マテオ・サルヴィーニのオウンゴール!『5つ星運動』と『イタリア民主党ーPD』、ついに連立

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8月8日、マテオ・サルヴィーニが首相の座を狙って賭けに出た『政権の危機』から現在まで、イタリアの政局は3時間ごとに変わる、極端に流動的な状況が続き、正直「もうたくさん」と心底うんざりしました。新しい過半数として連立政府を模索した『5つ星運動』と『イタリア民主党ーPD』の交渉は、真摯に政策をつきあわせるだけではなく、最終的には閣僚ポストの争奪戦(双方、ポストの問題ではないとは言ってますが)に発展。マッタレッラ大統領の2回目のコンサルテーションがはじまる瀬戸際で、「どうやら『5つ星運動』と『民主党PD』の交渉がまとまったようだ。よかった!」との報道が駆け巡ったと思った途端、一気に緊張して暗礁に乗り上げ、大統領が提示したリミットの28日まで双方の意見が食い違った。「やはりこのまま総選挙に突入か」と、暗雲がたちこめました(タイトルの写真はイタリア大統領府)。

結果的に言うと、8月29日、マッタレッラ大統領が、続投するジュゼッペ・コンテ首相を招聘し、新政府の組閣を要請。『5つ星運動』と『イタリア民主党ーPD』による連立政府誕生の実現に一歩近づきました。それはまあ、よかった。嬉しいことです。

※しかしながら、この項を書き終わった30日、『5つ星運動』ディ・マイオは、コンテ首相に20項の要望を提出(たとえば後述の10項以外に『同盟』が発議、議決された『国家安全保障及び追加法』は廃止しない、など)。自分たちの希望が通らなければ、この連立を破棄して『総選挙』へ向かう、と宣言しました。

この宣言に対しては、同日の夜にコンテ首相が両党を調整しながらの組閣の継続を約束。また『5つ星運動』とPDの政策プログラムの交渉も引き続き行われているため、現在は様子見となっています。こうして再び騒乱の芽が生まれましたが、いつまでも振り回され続けるわけにもいかないので、コンテ首相の手腕を信じ、「連立政府が誕生する」と仮定し、強い希望とともに、いったんこの項を投稿することにしました。もしこの連立が破綻するような大きな変化が起これば、ただちに末尾に追記したいと思います。

※9月3日、後述した『5つ星運動』のダイレクトデモクラシー・プラットフォーム『ルッソー』によるオンライン投票が遂に実施され(過去最高の9万という投票数)、約80%のSi(連立政府及び26のプログラムに賛成)を得て、『5つ星運動』とイタリア民主党の連立政権が誕生することになりました。

最後の最後まで緊張に包まれましたが、合意に至る過程の最初から最後まで、ベッペ・グリッロが貫いた連立支持、激励叱咤に、リーダーであるディ・マイオのPDへの強硬姿勢が次第に軟化。最終的には『ルッソー』に投票した支持者たちのSiが追い風となり、『5つ星』はPDに完全に扉を開き、連立が確実になりました。5日の午前10時、大統領府において、フレッシュな顔ぶれの閣僚たちで構成される新政府の宣誓式が執り行われます。上院下院議会の信任は9月9日、10日の予定です。これでイタリアは変わる。

また、著名ジャーナリスト責任編集のサイト(open.it)によると、8月8日の『政権の危機』勃発時点では『5つ星』は『総選挙』で闘う方針だったそうですが、10日、グリッロが「総選挙なんてとんでもない。イタリアを新しい野蛮人たちから守らなくてはならない。『5つ星』はカミカゼではない」とアンチ・サルヴィーニを宣言。PDとの連立を示唆してから、状況が急展開したことも明らかになっています。

グリッロは『ルッソー』投票直前にも、動画でPDの若いメンバーに「共に新しいイタリアを創ろう」と呼びかけ、閣僚ポスト争いで紛糾する政局の緊張を緩和すべく、一貫してPDとの連立を強く後押しした。今回の連立政府は、もちろんPDの前書記長、マテオ・レンツィのいち早い連立の提案もありましたが、グリッロの強力な後押しなしでは成立しなかった、と言っても過言ではないかもしれません。

 

I ministri del nuovo governo (AP Photo/Andrew Medichini)  ※9月5日、大統領府で執り行われた宣誓式。新内閣には女性が7人!新しい内務大臣女性です。ilpost.itから引用。

