Category Archives: Occupazione

スピンオフ:ローマの街に熱烈に歓迎された、ケン・ローチと最新作「オールド・オーク」

世界中で尊敬される英国の最重要映画監督のひとり、という認識は当然ありましたが、最新作「The Old Oak(オールド・オーク)」封切りのため、ローマを訪れたケン・ローチが、これほどまでに熱狂的な歓迎を受けるとは予想していませんでした。監督が舞台挨拶をする予定の映画館はすべて、瞬く間にソールド・アウトとなり、ローマ滞在の最後に開催された舞台挨拶は、イタリア全国70の映画館で同時中継されるほどの人気でした。何より意外だったのは、1936年生まれのこの監督の作品を観るために、往年のファンだけではなく、多くの10代20代の若者たちで映画館が埋まったことでしょうか。一貫して、社会から置き去りにされる弱者の絶望、そして一抹の希望を、リアルに、ヒューマンに描くこの映画監督は、かくしてローマに多くのメッセージを残すことになったのです。 Continue reading

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ローマの高校生たちのチネマ・アメリカ占拠から10年、チネマ・トロイージの奇跡

ローマはやはり映画、人々のチネマに対する愛情は計り知れないものなのだ、と改めて痛感しました。古き良きイタリア映画の黄金時代、トラステベレに暮らす庶民たちの胸を高鳴らせ、いくつもの思い出が積み重ねられた映画館、チネマ・アメリカが時代の煽りで廃館を強いられ取り壊されそうになる寸前、高校生たちが大挙して『占拠』したのは2012年のこと。その小さな『占拠』は、ベルナルド・ベルトルッチという巨匠を筆頭に、映画界から強力なサポートを受け、あっという間に街の話題をさらいます。やがてその高校生たちはラツィオ州、ローマ市から、3つの広場で開かれるオープンシネマのオーガナイズをまかされることになり、それらはいつしか夏の風物詩ともなりました。しかしその動きが、最新のテクノロジー装備のモダンアヴァンギャルド映画館チネマ・トロイージにまで発展するとは、正直、考えてもいなかった。映画館から配信プラットフォームへと映画を巡る環境が大きく変わりつつある今、いまや大人になった高校生たちの挑戦ははじまったばかりです。 Continue reading

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誕生1ヶ月で、ローマ:サン・ジョヴァンニ広場を満杯にしたイワシ運動『100000サルディーネ』

サン・ジョヴァンニ広場はかなり広々としていて、5万人、6万人が集まる政治集会やコンサートでも、わりと自由に行き来できるのですが、10万人ともなると前進するのも、後退するのも、ほぼ不可能という状態になります。広場にたゆたう人の波。見渡す限りの『サルディーネいわしたち』が、思い思いに手作りした『クリエイティブいわし』をマニフェストして、歌ったり、踊ったり、暗くなるまでフェスタが続いた。ボローニャの広場からはじまって、たった1ヶ月ローマに10万人を集めるまでに急成長したアンチファシズム市民ムーブメントを発案したのは、エミリア・ロマーニャの青年たちとイタリア全国の仲間たち。前項「瞬く間にイタリア中に押し寄せたアンチサルヴィーニの魚たち『6000サルディーネ』の続編です。 Continue reading

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2019欧州選挙と、窮地に陥ったローマの巨大占拠スペースSpin Time Labsを救ったヴァチカン

新しい動きが次々に生まれるローマの重要なカウンターカルチャーシーンのひとつ、Spin Time Labs450人、イタリア人をはじめ18カ国の人々が占拠する、その巨大占拠スペースの電力突然切断され、灯なく、水道も機能しない、という窮地に陥ったのは5月6日のことでした。その後約1週間、幾度となく公開総会や支援イベントが開かれ、主要メディアも続々と報道しましたが、事態は一向に解決することなく、いよいよ緊張した空気が漂った。なにより占拠者の中には病気の人々や、98人の子供たちも含まれているのです。あわや、というその窮状に、天使のごとく、ふわり、と現れたのが『コラード神父』でした。まるでおとぎ話のようですが、その『コラード神父』こそ、フランチェスコ教皇の右腕、クライェウスキー枢機卿( ええ!?)だったのです。(タイトルの巨大建造物がSpin Time Labs占拠スペース) Continue reading

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『鉛の時代』拳銃とパンと薔薇、’77ムーブメントと『赤い旅団』

