ロシアより愛を込めて:イタリアン『ロシアゲート』の勃発で、いよいよホットな2019年夏

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 ジャンルーカ・サヴォイーニとは一体何者なのか

さて、ロンバルディアーロシアというカルチャー・アソシエーションの局長を務めるジャンルーカ・サヴォイーニの素性が少しづつ明らかになるにつれ、おや?と思うロシアの重要人物の名前が続々と浮かび上がってくることには驚きました。

詳細は列強入り乱れるイタリアと『世界家族会議』❸ ❹にも書きましたが、やはりイタリアは、制裁の解除と同時に、旧ソ連時代の領土の回復を狙うロシアの、欧州戦略の要所となっているようです。

なにしろロンバルディアーロシアの名誉局長はアレクセイ・コモフです。ロシア正教会、ロシア政府が謳う『リベラルは悪魔の思想』という極端な保守思想のもと、政権の保守政治家とビジネスマンたちを繋ぐこの億万長者は、ロシア、米国宗教右派、欧州極右政党、キリスト教原理主義勢力の経済・政治ロビーともなっている『世界家族会議』(中絶反対、同性婚反対、家父長制の復活など、中世紀の宗教的価値観・倫理観を拡散する)のロシア大使としてオーガナイズの中心に存在。ロシアからの今後の援助を『同盟』に約束した人物でもあります。

そのコモフは、「ロシア正教に根ざした帝政ロシアを復活させる!」という頭痛がするような過激思想のもと、「プーチン大統領はからわれわれに遣わされた申し子」と、ガーディアン紙のインタビューに答えたコンスタンチン・マロフェエフと強い絆を結んでいます。

理想とする帝政ロシア時代の価値観を体現するエリートたちを要請するため、学校まで設立したというマロフェエフは、ロシアで指折りの投資会社「マーシャル・キャピタル」を所有すると同時に「ロステレコム」の大株主であり、「アヴァンガード」というエネルギー会社をも経営する、これまた億万長者です。また、ロシアのクリミア半島侵攻の際、その資金をプーチン大統領に拠出したと見られていて、インターポールの国際ブラックリストにも名が挙がっています。

今回の一連の報道にある『同盟』のロシアコネクションの核は、サヴォイーニ⇆コモフ⇆マロフェエフと見られ、マロフェエフもまた、今回発覚したビッグ・ディールを、コモフ、サヴォイーニとともにオーガナイズした黒幕のひとりと見られます。

さらには密談前日の17日、マロフェエフマテオ・サルヴィーニ内務大臣本人が関係者たちに会う機会を設け、このビッグ・ディールについて話し合ったのではないか、との疑惑も浮上している。この日サルヴィーニには、一体何をしていたのかわからないモスクワ・空白の12時間があり、レスプレッソ誌の編集長に、TVの生番組(24時間開票番組「メンターナ・マラソン」)で単刀直入にバッサリ質問された際、のらりくらりととぼけながら「覚えていない」と繰り返しています。

ところでサヴォイーニという人物は、そもそもロンバルディア州出身のジャーナリストですが、当時の同僚によると、編集部にヒットラーの写真を持ち込む筋金入りのナチ・ファシストだったそうです。かねてからフォルツァ・ヌオヴァやカーサパウンドなど既存の極右グループとも親交を持ち、『同盟』内ではプーチン政権との橋渡し役として一目置かれていた。

そうこうするうちに今年7月初旬、混乱を極めるリビアを巡って、プーチン大統領ローマを訪問し、フランチェスコ教皇、そしてイタリア政府と会談を行った際、出席に厳格な査定があるコンテ首相主催の夕食会にサヴォイーニを招待したのは、首相官邸相談役の肩書きを持つ『同盟』議員クラウディオ・ダミーコだったことが発覚。

ダミーコはまた、件のロンバルディアーロシア・カルチャーアソシエーションの主要幹部でもありますから、『同盟』議員たちが揃いも揃って、サヴォイーニを「知らない」「関係ない」と言い張るのはきわめて不自然、友達甲斐がまったくない反応でした。

 

一度は行ってみたいモスクワ。クレムリンは確かに魅力的です。investireoggi.itから引用。

 

『同盟』とプーチン政権の架け橋、そのジャンルーカ・サヴォイーニとロシアの関係のはじまりは、というと90年代、ソビエト連邦共和国が崩壊した時代に遡ります。

その頃からサヴォイーニはたびたびロシアに飛び、当時の『北部同盟』とロシア自由民主党のウラジミール・ジリノウスキーの仲介役を果たしていたのだそうです。また、『プーチンのラスプーチン』と呼ばれるアレクサンドル・ドゥーギン (『世界家族会議」❸❹へ)とも25年以上に渡る交友があり、さらには仏のマリーヌ・ルペンとロシアの橋渡しをするなど、現在欧州で増加し続けるSovranistaー国粋主義・極右勢力とロシアの連帯における重要な役割を果たすキーパーソンでした。2014年には、まさしくマテオ・サルヴィーニの後押しで、ロンバルディアーロシアを設立し、局長というキャリアを手に入れています。

『同盟』が政権を担う勢力となる以前、極右系のブログにインタビューされたサヴォイーニは、現在の『同盟』同様、「NATOとEUはロシアの制裁をいますぐ解除するべき」と強調し、プーチン政権の政策を手放しで賞賛。