『イタリア民主党PD』との連立にいつまでもはっきりしなかった『5つ星運動』

そもそもアンチグローバリズム反欧州主義(欧州議会選挙後、一転、親欧州主義に転じました)、アンチシステムを原点とする『5つ星運動』には、民主党ーPDを心底憎んでいるメンバー及び支持者が多すぎました。彼らにしてみたら、PDはブリュッセル(欧州委員会)の回し者であり、ハイパー金融システムの保護政党であり、特に民主党政権時代の前首相マテオ・レンツィ以下、レンツィ派と呼ばれるPDを牛耳るエスタブリッシュメントたちこそが、ジョージ・ソロスが企てる陰謀に加担している、と長らく主張してきた。

2018年総選挙では、その民主党が大敗。責任を取ったレンツィが『5つ星運動』との連立を完全拒否すると同時に書記長を辞任。ニコラ・ジンガレッティが書記長に選出されてからのPDは、確かにいまだにレンツィ派の影響は大きくとも、少しづつ市民の生活周りの経済を直視しながら環境問題、さらには地域の社会問題の解決へと軌道を修正しているところでした。

ジンガレッティは、少年の頃からイタリア共産党に属していた生え抜きの左派です。現在はローマ市を抱くラツィオ州の知事でもあり、SNSで有権者の興奮を派手に煽るようなこともない、思慮深く実直、信頼できる人物、というイメージが定着しています。ちなみに先ごろ惜しまれながら94歳で亡くなった、完全無敵のアンチ・サルヴィーニ、アンドレア・カミレッリの人気小説シリーズ『モンタルバーノ警察分署長』をTVドラマで演じるルカ・ジンガレッティは、ニコラ・ジンガレッティの実兄でもあります。

今回の両党の交渉に関して言えば、『5つ星』内部があまりにも分裂し、互いに互いを政治的に挑発しているのか、それとも実際に仲間割れが起こっているのか、『同盟』に寝返るメンバーが出たり、SNSでPDを攻撃してみたり、はっきり言って、イタリアの運命を背負う大人の交渉とは、とても思えませんでした。

まず、『5つ星』のディ・マイオは、「政府最大過半数として連立交渉をする」と言いながら、2回行われた大統領のコンサルテーションを挟む1週間、たった一度もPDの名を口に出すことがなかったことをラ・レプッブリカ紙に指摘されていますし、PD側も、その態度に不満を募らせていた。「ディ・マイオはひょっとして、PDと交渉しようとはハナから思っていないのではないか」という声も根強くありました。

また、27日の15時(大統領の政党コンサルテーションがはじまる直前)まで『5つ星』が『同盟』とも密に連絡を取っていたことを、『同盟』のメンバーがTV討論番組で明らかにしています。つまり『5つ星』はオフィシャルにPDと交渉しながら、影では『同盟』との関係を断ち切れていなかったということです。

事実、ルイジ・ディ・マイオも、2回目の大統領のコンサルテーションのプレスにおいて「数日前まで『同盟』から、僕を首相にするから再び連帯を組もうと誘われ、国家レベル(サルヴィーニは大統領にもその案を伝えていたらしく)でも打診されたが、これは僕個人の問題ではないと断った」と明らかにしています。したがって連立政党として、PDの名を長らく明らかにしなかったのは、ディ・マイオ自身「迷っていた」ということでしょう。

確かに長いキャリアを持つ議員を多く抱えるPDと連立することで、ニューフェースばかりの『5つ星運動』にとってはやりにくい部分も多く出てくるであろうし、『同盟』にしても『フォルツァ・イタリア』と組むよりは、『5つ星』と再び契約を結ぶほうが、自分勝手な政治ができると踏んだ、と考えるのは自然ではあります。しかし、このような大騒動を引き起こし、互いに裏切り者呼ばわりしあう大喧嘩の最中に裏交渉が進行しつつあった、というのはいかがなものか、と思う次第です。

 

イル・フォリオ紙編集長、クラウディオ・チェラーサのツイートから。『5つ星』:議員削減をしないなら連立を考えない」PD:Ok. 『5つ星』はコンテを首相に迎えられなければ連立を考えない」PD:Ok やってみよう 今明確にしなければならないポイントは、ディ・マイオは本当にPDと連立を組むことに納得しているかってことなんだ。

▶︎新政府誕生前夜

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