何回かこのサイトでも書きましたが、イタリアに慣れた頃、最も非常識に思ったのは、日本では1970年まで続いた学生運動以後、すっかり廃れてしまった『占拠』という現象が、あちらこちらで日常茶飯事に起こっていたことでした。荒れ果てたまま置き去りにされた古い劇場や映画館、営業を停止したホテル、広大な工場跡や廃屋となった議員宿舎が、文化スペース住居として、ある日突然有志たちに「非合法」に、しかし堂々と『占拠』され、当然のように普通に機能しています。もちろん、「非合法」ですから強制退去の危機と常に背中合わせではありますが、退去になればまた占拠、と人々は『占拠』を諦めない。そしてこの現象のルーツは、武装学生たちが発砲しながら荒れ狂い、『市民戦争』レベルにまで発展した’77のムーブメントにありました。 Continue reading

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機が熟すとき: 『鉛の時代』の幕開け、そして『赤い旅団』誕生の背景

イタリアの70年代、つまり鉛の時代へと遡るうちに底なしの闇に迷い込み、「このまま先に進むことで何かが見えて来るのだろうか」、そして「これらは果たして本当のことだろうか、もし本当なら、こんなことが許されるのか」という不信感が交互に湧き上がり、なかなか踏み込んでいけなかったのが、欧州最大の極左テログループ『赤い旅団』にまつわるエピソードでした。一方で、自分とはまったく関係なさそうな遠い次元の話に思えても、わたしたちの生活そのものが、個人、社会、世界、と多次元のレベルで構築されていて、それを認識するしないに関わらず、実はあらゆる次元同時生きている、ということを再確認した次第です(タイトルの写真はBlog di Carmelo AnastasioのAlbumより引用させていただきました)。

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人が暮らすローマの現代美術館 : Matropoliz-MAAM それから

このサイトで、以前紹介したローマ郊外の『人が暮らす現代美術館 Metropoliz-MAAM』が5周年を迎えました。開館と同時に国内外のアーティスト、美術批評家やアート通、アート通でない市民、活動家の間で『世界で最もクールな美術館!』と絶賛され、その名声は瞬く間に広まり、遂にはローマ市政のハートをもギュッと掴むことになります。「占拠」スペースをアートで埋め尽くすという意表をつくアイデアで、大きなうねりを生み出した「時の人」、文化人類学者、キュレーター、そしてアーティストのGiorgio De Finis(ジョルジョ・デ・フィニス)に話を聞きました。デ・フィニスはMAAMの成功から、ローマの宝石、市営現代美術館MACROの次期ディレクターと目される人物です。 Continue reading

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巡る世界を創る女性アーティスト・デュオ:グロッシ・マリオーニ

常に吹き荒れる社会の逆風をものともせず、果敢に、しっかり未来に向かって歩く女性たちを、わたしは殊更に好ましく感じています。日本における、女性たちの個性と自由を阻む社会環境と偏見もさることながら、多少の改善はあるとはいえ、イタリアにおける女性たちを取り巻く社会のあり方もかなり苛酷です。幼い子供を育てながら、刻々と流動するインスタレーションをプロジェクト、まさに「現代社会をコンセプチュアルに表現した」、フェミニストで新進女性アーティストVera Maglioni (ヴェッラ・マリオーニ : 左)、Francesca Grossi (フランチェスカ・グロッシ : 右)のワークショップに参加、話を聞きました。 Continue reading

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スパドリーニ広場の難民の人々と支援団体Baobab

テルミニ駅に続きローマで2番めに大きなティブルティーナ駅。最近改修され、近代的なガラスの建造物となったその駅の、ガランと人通りの少ない東出口にある閑散としたスパドリーニ広場が、ここ数ヶ月間、自発的な市民ボランティア難民サポートグループBaobab (バオバブ)の、緊急難民センターとなっていることを新聞各紙が注目し、たびたびローマの人々の話題に上ります。難民の人々の亡命、移民のための法的な手続き心のケア温かい食事、そしてサッカーの試合まで、そのサポートのきめ細かさと人間味のある対応で、高い評価を受けるバオバブを実際に訪ねてみました(写真はクーパ通りから強制退去させられる以前のバオバブのシンボル的壁画)。

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人が暮らす現代美術館: Metropoliz、あるいはMAAM

ローマで「現代美術館は?」と聞かれて、すぐに思いつくのはフラミニオ地区のMAXXI、そしてテスタッチョ地区のMACROというところですが、実はもうひとつ、プレネスティーナ通り913番地に、土曜日だけ公開されるMAAMMetropoliz(メトロポリツ)という巨大アートスペースがこっそり存在していることは、一般にはあまり知られていません。しかもそのスペースには、250人余りの人々アート作品と共に普通に暮らしているのです(タイトル写真は、ある角度から部屋を見ると、LE SPACE EST A VOUS. スペースは君たちのものだ、と文字が浮き上がるフランス人アーティストによる作品)。 Continue reading

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