ナチ・ファシストからイタリアを解放、戦後の民主主義を担ったパルチザンたち:A.N.P.I.と現在

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●現在のイタリアで広がるアンチファシズムの動き

確かに、今年はA.N.P.I.への加入者が激増しているし、A.N.P.I.の支部が続々と増えている。特に郊外に広がっているのだけれど、郊外に支部を持つことは、なにより大切なことでもあるんだ。というのも、ほとんどの左派の政党、『民主党』ですら郊外に支部を持たず、そんな場所に限って、ファシストたちが狙いを定めてくるからね。その郊外にA.N.P.I.は再び戻ろうとしているんだ。なぜ「再び」か、というと、以前多くのパルチザンたちが存命していた時代は、郊外を含め、街じゅうにくまなくA.N.P.I.の支部があったんだが、彼らが年をとるにしたがって、皆がこの「記憶と歴史の家」に集まるようになってしまってね。

そこでわれわれは、A.N.P.I.を以前のように拡張することが重要だと考えた。現在は50以上の支部がローマ市内(comune)にあり、県内(provincia)には約60の支部、それが日に日に増加し続けて、今年10以上の支部を増設、今月だけで2つ開設したんだよ。もちろん来月も増設する計画で、この動きには、実に勇気付けられているんだ。まさに一致団結したアンチファシストの連帯だ。事実、非常に深刻な現状が、人々のレジスタンス魂に火を点けた、と言っていいと思うよ。市民たちはA.N.P.I.を、再来したファシズムの兆しから身を守る防波堤、フロンティアとも考えている。この先、さらに確固とした、強力なムーブメントを起こすために、彼らとともに一丸となって前進して行くしかないね。現在広まりつつある、暴力を伴うあらゆるファシズム、セクシズム、レイシズムと闘うためには、連帯しての政治力が必要だからね。

デモの先頭に立つA.N.P,I,の人々

●A.N.P.Iのスピリットとファシズムのコンセプト、そして既存の政党との関わり

1944年の創立以来、われわれのスピリットはまったく変わらない。アンチファシストたちの一致団結した連帯。そしてレジスタンスの義務闘争の誓い。それがA.N.P.I.の揺るがない信念だ。

コンセプトとして定義するなら、ファシズムというものは、どこにでも存在するもの。国粋主義に毒された議会と、大資本による経済力を味方につけた暴力的な専制主義であり、合意を得た大衆に支えられる政体だ。そして大衆の合意を得ながら、国民に奉仕することなく、反対を唱える者、異種の者は容赦なく消す。ファシズムとは、そういうものだよ。

だから、われわれは現在のイタリアの状況が、経済権力と結びつかないように注意を払わなければ、非常に危険な方向へ向かう、と考えているんだ。そしてファシズムが推進する差別主義、女性蔑視、若者たちへのおざなりな政策に常に注意を払っている。また、労働者たちが権利を主張するためなら、いつでも抗議行動が可能であり、労働闘争を起こせる、つまり合法的に政治的な葛藤が許される社会であるかどうかを見極めることも大切だ。もし闘争ができない社会であるならば、それは民主主義ではないよ。もし、われわれすべてが均一に、同じ意見であれば、それはなにより心配すべき現象だ。

A.N.P.I.はそもそも、すべての政党、あらゆる労働組合からは、完全に独立した存在なんだ。しかしわれわれは、同時にすべてのアンチファシストの政党、労働組合の側に寄り添ってもいる。A.N.P.I.はあくまでも「アウトノミー(自治)」で、たとえばアンチファシストを標榜しているはずの政党が間違った行動をした場合は、断固として批判する。最近では、『民主党』政権が憲法改変を試み、国民投票を行った際に、われわれはそれを「誤り」だと判断したんだ。というのも、たったひとりコマンド権限を与えるようなシステムの提案であり、大変な危険を孕んでいる、と判断したからだが、その憲法改変には「反対キャンペーン」を繰り広げ、結果、勝利を収めることができた。PDとは共にイベントを開くこともあるけれど、A.N.P.I.は、どの政党にも、労働組合にも属すこともなければ、命令されることもない。「誤り」だと判断すれば、いつでも批判する準備はできているんだ。

●常に平和主義を貫くA.N.P.I.

先程言ったように、今年メンバーは大幅に増えているんだが、まだ集計を終えていない。2016年の時点ではを全国で約13万人。ローマは2000から2500人ほどのメンバーが存在するが、今年の集計を終えれば、その数字は大幅に変わると思うよ。A.N.P.I.は北イタリアにメンバーが断然多く、1万人もいるんだが、それはレジスタンスがローマよりも長かったせいでもある。ローマのレジスタンスは9ヶ月だったが、ミラノは21ヶ月も続いたんだからね。北イタリアのレジスタンスに対する記憶と意識は、ローマよりも強いことは確かだよ。また南イタリアには、以前ほとんどメンバーはいなかったんだが、最近、パレルモ、ナポリなどの各地で、数百人のメンバーが加入しているんだ。

ところで、アンチファシストが多い北イタリアは、ファシストも多いんだが、今のところA.N.P.I.を攻撃してくることはないようだ。もちろん批判や侮辱はあるけれど、われわれがあまり気にしていない。政治的な闘争はあっても、彼らと実際に闘うことは、今のところ、まずありえないと思うよ。確かにファシストたちは、自分たちの暴力を正当化するために、アンチファシストたちが動くのを待っているが、われわれはもはや暴力的な闘争は間違いだと思っているんだ。闘いは、文化、政治、そして美意識を核にすべきなんだ。国を守るためには文化や美意識が何より重要で、むしろ文化こそがアンチファシストだとA.N.P.I.は考えている。

