Category Archives: Storia

ロシアより愛を込めて:イタリアン『ロシアゲート』の勃発で、いよいよホットな2019年夏

マテオ・サルヴィーニ副大臣及び内務大臣が率いる『同盟』へのロシアから政治献金を示唆する盗聴音声が、米BuzzFeed Newsで公開された瞬間は、正直、特に驚きもしませんでした。というのも何ヶ月も前からレスプレッソ誌が、『同盟』に流れるルーブルの可能性を、微に入り細に入り執拗に追っていたからです。基本、レスプレッソ紙を毎週チェックしているわたしとしては、むしろイタリアの人々がその記事にはシーンとしながら、嬉々として『同盟』に投票することのほうがミステリアスでもありました。「米国からも、欧州からも制裁を受けている、あのロシアから個別政党への献金の可能性があっても、イタリアでは『不正』ではないのかもしれない。ひょっとしたら当たり前のこと?」とまで思ったほどです。 Continue reading

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難民の人々を巡る混乱とプロパガンダ戦、2019年イタリア、そして欧州はどこへ向かうのか

緊張に満ちたイタリアの政治状況も、時間が経つにしたがって「少しは沈静化するかもしれない、いや、そうあってほしい」と淡い希望を抱いていましたが、今年5月の欧州選挙が近づくにつれ、過度にショー・アップされた『同盟』、やや控えめな『5つ星運動』によるプロパガンダの応酬で、政治はむしろ過激な混乱に傾いています。さらに、政府が醸すファッショな空気に断固対抗するアンチファシズムのムーブメントもいよいよ活発化、野党議員をはじめ、さまざまな市民運動、アソシエーション、NGOネットワークの結束が広がり、社会は大きく分断されています。『ファシスト』という、イタリアにおいては、本来デリケートなはずの言葉がメディアの見出しに踊り、たとえば、マテオ・サルヴィーニ副首相を批判する新聞記事やSNSのコメント欄は攻撃と侮辱に溢れかえっている。これはちょっと前のヒューマンなイタリアでは考えられなかった状況です。 Continue reading

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『同盟』『五つ星運動』イタリア第3共和国、忍び寄るファシズムの悪夢

こうなるかもしれない、とおぼろげには予想していましたが、イタリアは政治的にも、経済的にも、倫理的にもダイナミックな動乱期にあります。3月の総選挙以来『5つ星』、『同盟』各党首の衝撃的な発言に振り回され、向こう3年の『国家予算案』を巡って激化する対立のなか、予想もしなかった逮捕劇が起こり、メディアは名指しで糾弾され、ホッとする暇がありません。政界は敵意と強情と緊張にすっぽり包まれて、欧州から孤立しながら、見切り発車の気配も漂う。毎日がアドレナリン漬けの『挑発』の連続で、「呑気で陽気でいい加減」という、イタリアのステレオタイプはすっかり影を潜めてしまいました(タイトルの写真は、ファシズムからの解放に歓喜する、パルチザンとして闘った女性たち。Patriaindipendente.itより引用)。 Continue reading

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『鉛の時代』拳銃とパンと薔薇、’77ムーブメントと『赤い旅団』

何回かこのサイトでも書きましたが、イタリアに慣れた頃、最も非常識に思ったのは、日本では1970年まで続いた学生運動以後、すっかり廃れてしまった『占拠』という現象が、あちらこちらで日常茶飯事に起こっていたことでした。荒れ果てたまま置き去りにされた古い劇場や映画館、営業を停止したホテル、広大な工場跡や廃屋となった議員宿舎が、文化スペース住居として、ある日突然有志たちに「非合法」に、しかし堂々と『占拠』され、当然のように普通に機能しています。もちろん、「非合法」ですから強制退去の危機と常に背中合わせではありますが、退去になればまた占拠、と人々は『占拠』を諦めない。そしてこの現象のルーツは、武装学生たちが発砲しながら荒れ狂い、『市民戦争』レベルにまで発展した’77のムーブメントにありました。 Continue reading

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『鉛の時代』国家の心臓部へとターゲットを変えた『赤い旅団』と謀略のメカニズム

現在、イタリアが置かれた政治状況から、共産党の大躍進と共に生まれた70年代『鉛の時代』の騒乱を俯瞰すると、感慨深い気持ちになります。もちろん思想、インターネットを含む情報環境や時代背景などはまったく異なりますが、昔『共産党』、今『5つ星運動』と市民が一丸となり、既存の政治にNOを突きつけるという有り様は、大戦中のアンチファシスト・パルチザンを経て60~70年代に育まれ、現在に至るまでイタリア市民に根づく『反骨精神』とも言えるかもしれません。ああ言えば必ずこう言う、権力への服従にはほど遠い、この『予定不調和』こそが特筆すべきイタリアの精神性のひとつです(タイトルの写真はDiacronimotiveから引用。「子供たち、反乱を起こそうじゃないか」Milano, anno incerto tra il 1966 e il 1976 © Tano D’Amico)。

