ロシア、米国、中国、欧州連合:列強入り乱れるイタリアと『世界家族会議』

Cultura Cultura popolare Deep Roma Società

ヴェローナの第13回『世界家族会議』

そういうわけで、ロミオとジュリエットの悲恋の舞台として有名なヴェローナで、『世界家族会議』が遂に開催され、会期中のヴェローナ市街に、労働組合、アムネスティ・インターナショナル、ANPI、ARCI、そしてNon Una di Menoなどのトランスフェミニストグループ、政治家が集結。主催者発表10万人15万人説も!)を集める大規模な抗議集会を開きました。その大集会に対抗して、主催者側、及び極右グループもデモを開く事態(1万人が集まっています)となり、毎年穏やかに開催されるらしい『世界家族会議』を巡り、このような賑やかな騒乱になったことは、今までに例がないのではないか。世界から『会議』に訪れた、シンプルに真摯な宗教者たち、伝統家族主義者たちは、イタリアのパワフルな抗議行動に驚いたのではないか、と思います。

※ラ・レプッブリカ紙がライブ配信した、3時間の長丁場のビデオ。ヴェローナでもローマでもイタリア全国で相変わらずパワフルなフェミ・デモ参加者はオールジェンダーで年齢問わず、主催者発表10万人(15万人?)が集まっての大抗議集会でした。ヴェローナ駅では「愛が家族を作るんだ」という粋なアナウンスもされたのだそうです。米国のヒューマンライト・キャンペーンは「米国で最も影響力のある、LGBTを排斥、憎悪を輸出するオーガニゼーション」と『世界家族会議』を定義しています。

さて、これまでのイタリアでは『同盟』と『世界家族会議』、そしてロシアの関係が公に語られることもなかったのですが、オフショアを通じて『同盟』や各宗教右派団体にループルが降り注いでいるらしい事実、そしてその詳細や証拠をレスプレッソ紙が報じて以来、イタリアとロシアの関係も、スティーブ・バノンとの関係も、もはや公然の事実としてオープンに語られるようになっています。また、『会議』前の3月24日号のレスプレッソ紙の特集は、『リベラルを潰せ』のテーゼを裏づけながら、イタリアの参加者を中心に、中核となる人物、国家間の相関関係と『会議』を構成する世界各国の宗教右派団体に流れるルーブルの動きを再追跡したものでした。

レスプレッソ紙によると、『世界家族会議』がアレクセイ・コモフなど、いわゆるロシアの億万長者ビジネスマンが参加する経済・政治ロビーに変遷したのは、プーチン大統領が、ロシア正教を核にした保守反動へと舵を切った2013年の翌年、2014年からだそうで、今回のヴェローナ大会には、イタリア政府から『同盟』の大臣、サルヴィーニ、フォンターナ、ブッセッティと、3人もスピーカーとして出席している。当初はイタリア政府が「協賛」するという話も持ち上がっていましたが、さすがに「非常識!」という批判の高まりを受け、直前に取り下げられました。

ちなみにウルトラカトリック団体『プロライフ』や、現在ミラノ検察がお金の出入りを巡って捜査中の『ノヴァエ・テラエ(前述の『ピロン法案』のデザインの核であるシモーネ・ピロンはこの団体の元幹部。レスプレッソ紙の報道を受けて、即刻脱退)』、そのほか諸々の原理主義団体と、先ごろファシズム生誕100周年を祝った極右グループ『フォルツァ・ヌオヴァ』や、ローマの『カーサ・パウンド』など(最近続々と、サルヴィーニのシンパである若い世代による新しい極右グループがイタリア各地に出現)が緊密な絆を持っていることは、周知の事実です。

また、レスプレッソ紙によると、ロシアとアゼルバイジャンのオフショア口座から、英国、デンマークをはじめ、ドイツ、英国に、アノニマス・ポイントを経由して、巨額の寄付(2012-2014年の間に35億ユーロ)が送金されているそうですが、受け取り口座のほとんどが未知の名義となっている。この期間、239万ユーロが『ノヴァエ・テラエ』の幹部であるミラノの政治家の口座にも振込みが確認され、現在、収賄で裁判となっています。

今回のヴェローナ大会には、ローマでもショッキングな中絶反対のポスターでキャンペーンを繰り広げたスペインの『シチズン・ゴー』、『世界家族会議』の創立者のひとりであるアラン・カールソンが設立した、『宗教と社会のためのハワード・センター』のブライアン・ブラウン、メキシコの金満家から巨万の寄付があるウルトラカトリックの『インクイェンド・メキシコ』など、世界70カ国のネットワークから多くの団体が参加。カールソンもメインスピーカーとして登壇しました。会期中、「みんな、あと、しばらくの我慢だ。1週間もすれば、きっと忘れてしまえる」という記事が新聞を飾るほど、イタリア中に騒然とした空気が流れました。したがってプロパガンダとしては大成功を収め、市民の分断は、さらに大きく広がった、ということです。

そういうわけで、3月下旬は、中国、米国(右派)、ロシアがイタリアを舞台に入り乱れ、各国の力関係が混乱。相変わらず一筋縄では未来が予測できない状況です。

ただひとつ思うのは、リベラル文化に愛想を尽かして、伝統主義だの保守主義保護主義だのがイタリアの政治にまで台頭してきたにも関わらず、世界経済、つまり市場、金融市場は相変わらずモラルなく、国境なきグローバリズムが蔓延し、オフショアに富が集まり、「精神論、イデオロギーはどうでもいい」と言わんばかりにアナーキーでリベラルな資本主義を謳歌しているわけですから、そんな状況で、女性が選ぶ権利だの、LGBTの人々の権利だのが剥奪されそうになるなんて、たまったもんじゃありません。

さらにイタリアでは、『同盟』が推進していた「強盗など、不法に自宅の敷地内に侵入した者を射殺(!)しても罪にはならない」という、背後に武器産業が控えていそうな正当防衛法が可決したところです。

RSSの登録はこちらから