「ただただプーチンの演説を聞けばよいのだ。いまや西側の政治家からは聞かれなくなった『アイデンティティ』『リスペクト』『伝統』『』『尊厳』『誇り』『強さ』『歴史』(という言葉がプーチンの演説ではたびたび使われる)。ロシアでは今日、そのような言葉がプロパガンダに使われているにも関わらず、われわれ西側諸国は『意味のない』完全なニヒリズムに陥っている」

件のアレクサンドル・ドゥーギンに関しては、「彼とは25年来の友人だよ。ソ連崩壊後、自由主義を取り入れようとしたエリツィン政権に反旗を翻し、エリツィンの軍隊に爆弾を投げた愛国グループが議会を占拠した際、わたしはドゥーギン、他のジャーナリストたちと共にその場にいたんだ。市民戦争ギリギリの状態だった。1993年の秋だったよ。その時に国家解放戦線が生まれ、西側はそれを「黒い赤」(共産主義残党極右グループ)とレッテルを貼ったんだけれどね」

「(そのレッテルを払拭するために)ドゥーギンは、アンチ・ソ連レジーム、さらにアンチ・ウルトラリベラルを主旨とした何冊もの本を書き、欧州のインテリ右翼たちからも注目されることになった。『国際的な黒(黒は極右を象徴する色)』という(短絡的な)表現はドゥーギンからは程遠いんだ。彼は『プーチンのラスプーチン』ではないが、クレムリンに近い文化サークルを構築する面々、特に欧州アジア主義者たちがドゥーギンと交流を持ち、その地政学理論を興味深く分析している」

現在ミラノ検察局で取り調べを受けているサヴォイーニは、一切の会話を拒絶して黙秘を続けているそうですが、このインタビューでは「ロシアとわれわれは政治・経済的な絆だけではなく、文化・思想的絆を有している」、と立て板に水という具合に饒舌に話しています。

なお7月22日には、密談が行われたホテル・メトロボールの正面で、ドゥーギンがサヴォイーニ一行と共に立ち話をする、10月18日に撮影されたという写真が流出し、ひょっとしたら彼も密談に参加していたのでは?という疑いも持たれています。ただ、この写真が撮影されたのが、確かに10月18日だという証拠はありません。

 

マテオ・サルヴィーニ内務大臣がホストとなり、ヴェローナで開催された今年の『世界家族会議』には10万とも言われる人々が集まって、大規模抗議デモが街中で開かれました。写真はイタリア中にネットワークを持つフェミニスト・グループNon Una di Menoのサイトから引用。

 

さて、サルヴィーニとサヴォイーニの関係はといえば、サルヴィーニのはじめてのモスクワ訪問の通訳をしたロシア人女性が、その旅のすべてをサヴォイーニが仕切っていたことを証言しています。さらには件の10月18日のポテル・メトロポールでの密談に関してもサルヴィーニは知っていて、招待されてもいましたが、「ホテル・メトロポールのような目立つ場所には行かないほうがいいとわたしが忠告した」という弁護士の証言もありました。

そのような経緯から「もう隠しきれない」と思ったのか、マテオ・サルヴィーニ内務大臣は国会での説明は拒絶しながらも、「サヴォイーニとは、自分がミラノで大学生だった頃からの25年来の知り合いで、正しい人物だと思っている」ことを、7月16日にようやく告白した。しかしやましい事実がないのなら、はじめから堂々と説明しておけば、こんな風に「どうにも止まらない」報道合戦に発展することはありませんでした。

また、微かな声ではありますが、「ロシアから『同盟』が献金を受け取った事実はない。プーチンがそう言っていた」とベルルスコーニ元首相が『同盟』を擁護。クレムリンも「金銭の授受は確認していない」と発表していますが、いずれの発言も、この大騒ぎの中で、そっと浮き上がっては静かに消えていった次第です。

そういえば、密談ファイル公開早々、自ら「わたしも密談に参加していました」と名乗り出た国際的なビッグ・ディールに関わる弁護士ジャンルーカ・メランダという人物が存在し、自ら検察に事情を話したいと申し出ながら、現在は沈黙を貫いています。さらに密談に参加した第3の男、フランチェスコ・ヴァヌッチも特定され、今後は粛々と捜査が進行していくはずです。

なお、検察が書類の押収のため、捜査に入った国際弁護士メランダのオフィスは、家賃滞納で追い出されたあとで、書類もろとも消えていたそうです。メランダは、かつてはフランスのフリーメーソンに所属した経験もあり、国際的に重要なビッグ・ディール(その顧客名にはMITSUBISHIもあります)に関わってきた過去を持つ敏腕弁護士ですが、資金繰りに窮して『同盟』に流れてくる資金を当てにしていたのでは?とも推測されています。

ちなみに、モスクワで密談が行われた10月18日から1ヶ月後の11月、偶然なのか、意図的なのか、イタリアの国会では、『同盟』の提案による「43条にある『外国からの政党への献金を禁止する』という一文を削除する」という審議が進められましたが、『5つ星運動』、その他野党に反対され、結果的には却下されていた、という事実が今回浮き彫りとなりました。

▶︎誰が密談ファイルを仕込んだのか

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