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命がけで訪れる難民の人々の目前で、すべての港を閉じたイタリアの6月

99日間の長編組閣劇を経て、ようやく『5つ星運動』と『同盟』の契約連帯によるジュゼッペ・コンテ政権が誕生。とりあえず胸をなでおろしたのも束の間のことでした。『同盟』のマテオサルヴィーニ内務大臣が就任早々、「合法でない移民、難民はすべて自国へ帰ってもらうことにする」と爆弾宣言、「選挙戦でのプロパガンダならともかく、内務大臣がそのような、非現実的な発言をすべきではない」と批判されていた矢先の6月10日、大臣は現実に難民の人々を乗せたNGOの船『アクアリアス』上陸にまさかの拒絶を行使。今後、イタリア全国の港であらゆるNGOの船が拒否されることになり、大きな衝撃が走りました。 Continue reading

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イタリア二大ポピュリズム、『五つ星運動』と『同盟』が連帯、ついに組閣?

朝と夜ではコロッと報道が変わり、昨日の出来事が昔話のように懐かしく語られる、という未知の時間が流れるウルトラカオスなイタリアに、ついに欧州連合初の『ポピュリズム政権』が樹立する可能性が高くなってきました。5月7日、イタリア共和国大統領セルジォ・マッタレッラは、どうにも収拾がつかない、この政治パニックに終止符を打つべく、「大統領の人選による組閣で、政治的中立『暫定政権』を樹立するか、その政府が信任されない場合は早期に『再選挙』を実施するか」各政党に迫った、そのギリギリの土壇場で、急遽『5つ星運動』と『同盟』が組閣交渉を開始、怒涛のように政局が動くことになりました。なお、この項を投稿した途端に事態が急変する可能性もあることを、予めお断りしておきたい、と思います(タイトル写真は、大統領府のオベリスク)。

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『鉛の時代』 イタリアの知の集積 フェルトリネッリ出版と『赤い旅団』の深い関係

2018年3月16日、戦後イタリアの民主主義の構築を根底から覆した、と言われる『アルド・モーロ元首相誘拐・殺害事件』の40年目のメモリアル・デーを迎えました。重要なポジションにいる検事、数々のジャーナリストたち、歴史家たちにより、長い時間をかけ、あらゆる側面から、この大事件の詳細、背景が調べあげられ、もはやどこから手をつけたらいいのか分からないほどの、幾万の情報が積み上げられています。(この項は、『赤い旅団』誕生の背景  からの続きです。写真はジャンジャコモ・フェルトリネッリとフィデル・カストロ。movieplay.it 、feltrinellieditore.itより引用) Continue reading

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機が熟すとき: 『鉛の時代』の幕開け、そして『赤い旅団』誕生の背景

イタリアの70年代、つまり鉛の時代へと遡るうちに底なしの闇に迷い込み、「このまま先に進むことで何かが見えて来るのだろうか」、そして「これらは果たして本当のことだろうか、もし本当なら、こんなことが許されるのか」という不信感が交互に湧き上がり、なかなか踏み込んでいけなかったのが、欧州最大の極左テログループ『赤い旅団』にまつわるエピソードでした。一方で、自分とはまったく関係なさそうな遠い次元の話に思えても、わたしたちの生活そのものが、個人、社会、世界、と多次元のレベルで構築されていて、それを認識するしないに関わらず、実はあらゆる次元同時生きている、ということを再確認した次第です(タイトルの写真はBlog di Carmelo AnastasioのAlbumより引用させていただきました)。

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イタリア中道左派政党連合、「オリーブの木」L’Ulivoとは

『毎日カオスな政治祭り』にすっかり慣れ親しんだイタリアから見ても、「ええっ」と驚く、ここしばらくの日本の政治混乱に、遠くにいながら気が気でない、なんだか落ち着かない毎日が続いていることを白状せねばなりますまい。そんななか、かつて大きな勢いを持ったイタリアの中道左派政党連合L’Ulivo「オリーブの木」の名がネットに時々現れ、もちろん提案している特定の政治家を支持しているわけではなくとも、「そうそう、そういえばあった、あった」と記憶を新たにしました。そういうわけで、いまさらではありますが、元祖「オリーブの木」、イタリアの「オリーブの木」- L’Ulivo(ルリーボ)とはどんな政党連合だったのか、その概略を軽く追ってみようと思います。 Continue reading

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