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ローマ:ウクライナ危機の平和解決を主張するのは、現実を見ない夢想家の独善なのか

Deep Roma Eccetera Storia

産業としての武器

ロシアのウクライナ侵攻を受け、「エポックメイキングな改革」を謳い、軍事費をGDPの2%を超える約1000億ユーロに引き上げることをドイツが発表した際は、イタリアでもどよめきが起こりました。戦後のドイツが堅持してきた平和主義の精神からの180度の変換がなされ、しかし、突然の心変わりと見えたドイツのこの方針は、実は現在のような緊急事態が訪れた時のため、「ドイツは再び力を愛してもいいのだ」、と長い期間協議されていた政策なのだそうです(ルーチョ・カラッチョロ)。とはいってもドイツが、そもそも世界有数武器輸出国であることは、あまり注目されてはいません。

イタリア政府もまた、侵攻がはじまった途端に、2024年までにGDP比2%の軍事費増強を実現する、と発表しましたが、ドイツほどスムーズには議会を通過させることができず、「いったい何のために軍事費を増やさなければならないのだ。次の戦争のための増強ということなのか。イタリアには、たとえばNATOとは無関係に欧州防衛軍を構成する、などという軍事ストラテジーも何もない。それで軍事費を増やしても意味がない」という声が上がり、世論調査では72.9%(まったく支持しない42.2%、あまり支持しない30.7% )の市民が軍事費の増強に反対する、という結果になっています(il fatto quotidiano紙)。

わたし個人は、戦争を肯定し、平和主義者たちを「プーチン主義者」呼ばわりするメインストリームのメディアの報道に惑わされず、世界の動きにも協調しない、このイタリアの市民の、「これ以上の軍備は必要なし」という精神には好感を持ちました。それより一刻も早く、ガス代を安くしてほしい、というのが市民の正直な気持ちなのだと思います。

さらにこの世論調査では、支持政党派別でも統計が出されていますが、軍事費増強反対を訴える中道左派支持者は75.1%中道右派支持者は65.4%、『5つ星運動』支持者は76.9%と、支持政党に、ほぼ関係なく、誰もが反対を支持しているという結果となっています。また、「イタリアはどのようにウクライナを助けることができるか」という問いには、「武器の購入のための経済的援助」が20%、「ロシアへの経済制裁のみ」が21.8%、「外交努力のみが、停戦を実現する」が40.3%、「ウクライナを助けるべきではない」が2.5%、「わからない」が9.2%となりました。

こちらの統計も、支持政党にはほぼ関係ない結果ですが、そもそもロシアと深い関係を持っていた(現在も持っているかもしれませんが)『同盟』、『フォルツァ・イタリア』が属する中道右派支持では、「外交努力」が50.6%にのぼっています。さらにウクライナ危機を、「外交手段を駆使して解決しようとしているのは欧州」が28%、「ウクライナ」8%、「ロシア」4%、「米国」2%、「誰も外交で解決しようとしていない44%、「答えない」21%との結果になりました(CARTABIANCA)。

この軍事費増強の上院、下院両議会における議決に関しては、議会で最大議席を持つ『5つ星運動』が、「市民が光熱費をも払えない状況なのに、軍事費とは!」と反対し、あわや政府が崩壊か、という局面もあり、結局、イタリアは軍事費GDP比2%の達成を2024年から2028年まで延期することで調整され、議決が行われています。

 

キーフ近郊のIvankiv 美術館が爆撃され、ウクライナの国民的作家、マリア・プリマチェンコの絵も消失したそうです。このように貴重な作品をも爆撃で破壊するなんて許し難いことです。だいたい、われわれひとりひとりの人生も、生活もすべて、オリジナルのアート作品のような、この世にふたつとない貴重なものでありますから、爆撃など、もってのほかとしか言いようがありません。MFA of UkraineのTweetから引用。

 

ところで、あらゆる戦争の背後にはもちろん、武器産業というか軍産複合体が存在することはもはや常識で、いまさら注目するのもどうか、とは思いましたが、とりあえず世界の武器産業企業収益Top 35を見てみることにしてみます。すると案の定、ロッキード・マーティンからはじまり5位までが米国に占められ、6位に英国のBAEシステム、7位から9位までが中国、13位にイタリアのレオナルド(約12億4000ユーロ/イタリア防衛省)、26位に日本の三菱重工、27位にドイツが入っています(TPI/SIPRI 2020)。

武器輸出国の順位は、1.米国 、2.ロシア 、3.フランス、4.ドイツ、5.中国、6.英国、7.スペイン、8.イスラエル、9.イタリア、10.オランダとなっており、その中でも34%のシェアを持つ米国が、やはり断とつです(SIPRI Armo Transfers Databese 2018)。

さらに年間の軍事費を国別に見ると、1.米国  7780億ドル、2.中国 2520億ドル、3.インド 729億ドル、4.ロシア 617億ドル、5.英国 592億ドル、6.サウジアラビア 575億ドル、7.ドイツ 528億ドル、8.フランス 527億ドル、9.日本 491億ドル、10.韓国、457億ドル、11.イタリア 289億ドルで、ここでももちろん、米国が群を抜く軍事費を誇っています。(TPI/2020 SIPRI)

ウクライナに際限なく武器を送ることで戦争が長引き、戦闘がエスカレートすればするほど、武器産業は利益を得るわけですから、2022年にはこの数字は大きく変わるに違いありません。実際、米国に集中する武器産業が巨額の利益を得ており、各社の株価はうなぎのぼりに高値を更新しています。たとえばロッキード・マーティンの株価は、年間で+88.53%(4月26日)、ちなみにイタリアの武器メーカー、レオナルドの株価も、年間で+60.02%(4月26日)の上昇です。

そして残念ながら、これがわたしたちが住む世界の現実です。つい最近まで、ごくささやかに生活していた人々、元気に学校に通っていた子供たち、街角でカード遊びをしていた老人たちが、無力のまま、憎悪がみなぎる激しい戦禍に巻き込まれ、無差別に蹂躙され、尊厳なく命を落とす戦争という大量破壊、大量殺人の背後で、当たり前のように、ぬくぬくと巨額の利益を甘受している産業があります。

前述したように、わたしは非人間的で残虐な侵攻を続けるロシアを、絶対的に許し難い、と糾弾しますが、戦争を機会と見なして、大利を得る者たちをもまた、糾弾したいと思います。そして停戦に働きかけ、世界の平和のために全力を尽くしている、とはとても思えない、欧米諸国の対応に、深く落胆しています。大量の武器が、明日の平和を形成するとは、どうしても思えません。

重い時代が訪れました。いや、現在、世界の各地で継続する50以上の戦争、紛争を思うなら、われわれは、日々流れてくる、衝撃的な戦闘、瓦礫、亡骸を映し出す報道番組の合間に流れる「広告」のような、人工的な平和という幻想の中に暮らしていただけなのかもしれない、とも思います。

ただただ一刻も早く、ウクライナ危機が終わることを念じる毎日です。

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