誕生1ヶ月で、ローマ:サン・ジョヴァンニ広場を満杯にしたイワシ運動『100000サルディーネ』

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サン・ジョヴァンニ広場で語られたこと

押し寄せる人々をかき分けて、ようやく中央付近にたどりついたサンジョバンニ広場には、通常の政治集会のような高い舞台が設えられることなく、1mほどの簡素な縁台が造られただけで、仰々しいエンターテインメントな演出要素は皆無でした。登壇者と市民の目線はほぼ直線で結ばれ、したがって人波からは登壇者はまったく見えず、10万人のエネルギーの間に声だけが響く、という具合です。

演説はA.N.P.I.(イタリア全国パルチザン協会)の会長からはじまり、「 わたしたちが護る『イタリア共和国憲法』は、夥しい流血の上に成立しているのです」とおっしゃった際は、思わず日本を思い、不覚にも涙がこぼれ落ちた。『憲法』の朗読で『主権は国民にある』というくだりでは、満場の拍手が湧き起こり、人々が歌う『ベッラ・チャオ』が広場に轟きました。

 

 

また、30年に渡り、海を渡ってランペドゥーサ島を訪れる難民の人々の健康状態を管理してきた、映画『海は燃えているーイタリア最南端の小さな島』の主人公のひとり、ピエトロ・バルトロ医師(現欧州議会議員)が、難民の人々の困難、たびたび見舞われる悲劇的な船の事故の詳細を語り、地中海を渡る難民の人々をメディアも含めてFlusso(流入)と呼ぶことを非難。「彼らはわれわれと何ら変わらない人間なのに、Flussoという言葉を使うなんて。『Rimaniamo umanoー人間のままでいよう』」と訴えた。

そしてごく最近、港を閉じたマテオ・サルヴィーニ元内務大臣が海上で足止めしたため、劣悪な環境のなか長期の航海を余儀なくされたうえ、着港と同時にドイツ人女性船長が逮捕された、難民救助NGO船『シー・ウォッチ』のイタリア代表は、もはやローマに住めないほどの嫌がらせと脅迫を受けたことを告白しました。弱い立場の人々を助けるアソシエーションを運営するトランスジェンダーの女の子も登壇し、周囲から、どれほどひどい虐めにあうかを訴えた。

こうして『6000サルディーネ』のボローニャの青年たちと参加者全員は、イタリアのアンチファの大御所A.N.P.I.やバロトロ医師、NGOと固く手を握り「2020年のパルチザン」としてオフィシャルに承認されたというわけです。

ちなみに14日、ローマのフラッシュ・モブと同日、イタリア各都市だけではなく、欧州、北米の各都市(ロンドン、パリ、ブリュッセル、バルセロナ、マドリッド、ヘルシンキ、サンフランシスコ、ニューヨークなど)25カ所で、大々的に『サルディーネ』が開かれています。

 

『6000サルディーネ』の発案者である4人のボローニャの青年たち。antimafiaduemila.comより引用。

 

さて、現代のパルチザン『サルディーネ』を代表し、マティア・サントーリがサン・ジョヴァンニ広場で話した概要は、次のようなことでした。

「僕らの背景には、プローディ(エミリア出身の『オリーブの木』時代の元首相)がいて、資金を拠出している、などと言われたけれど、僕らはみんな自分たちのお金で、無償でここにやってきた。そしてこれが僕らの広場と彼らの違いなんだ。みんなが自発的に参加したくて無償でやってくる。誰からも義務づけられることなく、僕ら自身でここに来ることを決めたんだ」

はどんどん広がっている。今からちょうど1ヶ月前、(ファッショ)ポピュリズム(『同盟』マテオ・サルヴィーニ)が、僕らのテリトリーで選挙キャンペーンを繰り広げる、というアラームが鳴ったとき、過酷な時代がやってくると思った。ここでぐっと手綱を締めるか、それともすべてを失うか、ふたつにひとつの状況だった。しかしボローニャの広場は手綱を引き締めることを選んだんだ。ここは通行禁止だと、彼らにはっきり宣言した。そのあとをたくさんの都市が続いたわけだ」

「イタリアの113の広場で、繰り広げられたフラッシュ・モブは、それぞれがクリエイティブに、民主主義的に、共和国憲法に則って、アンチファシズムを主張した。排斥主義と闘い、年齢の違いを超えて、ひとつの政治スタイルを作ったんだ。そしてなんでもありの、国粋主義者たちに、アートや人間同士のコミュニケーション、というメッセージを送った。僕らは歌い、本を交換し、市民の権利に言及し、それぞれの違いについて語りあった」

「それでもまだ分からない人々がいて、だから今後はどうするつもりなのか、何が目的なのか、とずっと質問され続けてきた。いつまでたっても同じ質問が続き、いくら説明しても理解されないまま、終わりがない。そこで僕らはついに真実を明かすことにした」

