『鉛の時代』:革命家から映画監督へ パオロ・グラッシーニ Ⅰ

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「カラブレージ警部銃殺事件」ではLotta Continua『継続する闘争』創立者のアドリアーノ・ソフリ、ジョルジョ・ピエトロステーファノに主犯の嫌疑がかけられたことをどうお考えですか?

カラブレージが誰に殺されたか、なんて僕には分からないよ。カラブレージがピネッリが死んだ夜、その場に居合わせていた、ということにはヴァレトゥッティの証言から確信しているが、彼を殺ったのがソフリたちだとは決して思わない。彼らの逮捕のきっかけはLotta Continua『継続する闘争』の元メンバーだった男 −その男は強奪事件もたびたび起こした、グループ内でも悪名高い男だったんだがね− が自白した、ということになっているが、長い間拘束され、多分拷問に近いような尋問もされ、警察の思うがままに証言したんじゃないかと、僕は踏んでいる。そう考えている人間は、著名文化人を含めて多くいるよ

いずれにしても、Lotta Continua『継続する闘争』は殺人計画を企てるようなグループじゃなかった。僕らの武器思想であり、その主張であり、新聞であり、仲間たちだったんだ。確かにピネッリの死に関してカラブレージの告訴要求キャンペーンは張ったが、殺人テロリズムとは常に一線を画していた。そりゃ、メンバーのなかには、のちにPrima Linea(プリマ・リネア:極左テログループ)に加わった者もいるが、Lotta Continuaそのものは、殺人などという血なまぐさい抗議にはまったく賛成していなかった。だいたい僕らはファシストじゃないんだぜ。卑怯者じゃないんだ。

そういえば、ジョルダーナの映画のエンドロールにLotta Continuaのソフリ、ピエトロステーファノが起訴された、という一文があったが、それが明記されている、ということは、それが映画のテーゼである、ということじゃないかい? 暗示的に表現するのなら、あの一文を載せる必要なんてなかっただろうに。ジョルダーナは一般的にパソリニアーノ(パソリーニ主義者)と言われるが、僕は彼がパソリニアーノとはまったく考えないね。だいたいピエール・パオロ・パソリーニは、LottaContinuaグループの第1メンバーとして署名しているんだからね。

伝説のLa strage di Stato 写真は当初犯人と目されたアナーキスト、ヴァルプレーダ

伝説のLa strage di Stato 写真は当初犯人と目されたアナーキスト、ヴァルプレーダ

*アナーキストのヴァレトゥッティは現在、病気で車椅子の生活を余儀なくされているが、それでも重要なデモ集会には必ず参加する活動家として人生を送っています。最近では、暴力的に発展し、街じゅうで車が燃やされ火の海と化したミラノEXPO抗議デモに、ブラック・ブロックと呼ばれる過激アナーキスト集団に混じって車椅子で参加し、インタビューにも堂々と答えていました。以下、意訳引用します。

昨日のデモはどうでしたか?:「よかったよ。穏やかなものだった」 一人で来たのですか?:「ああ、そうだよ。でもここには旧知のやつらがいっぱいいるから」1番前で抗議活動されてましたね。「そのとおり。警察が来て、エージェントに頭を殴られたがね。でも棍棒ではなく、手だったから。クラッとするぐらいだったよ。そのあと、やってきたブルジョア風のやつらから脅されもした。おまえが誰で何処に住んでいるか知っているぞ、家に押しかけて頭をかち割ってやる、なんて言われたよ。こんな風に人を脅すなんて考えられないだろう? ひどいやつらだ」しかし昨日のミラノは車が燃やされたり、ひどい混乱状態に陥りましたよ「銀行や、金持ちの車などシンボル的なものを燃やしたんだろう。こういう状況ではそういうことも起こるもんだ。貧乏人の車には手を出さない。しかしたまには間違うこともあるさ」でも車の持ち主に、いったいなんの罪があるっていうんですか?「彼らのことを理解するべきだよ。彼らは自分たちの理想のために、人生をだめにしてしまうことだってあるんだ。それでも彼らがやってくるのは、世界にひどく絶望して、不安を感じているからなんだ。ここで暴れて、もし捕まったら10年は刑務所に入らなければならないんだよ。彼らにとってここにくることは大きなリスクでもある。彼らにとって、そのリスクが何か有益だと思うかい? わたしはもう年寄りだからいいんだ。それほどのリスクはないからね。でも彼らはリスクを抱えてでも、彼らが嫌悪する世界のシンボルをぶち壊していこうとしているんだよ」・・以下略・・

ブラック・ブロックは直近では危機に直面するギリシャのデモで逮捕者を出すなど、大規模なデモでたびたび暴力的な混乱を起こす、欧州全土に渡る悪名高いアナーキスト集団ですが、まさかすでに60代も半ばを超えたヴァレトゥッティという、往年の有名アナーキストがその若者たちに混じって参加していたとは、と話題になり、FBではこの記事に60684のいいね!がついていました。

▶︎続く 『鉛の時代』革命家から映画監督へ パオロ・グラッシーニII

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