イタリア文学の珠玉作品を次々と紹介する新進翻訳家、二宮大輔氏、待望の投稿です。翻訳のみならず、イタリアのアンダーグラウンド・カルチャーのエキスパートでもある氏は、今回、イタリア各地で存在感を誇るグラフィティについての論考を送ってくださいました。タイトルの写真はナポリのストリートアーティスト、ヨーリットが描いたサン・ジェンナーロ。ナポリの主要な守護聖人であるサン・ジェンナーロが殉教した際に滴ったとされる凝固した血は、聖遺物として数百年もガラスの小瓶に保存され、現在も大聖堂に祀られています。そしてその血は、年に3回開かれる儀式で「融解」すると言われ、もし融解しなければ、ナポリに不幸が訪れると言い伝えられてもいるのです。そんな神秘的な奇跡をもたらす聖人の、いかにも古典的なイメージは、ヨーリットにより見事に再解釈され、時空、文化を超える精悍なサン・ジェンナーロとして、ナポリの中心街にシンボリックに聳えています(写真撮影:吉野桃子)。 Continue reading
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『鉛の時代』 CIAとイタリア軍部秘密諜報組織SIFARの謀略:諸刃の剣グラディオ
多くの無辜の市民の生命を奪い、若者たちの人生を狂わせた、陰謀と流血、虚栄と野望と絶望が渦巻くイタリアの『鉛の時代』。その物語を現在から俯瞰するうちに、先進国と言われる国々に住むわれわれが、かつて「終戦」を迎えた、というのは、実は幻想なのではないのだろうか、という感覚に陥ります。第2次戦争大戦ののちの冷戦下、朝鮮半島、ヴェトナムなどアジアの国々、南米各国、東欧、中東、そして「ベルリンの壁」崩壊後は中東、アフリカへと戦火の矛先は集中していく。われわれの日常からは遠くとも、爆音と燃え盛る炎は、この地球上から消えたことがありません。 Continue reading