「こういうことだ。『サルディーネ』ははじめから存在しなかったんだ。存在していたのは『人間たち』だ。実のところ、すべての広場には『人間たち』以外に存在しなかった。それは政治とマーケティングの違い、まるで合意があるかのように見せかけるトリックを見破るキャパシティを持った人間たちだ。そんな新しい物語と新しい現実への一歩を踏み出す僕たちは、もちろん(ファッショ・ポピュリストたちには)邪魔な存在だから『戦争』がはじまり、彼らは『殺人者』と僕らを罵りながら、同時に『殺してやる』と脅迫し、僕らの性的な有りかたを侮辱し、次々に攻撃してきた」

「しかし、僕らの『脳』はフル回転で活動しはじめ、(ムーブメントは)予期せぬ方向へと動いていった。人々は被せられていたフィルターを外して僕らの話を聞きに来た。みなが広場で出会い、話を聞いて、そして自分がコミュニティの一部であることを知ったんだ。この瞬間が僕らの勝利だった。1ヶ月に113の広場が満員になり、僕らはもはや孤独ではなくなった

はじめから『サルディーネ』は存在しなかったんだ。存在するのは、自分のポジションを明確にする、無関心ではない『人間たち』だ。スペースを占拠し、メッセージを送る『人間たち』だ。100万の「いいね」より価値のある『脳(思考するキャパシティ)』なんだ」

「安易な思考、ポピュリスト的なスローガンで繰り広げられるキャンペーンなど、必要とはしない政治がある。そしてはっきり言っておきたいのは、僕らには、まったく政界に挑戦しようという意志などないということ。誰かの広場の政治集会を盗みたいってわけじゃないということなんだ。僕らはシンプルに、政治的な考えを分かち合おうとしているだけで、市民政治運動に発展しようとはまったく考えていない」

こう語る彼らが、ローマでオフィシャルに提案し、要求したのは ●選挙で議員に選ばれた人物が永遠の選挙キャンペーンを繰り広げないこと。●誰であろうと大臣であるなら、国家機構を通してのコミュニケーションに限定すること。つまりTV番組にばかり出演しない、あるいはSNSだけで発信しないこと。●政治家が SNSを使う場合、ファイナンス及び内容、コミュニケーションシステムの完全な透明性。●メディアはサルディーネの情報を歪めずに伝えてほしい。●政治における暴力的発言は、身体的な暴力と違いがない。●国家安全保障の見直し、の6点でした。

「イタリアの港を閉鎖し、地中海を渡る難民の人々着港させない。難民救助のNGOの船には多額の罰金を課す。すでに人道的配慮によるヴィザを取得している難民の人々からヴィザを剥奪。住居を失った人々が占拠するスペースを強制退去にして、占拠オーガナイザーには多額の罰金」など非人間的なこと極まりない『サルヴィーニ法』、国家安全保障に関しては「ただちに廃案!」という声が広場から響き渡りました。

 

※14日のサン・ジョヴァンニ広場を、BBCやAFP、そしてアルジャジーラも取材しました。

 

青年たちはすべての人々の違いは恐れるべきではなく、「豊かさ」だと強調しています。そして広場に集まり、コミュニティに参加することこそが政治だ、と断言しました。つまり『サルディーネ』は広場から巻き起こった市民による政治。声が大きくなればなるほど影響力が増すはずです。

この『100000サルディーネ』には、ローマ市長ヴェルジニア・ラッジから「なんと美しい広場」と賛辞が送られ、ローマ市ルカ・ベルガモ文化評議委員も一市民として参加しています。もちろん、『イタリア民主党ーPD』書記長ニコラ・ジンガレッティ、『5つ星運動』下院議長ロベルト・フィーコも歓迎し、政界はもちろん、各界から賛同を得ることになりました。

さらに「おお!」と感嘆したのは15日、イタリア全国の『サルディーネ』のイベント企画者、160人全員が集まっての初の『全国サルディーネ・コングレス』が開かれたのが、今年の5月、窮地に陥った際、ヴァチカンが手を差し伸べた占拠スペース、あのSpin Time Labsだったことです。しばらくSpin Timeには立ち寄っていなかったのですが、相変わらず充実した体制をとっているのだ、と安心しました。

Spin Timeのコングレスで確認されたのは、今後も広場でのフラッシュ・モブを継続すること。さらに力を入れるのは、いまだ『サルディーネ』が浸透していない全国の各都市の郊外や地方での活動で、目標はまず、人々の25%の合意を得ることだそうです。また、基本的には、今後左派の政党、政治家たちと会話をする予定ですが、自分たちが実質的な政治に携わることはありえず、どの政党と(エミリア・ロマーニャはPD候補と決まったようです)どのように話し合うか、いつ話し合うかも未定だと言います。そして、決定せず、命令せず、人々を巻き込んでいく、という方針で、来年から活動をさらに活発化させるそうです。

そういうわけで、これから『サルディーネ』がどう発展するのか、自分もときどき参加しながら、注意深く見守ろうと思っています。これほど早く駆け上ってきたので、そのエネルギーを維持するのは大変でしょうし、数々のリスクがあるとは思いますが、若さとアイデア、その熱意で、ますます大きなムーブメントへと広がることを期待しています。

Power to the people.

われわれ普通の市民には、社会にあらゆる変化を起こす可能性、潜在的な力が眠っているのだ、とじんわり感じる週末となりました。

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