夜明けを待ちわびるイタリアの暗く、長い新型コロナの夜:We Shall Overcome

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マルチプルに存在する第1感染者

中国に渡航歴のないイタリア人第1感染者とされる罹患者が、コドーニョ市で確認された当初は、「Covid-19はインフルエンザよりちょっと重いぐらいでたいしたことはない。そんなに大騒ぎする必要もない」と言っていたエキスパートや政治家、ジャーナリストたちがかなりの数、存在していました。そして当然ではありますが、もはやそんなことを言える余地は、イタリアのどこを探してもまったくありません。

なお、日本のメディアには、イタリア、特にロンバルディア州を含める北部が、『一帯一路』欧州ーアフリカ航路を結ぶ港の提供契約を中国と交わしたせいで両国間の交流が盛んとなり、「中国からの移民の人々、そして旅行者が格段に増えたせいで感染が広がった」という論調の記事が、いまだに散見されます。

しかし、第1患者とされるコドーニョ市の罹患者の感染経路はドイツ経由であることが、ドイツのリサーチで、2、3週間ほど前から明らかになっているのです。

したがって、そのような「悪いことはすべて中国のせい」という単純な視点からではなく、「日本を含めた世界全体が、もはや中国の存在なしには動かない、しかも中国は今後、5G戦略でビックデータを自在に操るようになるかもしれないが、われわれのプライバシー問題はどうなるのか(もっともスノーデン以降、もはやわれわれにはプライバシーなどないかもしれないことが明らかになりましたが)」というグローバルな視点から、世界経済が中国に依存しなければ立ち行かない現実を論じることが重要なのではないか、と思います。

つい数年前、ISテロが瞬く間にグローバル化したように、中国の、今まで名前も知らなかった大都市ではじまったウイルスまで、これほど広く速くグローバル化する時代を、われわれは生きているわけですから、個人それぞれの国の「好き嫌いレベル」の視点からだけでは、世界はまったく見えませんし、置き去りにされるだけです。

閑話休題。

2月20日、麻酔医の機転でPCR検査が行われ確認された、コドーニョ市の第1感染者以前から、近隣の地域で、今までには例のない、長く症状が続き、突如として悪化する肺炎の患者が数多く存在していたことが、今頃になって多くの医療関係者の証言から明らかになっています。

国営放送Rai3の『Report』という番組が、コドーニョから数キロ離れた、やはり感染拡大地となったピアツェンツァ(エミリア・ロマーニャ州)を取材していましたが、2月12日の時点で、すでにCovid-19の発症が確認されているそうです。

また、ネーチャー紙がロンバルディア州のリサーチに、Covid-19がイタリアに入ってきたのは1月初旬であるとコメントしたのに対し、『Report』は、12月30日の時点で、ピアツェンツァでは40件異常な肺炎が確認され (ピアツェンツァのローカル紙)、1月7日にはミラノで大量の肺炎が発生し病床を追加する事態となり(コリエレ・デッラ・セーラ紙)、通年であれば200件ほどのインフルエンザが今年は250件から280件に増加していたことを指摘しています。1月11日にはコモで大量の肺炎患者が出ているそうです(ローカルテレビ)。

また同時に、12月26日ニューヨークでインフルエンザが 例年より77%増えていることが発表されたこと、12月27日にはアイルランドで強烈なインフルエンザの増加で医療が崩壊しかかったことをも『Report』は同列に提議しました。

いずれにしても「11月17日に武漢で発生した」と中国研究機関がオフィシャルな見解を出しているCovidー19の罹患者が12月8日に初確認されたあと、1月23日の武漢ロックダウンまでほぼ野放し状態になっていたことは、やはり遅きに失したどころの騒ぎではなかったということでしょう。

武漢が封鎖される以前にウイルスは飛行機に乗って、世界中へと飛び散り、ひっそりと、しかし抜け目なく増殖していた、と考えられます。

ウイルスが発生した11月17日からイタリアが中国発着便を停止するまでの間に、ローマ、フィミチーノ空港へ中国からイタリアへ入国した人は(もちろんイタリア人も含め)203894人、武漢からは15400人に上り、ミラノには、上海、香港出発便を含めると125000人が入国しています。国営放送Rai 3「Report」より。

こうしてCovid-19は欧州全域、さらに米国、英国、アジア、南米大陸、アフリカ大陸まで驚くスピードで拡大し、イタリアでは毎日、信じがたい多くの犠牲者が報告されています。医療関係者だけで約8500人の方が感染され(3月30日)、80人の医師がお亡くなりになったそうです(4月4日)。

イタリアにおいて、既存のインフルエンザで亡くなる方は1年間8000人から12000人だそうですから(ISSー国家高等衛生機関)、Covid-19の感染スピードがインフルエンザを遥かに凌ぎ、しかも悪質であることを、いまさら強調する必要はないでしょう。

▶︎ベルガモのこと

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