2020.2.20 前触れなく訪れた新型コロナウイルスの拡大、ファイト、イタリア!

Eccetera Società

はじまり

そもそもイタリア政府は、それこそがウイルスの国内への侵入を阻む最良の方法だと、1月末の時点でイタリアー中国ダイレクト便を休止していました。

しかし、「ダイレクト発着便を休止したところで、トランジットでは中国からもアジアからも絶え間なく人々が出入りしているわけだから、あまり効果はないのではないか」との意見が、ずいぶん前から巷間を飛び交っており、道端での立ち話のレベルでも「観光も含め、世界経済そのものが、これほど中国に依存している以上、人の流れは止められないからね。だいたいWHOの初動が曖昧だったし、遅すぎたよね」とも言われていた。

それでも、たったの14日間(3月5日)に総数3858人(現在の感染者3296人、回復者414人)、亡くなった方148人という強烈な数字を見ることになるとは、予想もしていませんでした。ただみんな、ウイルスの存在を漠然と想像して不安に陥るだけで、「きっとすでに感染者はいるよね」と言いながらも、現実の次元ではテアトロや映画に出かけたり、友達と騒いだり、政治集会に繰り出したり、と普通の日常を送っていたわけです。

感染者急増の原点となったのは、ロンバルディア州のコドーニョ市の病院で、38歳の肺炎患者が新型コロナウイルスに感染していたことが発覚したことでした。中国へは渡航歴がないその人物は、いかにもイタリア人らしく活動的で社交的。潜伏期間にサッカーやマラソンにも参加して、濃厚接触者は医療関係者、会社関係、家族、友人だけで150人を超えていた。

感染者が発覚したその瞬間から、事態は目まぐるしいスピードで動き出し、意欲的なPCR検査が繰り返され、医療関係者、家族、友人、サッカー仲間への感染を突き止めると、その感染者の濃厚接触者への検査をさらに広げ、一気にその数が増えることになりました。

さらに同日、ヴェネト州のヴォー・エウガネオ市の病院で亡くなった高齢の方が、新型コロナウイルスに感染していたことも発覚し、そこからWHOの基準に合わせるまでの5日間は目を見張る勢いで、疑いがある人々すべてを対象にPCR検査が行われています。

結果、ロンバルディア州、ヴェネト州の11市町村にクラスターが形成されていることが確認され、発覚からたったの2日も経たず、『武漢モデル』を踏襲するドラスティックな封鎖が実現されたわけです。

イル・ファット・クォティディアーノ紙によると、コドーニョ市の病院には第1感染者以前から、通常の肺炎ではないと思われる患者が存在していたそうですが、当時の新型肺炎の診断プロトコルは「中国に滞在した過去があるか、ないか」が基準になっていたため、その項目に該当しないと検査は行われませんでした。

そもそも農業地域(3400件の大中小農業活動)であるコドーニョ市の高齢者が中国を訪問することはシチュエーション的に難しいため、医療関係者も笑いながら質問していたと言いますが、今思うなら、そのプロトコルが甘過ぎた、と言わざるをえないでしょう。

 

なんといっても、il sole 24 ore紙のサイトのマップが一番見やすいマップ。サイトに行って、どの地域で何人の感染者が出たのか、赤い円をクリックすると詳細が分かります。https://lab24.ilsole24ore.com/coronavirus/ Il sole 24ore紙より。

 

第1感染者の感染経路調査では当初、罹患の数週間前に夕食を共にしたという、中国から帰国したばかりの友人が「ゼロ感染者」として疑われています。しかし検査の結果、その人物が過去も現在も、陽性となったことは1度もないことが確認されました。残念ながら、時間が過ぎれば過ぎるほど「ゼロ感染者」の発見は困難になりますから、今後の捜査には、もはやあまり意味がないと結論づけられているようです。

また、ヴォー・エウガネオ市とコドーニョ市を行き来していた人物の陽性も判明し、その人物の日々の習慣から、たとえばバールなど、人々が集まるパブリック・スペースから感染が広がったのではないか、と考えられてもいます。

静かな小さい街で、高齢者の方々がのんびりとカード遊びをしているのを見かけると、のどかでホッとする気持ちになりますが、そのテーブルをウイルスが狙った、と考えると悲しくなります。

いずれにしても、5万人の人々が暮らす、感染クラスターが発生した地域の全面封鎖無症状でも陽性反応が出た人々、感染者濃厚接触した人々、あるいは2週間以内にその地域に立ち寄った人々は、もれなく14日間隔離というドラスティックな方法が、ウイルスの封じ込め、あるいは今後の感染の速度をできる限り遅らせるためには最も有効である、というのがイタリアのタスク・フォースの初動からの方針でした。そしてその厳格さにも関わらず、これだけ感染が広がっているのです。

前述した通り、ロンバルディア州でクラスターが発生した県(パヴィア、ローディ、クレモーナ、ミラノ)は、ずば抜けて豊かな地域です。イタリアのGDP12%欧州連合GDP2%を担う一大産業地域でもあり、63の大企業、中小企業が存在。世界に名だたるブランドを含めて、4000人以上の人々が働く多数の商業施設が存在します(ラ・レプッブリカ紙)。さらにヴェネト州を加えると、両州だけでイタリアのGDPの3分の1を担っていることにもなる。

またロンバルディア州、ヴェネト州は極右政党『同盟』地盤であり、特にロンバルディア州知事アッティリオ・フォンターナは、党首マテオ・サルヴィーニに非常に近い位置にいる人物だと言われています。

したがってサルヴィーニは、他の極右、あるいは右派政党が「緊急事につき、政府に全面的に協力する」と表明しているにも関わらず、ここ数日間の感染者数の激増で「諸外国からほぼ交流を絶たれ、イタリアが孤立してしまった状況」、「経済指標の著しい悪化、リセッションの見通し」を理由に、政府を「無能」呼ばわりしはじめました。

さらに、わざわざ大統領府を訪問し、感染地域の経済救済策を大至急構築するため、与野党合同による『大政府』を提案するとともに、ジュゼッペ・コンテ首相辞任と内閣の解散を大統領に訴えるという強硬手段にまで打って出た。

しかし案の定、識者からは「この緊急時に政争を仕かけるとは、さすがハイエナ野郎だな。嵐に遭った船では、船員たちの喧嘩はいったん休戦にして、敵も味方もまずは力を合わせて船を守り、港に着いたら再び喧嘩を再開するものだ」、と強く非難されました。

いずれにしてもサルヴィーニに賛同するものは、連立与党はもちろん、極右政党、中道右派政党、そして連立与党裏切り組のなかからはひとりも現れず、むしろ、けんもほろろに一蹴され、いつの間にか『大政府』案は凍結・隔離されることになっています(のちに一瞬浮上しましたが、再び消えていきました)。

新型コロナウイルスの感染力の尋常でない速度と生命力(ウイルスは生物?)から考えて、何はともあれ時間が勝負。まずはウイルスを封じ込めたあと(可能なのかどうかは定かではありませんが)、ゆっくり政争に邁進していただきたい、と思う所存です。

▶︎未知のウイルスという、自然災害

RSSの登録はこちらから