確かに戦争中は、パルチザンたちが武装して闘ったわけだが、それはナチスという残虐極まりない侵略者、そしてファシストたちを前に、どうしてもそうすることが必要だったからだ。そうでなければ、われわれは常に平和主義を貫くよ。第一パルチザンたちも、平和と自由を勝ち獲るために武装闘争をしたんだから。

しかしまた、われわれが現代の世界平和について、とても心配していることは事実だよ。というのも、国際社会の権力の間に、重大な緊張が漂っているように思うからね。もし万が一、戦争が起こるとすれば、まず最初の犠牲は『真実』と『民主主義』、そして『自由な議論』となるはずだ。戦争プロパガンダがはじまれば、真実は死に、自由もまた消失する。

戦争の空気をまったく感じない、とは、残念ながら断言できないね。フランチェスコ教皇が「われわれはすでに第三次世界大戦に突入し、攻撃ははじまっている」と発言するぐらいだ。すべての大陸に葛藤が見られ、ここ欧州でも葛藤がはじまりつつある。バルカン半島で戦争が起こり、ウクライナでは緊張が高まり、状況は予断を許さない。その動きに対抗できる唯一のレジスタンスが、政治力と文化を武器にした市民の一致団結した連帯なんだ。市民の答えとしての『連帯』が、ファシズムに対する闘争であり、個々の市民の多様性を保ちながら「アンチファシスト」として、それぞれが一丸となって共に闘うことが重要なんだよ。

さらに『教育』は、極めて重要な基本でもあるね。A.N.P.I.は、国の大学リサーチ機構省と古い合意があって、小学校、中学校、高校と各学校に赴き、「ファシズムとアンチファシズムに関する歴史」授業を継続。イタリア全国の何百人、何千人の子供たちに真実を伝え、話しあうことを続けてきた。これはパブリックには見えることのない地道な活動だが、A.N.P.I.における重要な活動のひとつだよ。

そして、今やらなければならないことは、ファシストたちの暴力的なプロパガンダを、政治的に解体する動きを作らなければならないことだ。まず、外国人たちこそ、イタリアを豊かにするのだということを、人々に説明しなければならない。人間の流れを止めることはできないじゃないか。イタリア人の若者たちだって、次々に外国へと移住して、イタリアには戻りたくない、と言っているぐらいだし。そして平和、労働の権利、平等主義、社会正義、これらイタリア共和国の憲法に明記された価値を現実の社会に完全に実現しなければならない。もし、これらが実現できなければ、ファシズムの再来を許すことになる。社会に渦巻く怒りというのは、常に極右勢力に利用されてきたという、歴然とした事実があるんだから。

12月1日のアンチファシストデモも、大変な人出となりました。

ローマの巷には、どことなく緊張が漂い、外国人やロムの人々に対する暴力が絶えません。イタリアの社会投資研究機関(Cencis:Centro Studi Investimenti Sociali)は、「国の衰退により、未来の保証が見えない事実が心理的国粋主義の傾向を生み、南北イタリアの格差は広がり、人口が減少している。仕事を見つけるのが難しく、安定、成長が見られない。63%のイタリア人が難民の存在をネガティブに捉え、58%が仕事を盗まれると考えている。また75%が難民の存在により犯罪が増えるとも考えている。人々は政治から遠ざかり、3分の2のみが選挙で投票。欧州主義を主張しているのは若者のみ」という内容を含むレポートを発表。イタリア人がだんだんにCattivismo (意地悪で乱暴な傾向)に侵されつつあることを示唆しました。

しかし、冒頭に触れたように、ローマ市が『サルヴィーニ法案』に反対の意を表したことには、大きな希望を抱いた。ラッジ市長が表明したのは、法案は「ローマ市民に、極めてネガティブな衝撃となる」「潜在的に不法な動きに巻き込まれる人々が増加する」「不法に滞在する外国人を、不法侵入や犯罪など極端な周辺に追いやることになる」「急に答えを出すことなく、時間をかけて管理できるシステムをつくることを目指す」という、ほぼ、期待通りの宣言でした。

さらにこのインタビューをさせていただいた後、ローマのA.N.P.I.全国本部に、極右グループ「フォルツア・ヌオヴァ」の一団がやってきて、「イタリアの敵は去れ」と書いた横断幕を掲げ、ご丁寧に緑、白、赤のイタリアン・トリコロールの発煙筒を焚いたパフォーマンスを撮った写真を、Facebookに投稿するという挑発行為を行っています。ネオファシストたちのパルチザンたちへのこの侮辱に、ローマ市長、ローマ県長が「われわれはアンチファシストを支援する」と即座に声明を出したところです。また、人権の日である12月10日には、石畳に埋め込まれた、ナチスによってアウシュビッツに連行されたユダヤの人々の名を刻んだメモリアルプレートが掘り起こされ、持ち去られる、というとんでもない侮辱があり、A.N.P.I.はその夜キャンドルを灯して静かに抗議しています。

古風なファシストたちがわらわらと動きはじめた今、新世代のパルチザンによる力強いレジスタンスは、はじまったばかりです。

 

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