2021年に向かって、なおいっそう閉じられたローマの街を照らし、瞬くクリスマスの光、ベツレヘムの星

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スペイン広場の喧騒

ともあれ、ゴージャスに光り輝く黄金のスペラッキオを抱くヴェネツィア広場は、年末年始にかけ、さらに厳格ロックダウンとなるせいか、ウイークデーの帰宅時間はとっくに過ぎているというのに、「今のうち出かけよう」と、駆け込み外出で大渋滞でした。

さらにヴェネツィア広場からスペイン広場に向かって、イルミネーションを辿りながら歩いていくと、やがて買い物客洪水となり、この無防備な混雑ぶりには身の危険を感じて、思わず緊張したほどです。

12月23日までは、クリスマスの買い物客の分散のため、たいていのお店は9時まで開いているので、イルミネーションの見物もかねてか、中心街を訪れる人々は夕刻以降集中します。幾千万の光がきらめくクリスマス前の、このような騒がしい雑踏は、いたって見慣れた風景ですが、今年は道ゆく人々が、ひとり残らずマスクをかけていることに、時代のリアリティをひしひしと感じました。

また、毎年このシーズンに満ちる、華やかで天真爛漫なお祭り気分がまったく感じられないのは、人々の表情が、笑っているのか、焦っているのか、読めないこともありますが、例年であれば、どこの店でも大音響でかけられるクリスマス・ソングが、ほとんど聞こえてこなかったからかもしれません。

故意なのか、たまたまなのか、人々の買い物気分をダイナミックに高揚させる音楽が聞こえないと、スペイン広場界隈のようなショッピング・ゾーンのムードは、ぐんと沈みます。

 

ウイークデーでもけっこうな人出でしたが、クリスマス前の最後のウイークエンドは、大通りが一時封鎖になるほどに、人々がひしめいたそうです。なお11月からは、ウィークエンドの中心街には軍が出動しています。

 

一方、混雑を避け、パブやエノテカが並ぶ路地に入り込むと、看板を下ろさざるをえなくなった店や、午後6時を過ぎてすでに閉店した店の扉が固く閉ざされ、誰もいない暗闇をオレンジ色の街灯が煌々と照らしているだけの、うら寂しい光景が広がります。

たった1区画離れただけで、大通りのイルミネーションと人波からは想像できないほど、しんと静まり返ったこの路地は、思い起こせば去年の夏、世界中から訪れた旅行客と、若いローマの子たちで人垣ができ、通り抜けるのが難しかった通りです。

こうして街を歩きながら、「あの時も、いつもと違うクリスマスだったのだろうか」、とふと思い出したのが、1969年、12月12日のミラノで起こった『フォンターナ広場爆破事件』のことでした。

人々を恐怖に陥れ、イタリアの方向性が大きく変わった『鉛の時代』のきっかけとなった、この重大事件は、人々がクリスマスの準備やプレゼントの買い物に胸躍らす、1年で最も楽しいクリスマス・シーズンにオーガナイズされた、という経緯があります。実際、当時爆弾が仕掛けられた銀行に居合わせ亡くなった人々は、仕事を終え、クリスマスのマーケットに出かけるために出金に訪れた人々が大半だったそうです。

なお、ウイルスの渦中にありながら、今年もほとんどの主要紙が、この未解決の事件を振り返る記事を掲載していましたが、イタリアにとっては忘れられない事件であると同時に、分断が進みつつある社会に、警鐘を鳴らす意図もあったのでしょう。なかには「われわれが生きる現代は、51年前ととてもよく似た状況だ。時代を繰り返さないためには、まずこの事件を深く知り、解決すべきだ」という論調の記事もありました。

そういうわけで、今年のクリスマス休暇は、51年前とは別種の痛みでも、ウイルスがもたらす緊張と制限に縛られる日々となりました。

すでに12月3日に決定されていた、クリスマス・シーズンのロックダウンは、感染状況に好転が見られないため、12月21日にさらに強化され、いつもとはまったく違う、それぞれの家族が孤立しながらキリストの生誕を祝うクリスマス、そしてカウントダウンが行われない新年を迎えることになります。

具体的には、クリスマス期間中の12月24日から27日の4日間、12月31日から1月3日までの4日間、さらに1月5日、6日の計10日間イタリア全国レッド・ゾーン指定で、食料品店や薬局、キオスク以外のお店やレストラン、バールはクローズ(テイクアウトは可)の完全ロックダウンとなり、市内の移動も制限されます。ただし12月28日から30日、1月4日はオレンジ・ゾーン指定となり、飲食店以外のお店は開店します。

また、クリスマスや新年の会食は基本、同居する家族のみで行うことが強く推奨され、招待できるのは家族、友人に関わらず2人まで(14歳以下の未成年者、介護が必要な人は同伴が可能)と定められました。

イタリア全国の感染状況は、11月13日の新規感染者、40902人でピークアウトとはなっていますが、亡くなる方の数がなかなか減少しないうえ、新規感染者数も高止まりのまま、検査の陽性率が12%を超える日もあります。そのデータを毎日見ていると、各商店の補償さえ約束されれば、もっと厳しい長期のロックダウンでもいいのかもしれない、とも感じます。

さらに、少々心配なのは、12月24日からのロックダウン強化が発表された途端に、例のごとく「今のうち」、とイエロー・ゾーンの人々が続々と、故郷に向かって移動をはじめ、州をまたぐ移動リミットの20日まで、汽車や飛行機が満席となったことでしょうか。

「お正月を日本で過ごしたい」と願うわたしには、クリスマスに家族に会いたい、故郷に帰りたい気持ちは痛いほど理解できますが、今のような緊急な時代、1回ぐらい家族と離れて、孤独なクリスマスを過ごすことこそ、大切な人々への愛情だとも思います。

いずれにしても、今年のクリスマスは、誰もいないローマの街の暗闇を、クリスマスツリーや街のイルミネーションが瞬き照らすことになるはずです。その光景を想像すると、人の気配がまるでない廃墟に、明るく回り続けるメリーゴーランドのようで、ある種のディストピア感に哀しくもあります。しかし視点を変えるなら、沈黙という祈りに満ちた詩的な空間にもなりえそうです。

キリスト者にとってのクリスマスは本来、神の子が誕生した奇跡の聖夜ですから、こうして「静かに祝うことが、原点」と言えるのかもしれません。

 

中心街から離れた路地はひっそりと静まり返り、クリスマスのムードはどこにも見当たりません。

 

▶︎奇跡のキリスト像

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