イタリアの『緊急事態宣言』延長と、945人から600人への議員削減にYESと答えた国民投票

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『州選挙』と同時に実施された『国民投票』

いずれにしても、このように、社会に茫洋とした緊張が渦巻き、議会を通さず暫定措置令が次々と発せられる『緊急事態宣言』(1992年に制定され、自然災害や今回の疫病のような事項に特化された政府首脳権限)という特殊な状況がいまだ継続する中、国政にも大きな影響を及ぼす重要な6つの州(トスカーナ、カンパーニア、マルケ、ヴェネト、リグーリア、プーリア)の『州選挙』と同時に、本来、独立して行われるべき憲法改正『国民投票』が実施されたことについては、考えさせられる面が多くあったことを強調しておきたいと思います。

 

去年の11 月30日、フィレンツェで開催された『サルディーネ』のフラッシュ・モブでは、こんなに人々がひしめき合っていたのに。今となっては、こんな光景が全国各地で見られたのが嘘のようです。

 

たとえば去年彗星のように現れ、思い思いのイワシのイラストを掲げながら「アンティファシズム、アンティレイシズム、アンティポピュリズム」を主張するフラッシュ・モブでイタリア中の広場に溢れる人を集め、全国を席巻したサルディーネ(イワシ運動)は今回も健在でしたが、ソーシャルディスタンシングで規模が縮小。投票率を左右するほどのインパクトを人々に与えることはできませんでしたし、政治集会そのものがぐんと少なくなりました。

したがって今回は、『サルディーネ』のような自発的市民ムーブメントが、『州選挙』、『国民投票』に影響することは、まったくありませんでした。

さらには現在の『民主党』『5つ星運動』による連立政府の強力野党である、『同盟』『イタリアの同胞』『フォルツァ・イタリア』による『右派連合』が、6つの州すべてを勝ち獲ると豪語していたにも関わらず、左派地盤であるマルケ州を極右政党『イタリアの同胞』候補が制した以外は、「与党側3州:野党側3州」と、あらゆるすべてが無難な結果に終わったという印象が残ります。

いつもの選挙期間のような、スペクタクルなハラハラ感は少しも感じられず、いつの間にかメリハリなく過ぎ去った、という感じでしょうか。

なお、ラディカルなウイルス対策で初期感染を抑えたヴェネト州のルカ・ザイア知事は76.7%、「パーティを開くなら、火炎放射器を持って乗り込む」という動画で人気を博したカンパーニア州のヴィンチェンツォ・デ・ルーカ知事は69.1%で大勝再選。それぞれの州におけるCovid-19対策の影響が選挙に顕著に現れるという結果になりました。

また、本来一大イベントであるはずの36.5%もの議員を大量削減する、イタリア共和国憲法を書き換える『国民投票』に関しては、事前にいくつかのメディアがYES、あるいはNOと明確な意志をパブリック表明したため(『サルディーネ』も早くからNOを表明)、それをベースに盛んな議論が行われるか、と思いきや、意図的とも思えるほどのあやふやさが直前まで続きました。よほど報道に注意していないと賛否の議論に遭遇することもなく、そうこうするうちにいつのまにか「賛成ムード」が形成されたようにも感じます。

今回、意識的に『国民投票』を棄権した、知り合いのローマ市民に理由を聞くと、次のような答えが返ってきました。

「ウイルス感染が拡大中で皆が不安に思っている時に、州選挙と同じ日に議員削減のための憲法改正『国民投票』を行うことを、非常に疑問に感じる」

「本来は、それぞれの市民が純粋に国のシステムを考えなければいけない投票にも関わらず、結果的には現状維持の意識が働き、今のところウイルスを上手く抑制しているように思える政府の信任、つまり現在の『PD-民主党』『5つ星運動』政権への投票になってしまう」

「もちろん今の政府以外に適切な政治勢力は存在しないと思うが、『国民投票』政党政治は別物だ。すでに結果が決定されたも同然の『国民投票』には出かける気分になれないし、意味がない

つまり、各政党がせめぎあう『州選挙』と同時に実施することで『国民投票』の初志からは離れ、どうしても各政党の政治的思惑に市民が引きずられてしまうということです。

また、感染者が増加しつつある今、「そのせいで感染が増えたとは思わないが、通常の選挙が行われたり、夏の間、(感染が急激に広がる原因となった)ナイトクラブが早々に開いたり、それじゃ緊急事態とは呼べないのではないか。政府の『緊急事態』のコンセプトがよく分からない」と国立ミラノ大学ルイジ・サッコ病院のマッシモ・ガッリ教授は指摘していました。

欧州の他の国では『緊急プログラム』が発動され、ロックダウンとなる地域が増え、レストランやカフェの規制がはじまったようですが、『緊急事態宣言』という特殊なシステムが3月から続いているのは、欧州ではイタリア1国のみです。もちろん、それが法律的なシステムに過ぎないということは理解していますが、まったく心理的な圧迫を感じない、とは言い切れません。

いずれにしても 、議員削減の提案者である『5つ星運動』はもちろん、連帯している『PDー民主党』、さらには野党である右派連合『同盟』+『イタリアの同胞』も事前にYESを明示(『フォルツァ・イタリア』は意思表示をせず、『民主党』、『同盟』、それぞれの党の数人の議員たちが、直前に反対意見を主張したケースもありましたが)。NOを明示したのは少数の議員で構成される+EuropaやAzioneなど小さい政党、あるいは極左の政党だけでした。

また、今回の『国民投票』で政治的に最も成功したのは、「提案した『5つ星運動』ではなく、議員削減にいちはやく賛意を示した『民主党』党首ニコラ・ジンガレッティだった」と民主党内におけるパワーゲームの帰結として、左派の各種メディアに語られたことをも疑問に感じます。

そういうわけで、ほとんどの大政党が賛成を支持したにも関わらず、30.4%もの市民がNOと答えたのは、それなりの理由があったからだと思うのです。

その理由に関しては、現政府の崩壊を狙う経済権力の暗躍を指摘する向きも存在し、『5つ星運動』のディ・マイオ外務大臣も『国民投票』の結果が出た直後、「われわれの失脚狙う勢力の圧力があったが、それに打ち勝つことができた」、と少々被害妄想とも感じられる発言で妨害の可能性に言及しました。

しかし、だいたいそんな勢力が本当に存在するかしないか定かではありませんし、それがNOを投票した市民の心情でないことは明らかなのです。

 

今回、重要な左派地盤の州はかろうじて、現状を死守しましたが、『右派連合』の勢いはとどまるところを知りません。2023年の総選挙が心配な状況です。コリエレ・デッラ・セーラ紙より。青ー中道右派『右派同盟』(『同盟』『イタリアの同胞』『フォルツァ・イタリア』)赤ー中道左派(『民主党』、『5つ星運動』)

 

 ▶︎あまりにも優遇されてきたイタリアの上院・下院議員

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