容に深い理解を持つ必要があり、今後何らかの動きがあり次第、別項を立てて考察したいと思っているため、ここでは触れずにおきます。
さて、外国人の子供たちの市民権に関する現行の法律は1992年に定められたもので、イタリアで暮らす外国人の子供たちの、いずれか片方の親がイタリア市民である子供のみに市民権が授与され、外国人同士の両親から生まれた子供は、たとえイタリア国内で出産されようとも、18歳になるまでイタリアの市民権を選べず、欧州の他国と比較しても限定的な法律しかありませんでした。
しかし近年になり、イタリアに移民した両親から生まれた子供たちの数は明らかに増大。街を歩くと、ローマの人より達者なローマ弁を操る中国やフィリピン、中東やアフリカの子供たちが群れ遊んでいる、というのが現状です。
このように、外国人の子供たちがイタリアの学校で成長し、社会に溶け込んでいるにも関わらず、常に外国人である両親の滞在許可証に不自然に条件付けられることで、教育や福祉の面で不安定な状況に陥るケースもあります。
この状況を打破すべく、現在、上院で議論されているのが、イタリアで出生した、あるいは12歳以前にイタリアに移民し、少なくとも5年間イタリアの学校に通った子供たち、また、12歳から18歳までの外国で生まれた子供たちでも、6年間イタリアの学校に通えば、市民権が授与されるというものです。
この法律が実現すれば、彼らはやがて選挙権を持つわけですから、イタリアの左派、また『5つ星』にとっても手堅い票田になる可能性があります。ぜひ積極的に議論を進めていただきたい、と願っています。
このイウス・クルトゥーレは、「難民の人々を欧州の国々で分担して責任を持って受け入れる『マルタ合意』だけでは充分ではない。国の法律によって(市民権、国籍が)認められなければ、完全にイタリアの社会に馴染んでいるとは言えない」とカリタスの責任者である枢機卿も述べ、ヴァチカンも強く後押ししている法律でもあります。
こうしてイタリアは次第に開かれはじめています。このまま大きな変化が起こらなければいいが、と切に願っているところです。